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ナイは混沌の声  作者: 山和平
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秘仏録

◇夜空奏如来について


 大日如来によって曼荼羅宇宙が完成する以前に存在する、混沌たる世を象徴する存在。

 一説によれば、大日如来ヴィローシャナはゾロアスター教の光明神アフラ・マズダーを原型としており、その対極に位置する悪神アンリ・マンユが夜空奏如来の原型ではないかと言われている。

 研究者の中では、しばしば「裏大日如来」であるとか「暗黒大日如来」と表現される。

 知られている仏像は極めて少なく、東アジア圏内では片手で数えるほどしかない。

 その一体が、地図から消えた村、宮城県と岩手県の沿岸部県境にあった旧伊須磨郡谷地村の洞窟寺院から発見されたのは二十一世紀に入ってからである。

 単独で置かれる事はほぼ無く、黒智爾観音と州無尼菩薩がセットになる。

 衣服に無数の宝玉、或は眼球が入っている事が特徴で、特に一回り大きく玉虫色に光る球が十三個ある。

 ところで、普通曼荼羅は中心に如来を置くが、夜空奏如来の華蛇州曼荼羅では如来は上部に置かれ、中心部は白い空白・白地になっている。これは曼荼羅絵図の変化において途上に当たると言うのが研究者の見解であり、またその形からセフィロトの樹との関連性を指摘する研究も存在する。


◇黒智爾観世音菩薩について


 観世音菩薩の名が示す通り、人の世に降り立ち叡智を授ける菩薩の化身の一つ。

 夜空奏如来の従属仏だが単独で祀られる事も多く、特に九州地方に何体か現存が確認され信仰を集めている。

 その特徴は黒塗りの顔面、もしくは眼鼻口が無く黒く塗られた顔である。

 頭部には三重冠がある場合が多い。また複腕である事もある。座獣は鷹の羽を持つハイエナ

 その特徴的な外見から『無貌観音』と呼ばれる場合もある。

 異形に反してその御利益から、受験生はもちろん、何故か国家公務員一種を受けるキャリア志望に人気が高い。

 ちなみに黒智爾観音とは日本に伝来する間に別の名前がくっついてしまったもので、本来の名前は『阿瑠羅菩薩あるらぼさつ』と言う。関連する経典には『南無阿瑠羅菩薩ないあるらとぼさつ』と言う言葉が残っている他、東北の一部地域では日の光を完全に遮断した仏間で巨大な念珠を十人ほどの子供が「ないあるらあとないあるらあと」と繰り返しながら回す『百万遍』と言う隠し念仏の行事が存在する。

 余談だが。

 日本国内の全ての原子力発電所には、必ずこの黒智爾観音が秘されて祀られている。


◇州無尼菩薩について


 一般的な観世音菩薩は女性的な面を持つ場合もあるが、州無尼菩薩の場合は完全に女性の属性を持つ菩薩で、非常に肉感的な姿をしているのが特徴。

 また、仏像としては異例の山羊の角冠を頭部に着けている。

 この姿から、ルーツはメソポタミア文明の大地母神アナト、或はイシュタルではないかと考えられる。

 また、仏像によっては明確に孕んだデザインが入っており、古代の大地母神との関連性は疑いようがない。

 その姿から子宝・性技に関わる淫宗派に信仰されていた事も有り、弾圧や仏像の破壊が行われた歴史もある。

 まだ原始仏教の時代に取り込まれた地母神の相を持つ、極めて珍しい菩薩であり、必然現存は少ない。


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