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序章
「あんなんおもろいんか?」
見る度に思う事をまた呟いた。遣いの道すがら、特に用事もなくぶらぶら歩いている時、視界に入るその光景。あちこちで見かけるその光景。
江戸の地でありながら京言葉を話す少年は違和感を感じつつも惹かれている事にいまだ気付いていない。視界は必然だという事に。
まさか京を離れるとは想像すらしていなかった。
しかし世の中自分の力ではどうにもならない事もあるのだ。そんな事も知らなかった。
ただただ与えられた役目と役割を果たすしかないのだ。自分は求められたのだろう。ならば江戸へ行くしかないのだろう。
江戸で生き江戸で散る。それが本意でなくとも。