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CONCERTINO~繋ぐ者~  作者: くらしかる
1/2

入り口

稚拙な内容ですが、お読みいただけると嬉しいです。


尚、続編もこれに統一しますが、当作では音名はすべてドイツ音階に統一したいと思います。なので


イタリア語コンサートキー:ドイツ音階


ド:C

レ♭:D♭

レ:D

ミ♭:E♭

ミ:E

ファ:F

ソ♭:G♭

ソ:G

ラ♭:A♭

ラ:A

シ♭:B

シ:H


です。※各楽器でドの音が違うので混同を避けました。

心突き動かす何かが。

人と人との間に何かが。

この空気の震う限り何かが。

その場に存在しない人との間に何かが。


そこにある。


人はそれを"音楽"と呼ぶ。


"イクヨ"

ステージに火が灯る。

"オウ"


タクトの軌跡と共にトロンボーンとチューバで幕開けた、"Bravo Brass"

乾いた金管がホールに響く。疾走感に満ちたトロンボーン、下から突き上げるチューバ。そして、トロンボーンのオクターブ上で華を添えるトランペットの合いの手。旋律は柔らかで優しい木簡へと移る。軽快な一時はすぎトランペットへと引き継がれる。そして、トロンボーンの乾いたFで冒頭を締めくくる。

疾走感そのままに音楽は、時は流れる。そしてその流れは、人の心をも動かすのだ。


ー2年前 4月ー

入学式というイベントはやはり無理だ。生理的に受け付けない。考えてもみたら、前も後ろも知らない人だ。しかも女子!!十数年間歩いてきたが、この時ほどぎこちなくなったのはハイハイから二足歩行へ進化を遂げたあのとき以来ではなかろうか。

嗚呼、気づいたら手と足同じになってるし...。後ろでクスクスと笑いこらえるので必死と言った感じの声が聞こえてくる。入学して早2時間。俺の3年間は終りを告げた模様である。

体育館の入り口が近づいてくる。時間よ、あと少しでいいから早く流れてくれ!足取りは重りを引きずっているかのごとく重く、そしてたどたどしい。体育館へ、いや、精神の戦場へと足を踏み入れる。今までこれでもかと鳴り響いていた吹奏楽の音がぴたりとやんだ。目の前がまっ白くなる。不安は勢力を増してメンタルに襲いかかる。心の中はきわどい籠城戦となっていた。敵は3000の兵を率い理性の中に籠城する我が豆腐メンタルを破壊せんと襲い来る。後ろ盾は頼りない自制心だけだ。武器は、これまた頼りない、というか頼っても仕方のない自尊心。四方から敵は攻めてくる。クソっ、このままメンタルはなすすべなく崩壊してしまうのか?!

この間進んだのはたったの3歩。そして4歩目で戦況は一気に変わった。

金管の爆音が鼓膜を貫く。その音色に俺の心は奪われた。あっという間に1曲が終わる。

"只今の演奏は、本校吹奏楽部によるBravo Brassでした。皆様お楽しみ頂けたでしょうか?"

「ブラボー...ブラス...」

そのあとの式の流れは覚えていない。反芻するのは空気を貫くやたら長い楽器の音色と頭蓋骨ごと揺らしていく馬鹿でかい楽器の暴力的な迫力だった。


「はい、じゃあこのあとは部活でも見てこい」

そうHR(ホームルーム)を締めくくるのはマダム、もとい倉西先生だ。

クラスの束縛から開放された自分の足は自然と音楽室へ向かっていた。

「あ!佑来じゃーん!丁度よかった、剣道部見に行こうぜ」

そう誘ってきたのは中学で同じ剣道部だった中谷健太。見知らぬ世界からの誘惑か、友からの誘いか...。うーん、これは際どい二択だ。思考は掻き回される。ここで断っても面倒にはならない自信はあるものの、すぐには断れない。そのとき、そんなくだらない思考を渦中から引っ張りあげてくれるものがあった。遠くからトランペットの音色が聞こえてきたのだ。曲名は確かそう、ハトと少年。俺の体はその音に引き寄せられていった。

