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サンドイッチの秘密2

12月3日編集。お金の描写はまた今度考えます





 長老が慌てて去った後を追いかけるようにして梨華も外へ行こうとすると、リースに引き止められる。


「どこかへ行かれるんですか?」


「待ってる間、村の中でも見せてもらおうと思って」


「そうですか!何もない村ですがぜひ見て行ってください。この村には自然くらいしか無くてお恥ずかしいですが」


 男は窓の外を眺めながら言う。綺麗な景色だ。


「自然って良いですよね。私の住んでる王都はほとんど自然なんて残ってなくて」


「王都ですか、良いですねー。いろんな物があるでしょう?」


「まあ、人と物だけはたくさんありますけどね」


「私も幼い頃は都会にあこがれてたんですよ」


「あら、あきらめちゃったんですか」


「ええ、都会にでる前にこの人と出会ったから。ねえ、あなた。」


 リースは夫のほうを見ながら答える、男は恥ずかしそうに目を背けながら答える。


「ああ、そうだな。私たちは結婚できる年齢になるとすぐに結婚したんです」


「へー、それじゃあ今は都会には興味ないんですか?」


「……そうねえ、まったくないわけじゃないんだけど。今は家族みんなで無事でいられたらそれでいいかな」


「それが一番ですよ。それじゃあ、散歩でも行ってきますね」


「お姉ちゃん、いってらっしゃい」


 すると今まで黙っていたケントが手を振ってくれた。少し驚いたけど嬉しい。手を振リ返して外へ出る。



 梨華は辺りを見回し、おもしろそうな場所が無いか目星を付ける。


「さてと、どこに行こうかな……あ、あそこなんだろう。行ってみよう」


 梨華は辺りを見回し、おもしろそうな場所が無いか目を凝らして探していると、離れたところに畑があるのが見えた。村の外れにあるそこへ向かってすたすたと歩き始める。少し歩いてその畑に着いた。


「へえ、何この野菜?初めて見た。きれいな色、おいしそうね」


 梨華が呟きながらその野菜を眺めていると、どこからかおじいさんが現れた。


「……おお、あんたか。ランケージんとこの嫁と子供を助けたっちゅうのは」


「えっと、ランケージっていうのがリースさんとケントくんのことを指しているのならそうですけど」


「そうじゃ、そうじゃ。なんでも馬車の事故に巻き込まれたそうな。よくぞ、助けてくれたの。 この村のもんは皆家族みたいなものじゃから、礼をさせておくれ。何もない畑じゃが好きな物を持って行っておくれ」


「いやいや、そういうわけにはいきませんよ。宴も開いてくれるそうですし、お礼は十分です」


 梨華は苦笑して断りを入れる。このままでは会った村人全員からお礼を受け取る事になってしまう。一人から受け取ったらなし崩しになってしまうから最初が肝心だ。


「いいや、村のもんを助けてもらったというのに、何もせぬのではわしの沽券に係わる。さあ、持って行っておくれ」


 それでもおじいさんは頑として聞き入れようとしない。あまり断るのも失礼な気がしてきた。


「困ったなあ……それじゃあ、お礼としてこの野菜を安く売ってくれませんか?さすがにタダというわけには……」


「……よしそれじゃあ、大安売りだ!どれがほしい?」


「それじゃあ、このにんじんみたいな奴と、じゃがいもみたいな奴と、キャベツみたいな奴と……」


「みたいなとはなんじゃ、みたいなとは。これはちゃんとした野菜じゃい。こっちもそうじゃ、この村の野菜は少し変わっているからのう」

「失礼しました。それじゃあこの野菜はどうしてこんな綺麗な見た目なんですか?少しも曲がってないし、太いにんじん。普通こんなに綺麗にまっすぐ伸びないでしょう」


「これは、品種改良といってな詳しくは教えられんが、野菜どうしをかけ合わせたり肥料を変えたりして作るのじゃ」


「へえ、だから」


「それで、それだけでいいのか?」


「えっ、ああ。それじゃあ、ここにある野菜全種類少しずつください」


「分かった、しばし待っておれ」


「はーい」


「よっこらせっと、ここにあるので全てじゃな」


「いくらですか」


「全部で千円※で良い」


「千円※っ!それはいくらなんでも安すぎだよ!」


 梨華は一万円※分くらいはありそうな野菜の山を見ながら言う。


「恩人からまともに金をとる気はない。いいから持ってけ」


「……それじゃあ、せめて五千円※くらいは払わせて下さい」


「いいじゃろう。持って帰れるか?なんなら後で家まで運ばせるが」


「アイテムボックスに入れるから大丈夫です」


「そうか、それならよいのじゃが」


「はい、これ代金ね」


そう言って五千円※渡す


「確かにもらったぞ」


「よし、じゃあ行きます」


「うん?アイテムボックスには……もう入っとる!?呪文はどうしたのじゃ」


 おじいさんが先程まで野菜の山が置いてあったところを驚いた様子で見ている。そこにはいつの間にかもう何一つ残っていない。


「無言呪文ですよ」


「無言呪文!無言呪文を使えるのか。ということは、高位の魔術師なのじゃな」


「え、ええ。まあ」


「ぜひとも、わしの孫の嫁に来てはくれんか」


「はあ?なんであなたまで」


「わしまで、ということはすでに他の者からも誘われておるのじゃな」


「ええ、ランケージさんのところからも誘われました」


「わっはっは!まだ、あそこの息子はまだ八つじゃろうて。いくらなんでも、気が早すぎるぞ。あそこの息子は幼すぎるがうちの孫ではどうじゃ。うちの孫はお前さんと同じくらいの年齢じゃ」


「お・こ・と・わ・り・し・ま・す」


 梨華にものすごい勢いで断られたおじいさんは明らかに落胆した様子だ。


「はあ、そうか。お前さんが来てくれると助かるんじゃがな」


「……さっきから気になってたんだけど、どうしてこの村の人は結婚、結婚って言うの?それとも、おじいさんとランケージさんのとこだけなの?」


「いや、この村の者なら皆そうじゃろう。田舎によくある人手不足でな。若者は誰であろうと欲しいのじゃ。まして、能力が高い者は特にな。この村は元々あまりよそ者を受け入れていなかったのじゃが、最近は外からも積極的に人を受け入れているのじゃ」


「なるほど、それで……」


「そういうことで、どうじゃ?知り合いでもいい。誰かこの村に来てくれそうな人はおらんか」


「……生憎心当たりはありませんね。私の知人はほとんどが根無し草の冒険者ですから」


「そうか。まあ、また遊びに来てくれ。いつでもこの値段で売ってやるからの」


「はい、また来ますね」


「待っておるぞ。そして心変わりしたらいつでも嫁ぎにきておくれ。わしがいい男を紹介してやるからの」


「あはは、そうだね。その時はよろしく。」


「まかせておけ」


「それじゃあ」


 梨華はおじいさんに手を振る。


「ああ、また来るんじゃぞ」


 おじいさんも梨華に手を振り返す。


 そして、おじいさんと梨華はお互いの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。





品種改良とかは適当です

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