梨華の悩み2
2020年12月28日編集
あれから三日たった大賢者の家で、大賢者と梨華がリビングで話している。
「……うん、まだどうするかは決めてないけどとりあえず私の甥?王子様?に会ってみようと思って。それで、王宮に連絡して欲しいんだけど……」
「ああ、そういやまだ会って無かったんだな。一度も会わずに引き取るってのも変な話だ。一度会ってみると良い。向こうには僕から連絡しておくから……それでいつ行くんだい?」
「えっと、できるだけ早めに行きたいんだけど……」
「それじゃあ、今日行って見たらどうだい?陛下もできるだけ早く決めてくれって言ってたし」
「ええっ!今日!?今日はいくらなんでも早すぎるんじゃない?向こうにも都合があるだろうし……」
梨華は思ってもいなかった事に驚き慌てている。大賢者の行動が早いのはいつもの事だけど、相手が相手だから戸惑ってしまう。
「いいんだそんなもん、向こうだって早く問題を解決したいだろうし、いつでも来てくれって言ってたから良いんだ」
「そんなこと言っても……」
「いいからいいから、じゃあ電話かけるぞー」
大賢者はそう言うとさっそく電話をかけ始めた。
その黒いダイヤル式電話は、まだ発明されたばかりの大変珍しく数百万もする高価な品物で、普通なら一般家庭に置いてあるような代物ではない。それが何故家にあるかというと、その発明者が大賢者だからだ。
おじさんは大賢者だけでなく商人と発明家もしている。褒められるとおじさんはいつも異世界転移者だから、元の世界の知識を使ってるだけだと言う。
「えっ、ちょ待って……」
「もしもし、私です。大賢者です。はい、陛下につなげてください」
「うっ、うわ!ちょ、ちょっとぉ……」
「何だ、うるさいぞ。向こうの声が聞こえないじゃないか」
「で、でも……いきなり過ぎるって」
「……陛下。はい、それはまだですが。一度王子に会いたいと言うので今からそちらへ向かわせますがよろしいですね?……はい、ではそのように」
「えっ、どうなったの?」
「良いみたいだよ、来てくれって。ほらほら早く準備しなきゃ」
「えっ、ホントにいいの?わ、分かった。今準備するよ」
「ああ、慌てるなよー。のんびりでいいからな。慌てると君はロクなことしないから……」
ガラガラガッシャーン
梨華が驚きながら慌てて立ち上がって準備を始めたら、案の定テーブルの上の物を盛大に倒してしまった。
「うわっ!やっちゃったー。あーあーもう、やんなっちゃう!」
「ほら-、もう言わんこっちゃない。君はドジなんだから気をつけろっていつも言ってるのに」
「もう、分かってるって!それに私はドジなんかじゃない。ちょっと、おっちょこちょいなだけだもの!」
「はいはい、そうだね。それより速く片づけないと。あー、もう。コップ倒してお茶こぼしちゃってるよ。布きんどこだ?」
「あっ!そこ、そこに布きんあるから取ってー」
布巾を探し回る大賢者に、梨華が先に見つけてテーブルの上にあった布きんを指差す。
「これか?」
「それ、速く取って」
「ありがとう。うわぁひどいな、コレ。一枚で足りるかなー」
大賢者に手渡された布巾で、梨華はぼやきながら濡れたところを拭く。たっぷり入っていたお茶が溢れて布巾で吸収しきれていない。
「今新しいの持ってくるから、拭いててくれ。どこに置いてあるんだ?」
「そこ、そこの中」
「ああ、ここに入ってたのか。はい、新しいの」
「ああ、うん。ありがと。じゃあ、これ洗濯機に……ってこれハンカチじゃん!やだーもう、わたしったらハンカチで拭いてたの?匂い移ってないと良いけど……」
梨華は大賢者に渡そうとしていた汚れた布きんを見て初めて、それが布きんではなくハンカチだと気づいた。
「ほら、こっちに寄越して。すぐ洗濯したら何とかなるかもしれないから」
「うん、よろしく」
「じゃあここは何とかしておいてくれ」
「よーし。仕方ない、さっさと片付けますか」
汚れたハンカチを洗いに大賢者は洗面所へ、梨華は再びテーブルの上を拭く。
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あれから少し経って、家の前で支度を終えて王宮へ向かう梨華を
大賢者が見送りをしている。
「じゃ、行ってくるね、おじさん」
「ああ、いってらっしゃい。また、何かしでかさないように気をつけるんだぞ」
「分かってるってば、もう。じゃあ、行くから」
「ああ、行って来い」
二人は軽く手を振りあって、梨華は王宮へ大賢者は家の中へと戻っていった。




