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大賢者と話し合い

二月二十三日編集済





 王宮から戻って大賢者の家にて、思春期という事もあり普段は滅多に訪れない大賢者の部屋を訪ねた。


「……おじさん。私、琉斗を育てることにしたよ。それで、色々相談に乗って欲しいんだけど」


「そうだな。すぐに決めなきゃいけない事は多いぞ。まずは琉斗の扱いをどうするかだな」


「それなんだけど、甥っ子だし見た目で親子関係を疑われる事も無いと思うから本当の親子という事にすれば良いと思わない?私は割と図太いからどう言われたって構わない」


「琉斗の事だけを考えるなら確かにそれが一番なんだろうが……未亡人ならともかく、一度も結婚していないんじゃあ若気の至りと思われる。将来結婚したい相手ができてもうまくいかないかもしれないんたぞ」


 大賢者は眉間にしわを刻んで本当に娘の事を心配している。知らない人が見ればこの二人に血の繋がりが無いなんて思わないだろう。養子でも本物の親子のようにはなれる。そうなるまでに紆余曲折はあるけど。大賢者の気持ちも十分に分かるから。


「結婚なんて今はまだ考えられないけど……それなら血縁関係の無い養子じゃなくて、ちゃんと甥として育てるとか。手続きは複雑になるだろうけど」


「今は君の家族は僕しかいない事になっているからな。実母と姉が見つかって姉の遺した子どもを養子にする。そういう風にできない事は無いが、やはりその辺りを詳しく突っ込まれると危ないぞ。」


「そこから連鎖的に琉斗の事がバレるかもしれないなら駄目だね……じゃあおじさんの子どもって事にするのは?」


「それこそ貴族連中の目を引くぞ。君の時は養女でもしばらく騒がしかったんだ。これが実の子になったらそれどころじゃないな。それに君に相続させられなくなるから、これからも結婚も子どもを作る気もないぞ」


「おじさん……」


 この国では養子は法律上養父の財産や爵位を相続できる。けれど妻や実子よりは優先順位が低く、場合によっては相続自体ができなくなる事もある。だからおじさんはそうならないようにって……気持ちは嬉しいけど、おじさんにも幸せになって欲しいからなんとも言えない。


「……まあなんだ、子どもがいるからって結婚をためらうような相手ならどちらにせよこっちから願い下げだ。梨華の思うようにしなさい」


「うん……ありがとう。それでね、住む場所なんだけど。ここじゃあ王都のど真ん中だし、目立つでしょ。ここを出てどこか借りようと思うんだけどどうかな?」


「まさかひとり暮らしをさせる前に、子どもと二人で生活させる事になるとはな……領地でも良いが、みんな君が未婚の母になった事を知ったら卒倒するだろうからな。いもしない相手の男を締め上げるために暴動でも起こしかねない」


 大男爵領の領民達は赤ちゃんの頃から私の事を知ってるし、おじさんが苦労して育ててたのを手助けしてくれたから、親戚の子どもみたいに思ってくれてる。子育てはしやすいだろうけど変な心配をさせたくない。


「それもそうだね。どこか王都から離れた都市部で多くの人に紛れるのが良いと思うんたけど」


「そうだな。もしバレて厄介な事になった場合を考えて、国境沿いの街が良いだろう。戦争に巻き込まれやすい土地だから、隣が友好国で、領主もそれなりに優秀でまともな領地じゃないとな」


 大賢者が持って来て広げた地図を元に真剣に考え込む。梨華も一緒になって話し合いながら候補となる領地が決まった。


「やはりポスルスウェイス領だな。海に面した領地で、近隣国の心配をしなくて良い。海から狙われる可能性もあるが、辺境伯の治める領地だからそうそう街まで危険が及ぶ事も無いだろう。交易も盛んで他領からの移住者も珍しくない。大勢の雑多な人に紛れて怪しまれずに生活できるはずだ」


「そうだね。辺境伯は確か有能な人だったよね?他国の王族の口から名前が出てくるくらいだから」


 国内の貴族の事はあまり知らないし、当然辺境伯とも面識は無いけど他国の王族や貴族に会った時に時折話題に上がっていた。


「ああ。外国から国を守り、民にも重税を課したりせず、領地

の未来のためにすぐには利益の出ない政策も行う。朗らかだが芯のある人物で、跡継ぎもしっかりしているから代替わりしても心配いらないだろう」


「じゃあポスルスウェイス領にするね。早く住む場所決めないと。それから、あとは……ミルクとかはどうすればいいのかな?今は乳母がお乳をあげてるみたいだけど」


「ああ、ミルクは君の時は最初は貰い乳をしたりしてたけど、途中からは粉ミルクを使ったな。しっかりした乳母を雇うなら良いが、感染症も怖いからな」


 今でこそ類似品も出ている粉ミルクだけど、発売当初は大賢者商会でしか売っていなかった。おじさんが私の育児中に開発した関連商品は山ほどあるし、対抗する商売人の中には新しい商品を作って売るために養子を取っただなんて揶揄する者がいたほどその十年ほどで大きく変わったのだそうだ。


「だったら粉ミルクで良いかな。平民が乳母を雇うのは普通じゃないし、あまり家に他人を入れたくないから」


「それで良いと思うぞ。改良に改良を重ねて栄養分も母乳とほぼ変わらないからな」


「あとはおむつとかかな?道具も色々買わないと」


「それなら、一緒に店まで見に行かないか?手に取って見た方が分かりやすいし、こっちも説明しやすいから」


「うん、そうしようか。今日はもう遅いから明日の朝とかが良いかな?なるべく早く必要なものそろえないといけないから」


 梨華は部屋にある時計を見ながら考える。もう夜と言っていい時間だ。


「じゃあ、今日は早めに寝なさい。明日は早めにでかけるぞ」


「うん、じゃあ、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」





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