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名探偵・藤崎誠シリーズ

おれおれ詐欺凸

作者: さきら天悟
掲載日:2015/12/15

「おれ、俺だけど・・・」


「しんじ、真二なの?」


「うん・・・」


「どうしたの?」


「うん、俺やっちゃった・・・」


「何を?」


「子供にケガさせちゃった。

突然、飛び出して来て・・・」


「だから車の運転は気を付けなさいって。

それでどうするの?」


「取り敢えず、手術代80万円が必要だって。

後で保険で返せるから」


「80万ね。

なんとかなるわ」


「じゃあ、午後3時に市役所の裏の駐車場で。

今、病院にいるから友達を行かせる」


「分かったわ。すぐ用意するわ」




これは古典的な『おれおれ詐欺』である。

警察は何度も何度も注意を呼びかけている。

『母さん助けて詐欺』などネーミングを変えたりして。

しかし、一向に被害は減らない。

連中は何人でも電話する。

それで、100人中1人が引っかかれば大儲けなのだから。




官僚出身の与党若手議員の太田はこれを踏み台にしようと思った。

この対策が上手く行けば、国民にもマスコミにもアピールになると踏んでいた。


「法が甘すぎる」

太田はまず思った。

電話してくるだけでは、おれおれ詐欺として立件できないのだ。

太田は頭を垂れた。

法案化するには時間がかかり、野党の協力も必要だった。

『おれおれ詐欺』対策なので、野党は協力的と思いがちだが、

警察が拡大解釈する可能性があるとか、難癖を付け、

何かと面倒になのだ。


こんな時、太田はある男に知恵を借りるのだ。

太田は自分の考えではないことに卑下しない。

政治家は良い案を採用すればいいのだ。

太田は、良い案かどうか判断する能力には自信を持っていた。





「・・・と言うことだ。

被害を減らすのに、何かいい案ないか」

太田は神妙な顔をして言った。


「どんなに警察が注意を呼び掛けても無駄だろう。

それでも100人に1人はやっかかてしまう」


「じゃあ、どうすればいい?」

太田は眉を寄せた。


「逆転の発想だ」


「逆転の?」

太田は小首を傾げた。


「名探偵にお任せあれ」

自称名探偵の藤崎誠は胸に手を当て深く頭を下げた。





1年後、おれおれ詐欺被害は激減した。

壊滅と言っていい。

十数組の犯行グループが摘発され、

K国軍の関与も明らかにされた。


この対策の陣頭指揮を取った太田はメディアから注目された。

十年後には、日本初の40代総理大臣になると噂された。

その年の暮れ、この対策が流行語大賞を取った。

『おれおれ詐欺凸』である。

『凸』は形状を表したもので、

『おれおれ詐欺ボタン』と言う。

電話に設置されたこのボタンを押すと、

詐欺グループとのやり取りの会話が録音されるのだ。

これを基に警察が一斉摘発をしたのだった。


自称名探偵藤崎の太田へのアドバイスはこうだった。

「警察が神妙な顔をして、

おれおれ詐欺に気を付けようって、

呼びかけるからダメなんだ。

反対に楽しめばいい。

逆転の発想だ。

100人に1人が騙されているなら、

99人は騙されてないんだろう。

その人たちが騙されたフリをして

警察に通報すればいいんだ。

手始めに会話を録音する。

電話機メーカーに提案して、

録音ボタンを『おれおれ詐欺ボタン』と表示してもらうといい。

そうすれば面白がってみんな騙されたフリをするだろう」


太田はフッと苦笑した。

一見くだらない案だがコストはほとんどかからない。

これで被害が減り、犯人が逮捕できるなら、

コストパフォーマンスは悪くないと思った。



『おれおれ詐欺ボタン』が付いた電話が販売されると同時に、

警察署では『おれおれ詐欺凸』のステッカーが配られた。

録音ボタンに貼る用の。


さらに高性能な電話も登場した。

電話中に『110』に通報できる機能が付いていた。

しかし、この最新電話機は活躍できなかった。

おれおれ詐欺はリスクが大きい犯罪と認識されるようになり、被害が激減したからだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] よかった・・・・・・事故に遭った子供なんていねぇのか・・・・・・ ステキ
2015/12/15 19:47 退会済み
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