【幼女と副団長2】
少し長くなってしまいました。
「さぁ、行きましょうか」
傷跡から目を離せないでいるとリーシャがこちらを向き直り手を取って歩き出した。
リーシャはすでに体をタオルで覆っており傷跡はかすかにしか見えなくなっている。
傷跡を見たことは気付かれているのだろうが、リーシャが何も言わないので聞けずにいた。
気にしないようにしようとするほど気になってしまうが、かといって聞けない。
もやもやとした気分に入る前の高揚した気分はすっかり冷めてしまっていた。
「湯につかる前に先に身体を洗ってしまいましょう」
そういうと、リーシャは俺を椅子に座らせる。中世のヨーロッパを思わせるような雰囲気の世界なのに、
こういったところは前世の世界に近いのか、あの神の世界で、魔力があって前世との違いが多くあるのだから違う文化の進み方をしていてもおかしくはないか。
それでも、石鹸やお風呂は貴族等身分が高い者か、お金持ちの文化でしかないんだろうけど。
スイの記憶の中でも水浴び程度しかしてこなかったしな。
スイの家庭は決して裕福ではなかったが貧しくもない家庭だった、その中で一度も見ることがなかったとこを見ると高級品扱いなのだろう。
「石鹸が珍しいの?」
「はい」
「高級品だものね、あなたはかわいいんだからきれいにしとかないとだめよ」
そういって手にした泡を俺の髪に押し当てて洗い始める。
いきなりのことに驚き逃げようとすると肩を右腕で優しく抑えられた。
「こら、洗ってあげるから動かないで」
再度洗い始めたリーシャに抵抗することをあきらめなされるがままになる。
シャカシャカと音をたてながら髪を丁寧に洗うリーシャ。
その手付きは手慣れているようで、とても気持ち良かった。
長髪を洗うのは大変だと聞いたが、女性は慣れているのだろうか?
元男の身としては判断がつかない。目の前に垂れてきた泡が目に入らないようしっかりと目を閉じ、その気持ちの良さに身をゆだねる。
「んじゃ、流すわよ」
なんどかお湯がかけられると泡はすっかりと落とされていた。
「そこの、魔道具に魔力を流すと、お湯が出るからね」
と近くの魔道具を指さす、洗い場と湯船両方に同じ機構で大きさの違う魔道具があった。
浴槽にお湯を貯める用と分けてあるのか。
「それでこっちがお水ね、飲めるからのぼせそうだったら飲んでもいいわよ」
洗い場の魔道具の隣にある蛇口のような魔道具を指さしながらそういった。
「ありがとうございます」
後ろを振り返り顔を見てお礼を言う。
リーシャは少し寂しそうに笑うと肩に置いてあった彼女の手に力がこもった。
その顔に次の言葉が出てこず前を向き黙ってしまう。
沈黙が気まずく、何か話題はないかと探して髪を洗ってもらった事を思い出す。
「リーシャさんは、かみをあらうのじょうずですね」
そういうと、ぴくりとリーシャが動いた。
「妹がね、いたのよ」
つぶやくようにリーシャが言った。
その沈んだ声色に振り向くことができずに前を見つめたまま、言葉を繰り返す。
「いた?」
過去形、ということはその娘はもう…
「死んでしまったの」
やはりか。
「私の家はね、貴族だったの、だったというのはもう私しか残ってなくて、騎士団に入っちゃったから実質家はなくなったからなんだけどね」
これも予想通りだったが、どうして貴族のご令嬢が騎士をしているのだろう。
「私は昔から、剣や魔法が好きだったの、令嬢らしくないと何度両親に怒られたか。
まるで男みたいだなんて何度言われたかわからないわ」
ふふっと笑う。
「そんな時に、妹が生まれたの。すごくかわいい子だった。お花が好きでとても優しい子だった。
私と違って可愛らしい女の子の妹を両親は可愛がったわ。私が子供が苦手なのはそういう嫉妬も入っているのかもね」
リーシャが苦笑いしているのが声色から分かる。
「嫉妬しちゃってたのね、私は妹に冷たい態度をとっちゃってね。一方的に距離をとってたの、ほんとは仲良くなりたくて、世話の仕方の練習とか好きな花の本を読んだりとかしてたのにね」
子供だったのよと続けてつぶやく声色は後悔の色をにじませている。