「わりぃ、寄るとこあるから!」

そうやって粗雑に断ると、健太はふてぶてしい顔で

「じゃあぼっちで行ってきますよー!」

なんてふてくされていた。


ここで脳内で音楽室への道のりをおさらいする。

ウチの高校の校舎はコの字型をしており、縱画にあたる辺が東を向いている。そして1A〜3Iの全ての教室は三階にわけて南側にあり、

音楽室、美術室、図書室、理科科目(化学、物理、生物)室と言った特別教室は北側だ。ちなみに北側は4Fある。

その北側の4F最西端こそが今回の目的地、音楽室というわけ。とどのつまり、南側1Fの最西端である1Hに配属された俺からみれば、一番遠い教室という些か嘆かわしい事態になったわけである。

東側の校舎1Fを北に向かって歩く。大概の人は体育館やグラウンドに向かって歩いていて、見た顔とも幾度とすれ違った。人の波に逆らい北校舎にたどり着くと、そこに待っていましたと口を開けていたのは薄暗い階段。その階段を音に引かれて駆け登る。踊り場を曲がる度、トランペットの音は次第に大きく、そして鮮明に聞こえてくる。最後の踊り場を抜け、最後の階段を登ろうとしたとき、音が止んだ。構わず音を立てて駆け登る。軽く息をあげながらたどり着いた4Fにはちょっとかいた汗を冷やす涼しい春風が吹いていた。そしてその春風に乗って一枚のA4紙が足元に舞い落ちた。

「あー、ごめんねそれ俺のなんだ。」

詫びれながら小走りで駆け寄ってきたのは銀色のトランペットを持った先輩だった。胸のバッジを見る限り、2年生の先輩と思われる。おどおどしながら楽譜を手渡す。タイトルはハトと少年。案の定俺をここに連れてきたのは彼の音だった。

「あ、もしかしてウチの見学かい?随分早いね。だけど残念、二番手だよ(笑)」

先輩の肩の向こうには手持ち無沙汰に携帯をいじり倒すショートヘアの女子がいた。彼女の焼けた肌やその他の出で立ちからは微塵も文化部の匂いはしないのだが、場慣れしている彼女の態度からするに、吹奏楽部だったのだろう。

「せっかく早く来てもらったのに申し訳ないんだけど、まだ部長はおろか部員俺しか来てないんだ。だから彼女とあそこで待っててもらえないかな?」

しどろもどろに返事をすると、先輩は音楽室に消えていった。

二人で待ってろと言われても、彼女と交わす会話など皆無だ。先輩のハトと少年がない今、この場に流れるのは、眼下に見えるグラウンドの喧騒とは対照的な沈黙だけだった。

その沈黙がどれだけかはわからない。三十分にも一時間にも思えたが、実際のところは10分に満たないわずかな時間なのだろう。

「こんにちはー」

部員の宗教じみた明るさに満ちた挨拶が静寂をぶち壊す。部員予備軍も増援が大量に来て、音楽室の周辺は人口密度が跳ね上がって、まるで剣道の試合場付近のようになっていた。わからない方には休日のショッピングモールと思っていただいて差し支えない。

「ごめんごめん、遅れちゃったね、これからはじめの挨拶があるから、その間にこれ書いちゃってね」

と手渡されたのは氏名、所属していた部活等を書く紙だった。

「ん?もしかして、キミ剣道部だったの?」

ゴツゴツとしたマメだらけの手を見て先輩は言った。

「は...はい」

そう答えると先輩は口元を緩めた。

「じゃあ早く入部届け持っといで」

「えっ...?」

突然の事に驚きの声を漏らさずにはいられなかった。

「もうそんな目してちゃあね。入らないって選択肢ないんでしょう?」

全てを見透かされた気分だ。この人何者だ?

「あと、そこのお姉さんもね?」

彼女が静かに頷くと、先輩はまた音楽室に消えていった。

お目汚し申し訳ありません...


くらしかるです。

まあ見てのとおり吹奏楽部を舞台とした小説を書いてみました。


音を文字で表すのって難しいですね...ホント。


今後は吹奏楽あるあるとかもぶち込みつつ、まあおもしろおかしくやっていくかもしれませんw

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