少年、付喪神と出会う
僕の名前は時田羅針。至って平凡な、何処にでもいる十六歳の高校一年生。
突然ですが、付喪神はご存知ですか?
付喪神とは、我が国日本に古くから伝わる、想いのこもった物に宿る精霊みたいなものだ。
そして、今その付喪神であるトキネが、僕の前にいるわけだが。
「何遠い目をしているのです?羅針」
そう言った彼女は、何を隠そう、僕が持っていた懐中時計に宿った付喪神、トキネ。
まぁ、僕は昔のオカルト。というか迷信だったりについて調べていたりするわけで、付喪神自体にはあまり驚いてはいない。
その後彼女に聞かされた話に、僕は戸惑っていた。
「羅針?」
心配そうに僕をキョトンと見詰めるトキネ。その綺麗な黒い瞳に、はっと我に帰る。
「あぁ、ごめんごめん。で、なんだっけ?」
「ですから、付喪弌大戦です」
付喪弌大戦。トキネの説明によるとそれは、五十年に一度、付喪神の頂点、付喪大神を決める戦いらしい。そして、その付喪弌大戦には、特に優秀な、たったの十人の付喪神しか出られないそうな。
しかし、トキネは――
「それに選抜されたと」
「はい。“羅針の懐中時計”の付喪神である私が、選抜されたのです」
「えーと、何ゆえ?」
「愛です」
「愛」
「羅針は、他の女性との関係を持たず、その懐中時計だけを愛してくれました。その愛が、今回の選抜に繋がったのです」
確かに、僕はこの懐中時計をお爺ちゃんに貰ってから十年の間、肌身離さず持っていたし、女性との付き合いもなかったけど……。
「羅針、私と共に戦っては頂けませんか?私には、貴方しかいないのです!」
「うーん……」
「お願いしますっ!」
「……まぁ、女の子にそこまで頼まれたら、断るわけにはいかない……かな?」
僕がそう言った途端に、トキネの顔がパァッと明るくなる。
「ありがとうございますっ、羅針」
「ううん。頑張ろうね、トキネ」
「はいっ!」
そうして、僕とトキネの戦いは始まる。