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彼女は背中をおす

 私の初合コンは大学1年生の18歳の春だった。まだお酒の味を知らない頃で(:当たり前である)、誘われたサークルで開催されたものだ。ただそのサークルは恩師から紹介されたバイト(:今の就職先)に行くことになったので数回しか顔を出さずに辞めることになった。

 その後、バイト先でも合コンに誘われたんだけどそのたびに社長から仕事を頼まれて参加ならず……そして今日がようやく2度目の合コンである。


 店の前で水鈴と待ち合わせ、予約していた席に座ったところで他の人たちも次々に入ってきた。うわー、なんだか女性陣は私たち以外みんな気合が入ってるなあ。私がのんきにそう思っていると入ってきた男性陣を見て、なぜか水鈴が驚いた顔をして立ち上がった。

「なんで大隈先輩がここにっ?!なんで?!」

「丸山。俺が来ちゃいけないのか?」

 大隈先輩、と呼ばれた人は男性のメンバーを集めたと思われる人に詰め寄ろうとした水鈴をやんわりとめた。

「来ちゃいけない、というか…先輩、今週ものすごい忙しいってお昼に言ってたのに」

「忙しいけど、俺だって楽しい時間をもちたいんだよ。ほら丸山、友達がびっくりしてるよ。ねえ?」

「はっ?!はい、ええまあ」

 急に私にふられてちょっとびっくりしたけど、確かに焦った水鈴は珍しい。

「でも、だからって……すいません先輩、ごめん佳野子」

 水鈴がハッと我に帰ったようにおとなしく座ったので、場も和んできてそれぞれの紹介が始まった。紹介って言っても、どうやらよその会社なのは私ともう一人の気合入った女性だけらしい。

 周りの会話に適当に混ざりつつ食事をしてお酒を飲んでいると、なんとなく誰が誰をいいと思っているのか分かってくる。

 私、合コンに来てるのになぜ傍観者になっているんだろう。それにしても今日来た男性陣が一般的な社会人だとしたら、仕事が違うだけでquattuorの皆と変わらないわよね。だったら…

 はっ、これが水鈴のいう無意識面食いというやつか!!いやいやそれ絶対まずいから!!

「小杉さんって丸山の友達なんだって?」

「は、はいっ」

 いつの間にか私の前に水鈴が大隈先輩、と呼んでいた人が座っていた。水鈴をちらっと見れば何やら別の話題で盛り上がっていてこちらに気づいてない。


「小杉さんは、丸山といつから友達なの?」

「丸山さんとは大学時代に同じ授業で隣同士になったのがきっかけで仲良くなったんです」

「そうなんだ。別に俺の前だからって名字で呼ばなくていいよ。俺は丸山が新人の頃の教育係だったんだ。彼女、はきはきしたしっかり者だけど大雑把なところもあって面白いよね」

「そうなんですか」

 この人、水鈴の性格をよく分かってるみたいだけどなんか淡々としてつかみどころがない人だなあ。社長みたいな腹黒大魔王ならすぐ分かるんだけどそういう匂いはしないし。

「部署が別々だから接点をもちたくてけっこうな頻度で食事に誘ってるんだけど、丸山は“教育係だったから気にかけてくれてる”くらいしか考えてないみたいでさ。どう思う、小杉さん」

「どう思うって言われても…それは水鈴に言うことで、私に言うことではないのでは?」

「まあ、そうなんだけどさあ。今日だって仕事やりくりして先輩の権限使ってねじこんだのになあ」

 大隈さんのその言いっぷりがなんだかおかしくて、噴き出してしまう。水鈴と大隈さんかあ…どうやら悪い人じゃなさそうだし、少なくとも社長のような腹黒じゃなさそうだ。

「大隈さん。水鈴は秋限定初恋ショコラが最近のお気に入りなんです」

「え、そうなの?」

「ついでにいえば、あのCMも好きです」

「えっ。それって、quattuorの真似しろってこと?!キスかいたずらかなんて俺、無理」

「あのCMはquattuorだから成立するんです。一般人の場合は互いに恋愛フィルターがかかってないとドン引きです」

「確かにそうだ。でも初恋ショコラで釣るってのはいいかもしれない」

「釣られるといいですねー」

「かーのこ、大隈先輩と何の話をしてるの?」

 いいタイミングで水鈴が私の隣に座った。

「水鈴と私の出会いの話を聞かれてたの。ついでに社内での水鈴の話を聞いちゃった」

 人の話で盛り上がるなんてと頭を抱える水鈴とそれを優しく見てる大隈さん…うまくいくといいなと思った。

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