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幕末の影(二)
これまで日本人が目にした事も無い巨大な異国船。アメリカ東インド艦隊司令長官ペリー提督と共にやって来た通称黒船と呼ばれる四隻は突然現れた。
幕府は通商や開国を迫った異国に慌てたが、彼らの来航を知らない訳ではなかった。日本が敗北するかもしれない…その可能性は予知出来ていたのだ。
しかし民衆にとってはその様な事情など知る由もない。
「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」
幕府への皮肉であった。
そんな騒ぎの中、十二代将軍徳川家慶は亡くなる。次期将軍徳川家定は様々な問題を抱えていた為、到底この危機を解決する事は不可能だった。
その為、老中阿部正弘が対策と改革の中心となる。
開国か異国を打ち払うか。幕府内では当然のごとくそれぞれの派に別れ対立が起こった。
そんな中で結ばれた条約調印。
日本は益々荒波の海へと入ってゆく事となる。同じ国の人間同士で争い戦う時代に戻ったのだ。