「妹があなたくらいの歳になった頃、魔王が現れたわ。いつもなら奴らは魔族領と接しているところから侵攻を始めるのに今回は違った。奴らは大陸内を無差別に襲ったわ、私たちの家の領地も例外じゃなかった」
その時のことを思い出しているのか、肩に置かれた手に力がこもる。
「魔族の脅威なんて久しくさらされてない土地の兵士に、彼らに対抗する力もなくなすすべもなく領地は焼かれていったわ。
領民を逃がすため走り回っていた私は、妹が逃げずに近くにいることに気付かなかった」
「んっ」
力がよりいっそはいり、痛みを感じ声をもらしてしまう。
「あ、ごめんね」
力が入ってることに気付いた彼女は、俺に謝ると力を抜きまた放し始める。
「優しい子だから、自分も何かできないかと私を追いかけてきたみたいでね。しかも間が悪いことに魔族の一人と相対している時に追いついてしまったの。それを見た魔族は意地の悪い笑みを浮かべると、すぐさま魔法を放ったわ、私がかばうのを知っていてね。背中に傷を負った私は動けなくなってしまったの。背中の傷跡を見たでしょう?これはその時の傷よ。そして魔族は、動けない私の頭をつかむとまた笑ったの。魔族は、あいつは、私の目の前で…妹の命を奪いやがった!」
憤っているからだろう、口調もかなり荒くなっている。
「あまりの光景と痛みに私は気を失ってしまってね、気付けば両親も殺されていて残ったのは私だけだった。そんな時に腕を見込んで魔王討伐のパーティに入れてくれたのがレイン団長ってわけ、そして私たちは魔王を討ち、その残党を討つ騎士団を作ったの、今は遊撃部隊のような立ち位置になっちゃってるけどね」
感情的になってしまっていた名残か口調が砕けてしまっていた。これが彼女本来の口調なんだろう。
「あぁ、せっかくお嬢様のしゃべり方をしてたのにね。妹に笑われちゃうわ」
自分の口調に気付きリーシャはため息をつく。
俺は体をまわしリーシャを見てそんなことはないと首を横に振る。
「そっちのほうがにあってる」
「ありがとう」
お礼とともに頭を撫でられる。
「ねぇ、本当に旅をするつもりなの?さっきの話を聞いたでしょ?今回は魔王が早く倒された分、強い魔族も数体残ってる。奴らに襲われた村では辱めを受けた上に殺された人も一人や二人じゃないの。魔族以外にも戦争のスキを突いた盗賊も多い、そんな中君みたいな子が旅をすれば殺されてしまうかもしれない。前みたいに助けられる保証なんてどこにもないんだよ?
ここにいれば私が守ってあげる、ほしいものがあれば買ってきてあげる。だからここで私と暮らさない?」
そういいながらリーシャは俺の目をじっと見つめる。
「ありがとう。それでも、それが私の夢だから」
しっかりと告げる。
「そう」
リーシャは少しの間目を瞑ると、ゆっくりと目を開いた。
「わかったわ、せめて逃げ延びれるようにあなたを鍛えるわ。私がいいというまで旅に出ちゃだめだからね」
そういって俺の頭を少し撫でた。
「少し寒くなったわね、体を洗って湯船につかりましょう」
そう言った瞬間体をがっつりとホールドされタオルをとられた。
「えっ」
「遠慮はいないでね、しっかり洗ってあげる」
「じぶんであらうからぁあああああ」
広い浴場に俺の悲鳴が響き渡った。
その後身体をしっかりと洗われ、羞恥心で心を手放した俺が気付いたのは服を着せられリーシャの部屋へ連れて行かれる最中の事だった。
リーシャの顔を見上げてみると過去のことを話していた時の顔とは比べ物にならないほど明るく恥ずかしい思いをした甲斐もあったのかなと、そう思った。
彗「結局しっかりと体を見ることできなかった…orz」
少し時間が空いたのでゲームでもしようかなと思いPSstore開くと「blood borne」が50%offになっていたので、購入してしまいました。
少しやってみたのですが、難しいですね(´・ω・`)
死にまくってしまい心が折れかけていますw
ゲームが苦手なことを再度認識してしまいました。
暇もできてきたので、そろそろ元の更新頻度に戻せそうです。
また遅れてしまいそうなときは活動報告にて報告するので、更新がない場合はそちらも確認していただけると幸いです。




