プロローグ
あるところに、大昔から仲の悪い二つの国がありました。
一方は小国一つなら一夜で制圧できると囁かれるほどの武力を誇り、一方はかの国に目をつけられれば内部から国が崩壊すると恐れられるほどの知力と諜報力を誇っていました。
二国は、国境の町を巡りそれはそれは長きにわたる争いを繰り返しました。結果、両国民は疲弊しきり、王族や貴族に対する不満だけが募っていくこととなったのです。
そんななか、やっと二国間の争いが終結を迎えました。どれだけ仲が悪いといえども、疲れ切った国民を抑え、戦争を続ければ待っているのは民による暴動です。それを、なにより国は恐れました。敵を相手にしつつ、暴動を鎮めるだけの体力は、両国ともに残っていなかったのですから。
だからこそ、二国は苦い顔をしながらも停戦条約を結びました。しかし、そんな紙切れ一つでは長きにわたり敵同士だった国を簡単には信用できません。
そこで、二国は考えました。紙切れ一つで信用できないならば、人間を差し出そうと。そうして決まったのは、双方の一の姫君を双方の王族に嫁がせることーー。言わば、人質でした。
これは、少々気の強い人質の姫君と日の目を浴びずに育った第二王子のお話。