オーパーツと呼ばれた物のその後
ゾールマンが目覚めた時、既に女性とお付の少女はニッコリとこちらを見ていた。
(・・・ん?そういえば、急に眠気が襲ってきて、そのまま寝たのだったな。)
「さて、話の続きをしてくれ。」
「そうね。・・・何処まで話したっけ?」
「SPの種類までです、マスター。」
「そうだったわ。じゃー、今日は・・」
そして、SPに目覚めた新人類を率いたのが魔法士の子孫と、そのガーディアンで、長い差別と戦争の引き金になったのだという。SPを使えない旧人類はそれぞれの惑星に移り住み、その惑星の風土に合った能力に目覚めだした。その中の一つが気(闘気)と呼ばれる物だったり、声を媒介にして異能(魔法)を発動させる詠唱魔術だったり、ワシの世界のような道具に魔力を流すことで、その道具に刻まれている魔法陣に合った魔術を使用することが出来る魔道使い、通称魔道士だ。今はこの旧人類がこの星系、アイン星系(着いた先の初めての惑星の意)の中心で一大国家を築いているらしい。女性の話によればその国家間でも日々醜い争いが絶えないのらしいが。
逆に、目の前の女性たち、SPを主に使う新人類にも同様の能力が芽生えだし、中でも魔法士の子孫と、その科学技術とSPの双方を使いこなす幹部の物は、特殊なマイクロチップを体の内部に埋め込み、個人が脳内でキーワードを思い浮かべると自動で起動する変身(形状変化)する鎧(サイエンス・サイキック・ナノマシン・アーマー)通称アーサー参型(色々と改良を続けている)を付けていて、何時でも奇襲に備えている。(当たり前のことながらセミオート、なので万一の心配もないと思うのだが日々進化し続けている。)
勿論ガーディアンは魔法士の子孫が専用のマザーコンピューターでメンテナンスをし、魔法士が残したオーパーツとして、旧人類との戦闘の際には局地的殲滅兵器として参加している。
勿論、その子孫も戦闘に適性のある者は最前線で指揮をしたり、各地の惑星経営をしたり、幅広い活動をしている。(実はゾールマン(後にアーサーと命名される)と、女性もその子孫なのだが、本人達は知らされていない、オオハラ機械皇帝5963世(以後オオハラ皇帝)が何代か前に遊び頃で実験として子供達をそれなりの人数を護衛のガーディアン付で旧人類の住む惑星の近くに送ったのだ。上手く行けば双方の仲直りのきっかけになるかもしれないという期待を込めて。)
中では今の時代に希少な培養カプセルではない、自然交配をして子孫を作っている子孫もいるらしい。何でもその方が育てる事が難しい反面楽しいとか、身体能力の上昇や複数個のSPを持って生まれてくる者が多いとか。
そして、なんと目の前にいる女性は数年前オオハラ賞(数十年に一度行われる、自らのSPとサイエンスを用いて作った、自分の家族専用の護衛ガーディアン発表会で、最優秀者に送られる賞。この賞を貰った物は、もれなく軍の研究支援を受けられ、出来る限りの技術提供も受けられる。)と言う物を受賞し、自らで一から護衛のガーディアンやメイド、使用人を作れるほどのサイエンサーらしい。
・・・おっと、ここでまた眠気が来たよう・・・
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「・・・てなわけなの、凄いで・・・って、何時の間にか寝てるし。それにしても優秀ね~。流石は私の子、他の子も知識に関してはこれ位は期待したいわね。」
「それは無理なのでは?この子の中に入っている彼の影響が大半だと思いますし。」
「そうよね~。けど、これだけの知識を前もって持っていられるのは後後どうなんだろう?」
「といいますと?」
「つまりね?将来自分より精神的に子供の、体だけの大人にあれこれと年下だからって命令されたら、どういう化学反応が起こるか分からないのよ。上手く転がって、相手を屈服させたうえで支配下に入れる事も出来れば、孤独になり全星系を敵に回す事もある。そうなれば、この子の実力次第でこの星系が無くなるわ。」
「・・・そこまでには流石に成らないでしょう。ですが、孤独にしない様に私や他の6人の子たちが支えてあげればいいのです。それに、かつての魔法士の残したオーパーツの方々がいる以上、星系が無くなるといった事にはならないでしょう。」
「ならいいんだけどねー。」
「ですが、こうなれば、この子にSPの面でも期待せざるを得ないですね。もしかしたら、かの魔法士のような便利な物ではなくとも、自分の開発した物に命を吹き込める送命者のSPと念動力のSPの二つを持って生まれてくれれば完璧です。」
「ま、期待しないで待っていましょう。」
「はい。」
ピーーーーーーーーーーーーーー!
「ん?もしかして、頼んでいたサンプルが届いたのかしら?」
「かもしれません。かのガラハッドさんは仕事が早いと有名ですから。」
「それは嬉しいニュースね。早速来てもらいましょう・・」
「もう上がらせてもらっていますよ。ノーラ嬢。お久しぶりです。彼の魔道の知識を我々で調べた結果、形態的に旧人類の者が使っている道具に魔力を篭めて使うタイプに近いと判断しました。なので、彼が開発した物に命を吹き込める送命者の能力者だった場合、我らの創造主であるオオハラダイサク様と似た存在になる可能性が発生します。その場合は、ご連絡ください。我らも最大限の協力をさせてもらいます。言い忘れていましたが、これは創造主の願いでもあります。もし、未来に自分と同じような能力を持った者が生まれたら、協力を惜しむことはするなとの言葉がありますので。遠慮はいりません。」
「それを聞いて、安心したわ。これほどしてくれるのに何か裏があると思っちゃって。疑ってたから。・・・で、サンプルは持ってきてくれた?」
「ええ、とりあえずこの箱に手を入れて思い浮かべた物はなんであろうと材料さえ近くにあれば固まって再構築され、思い浮かべた性能の機戒に成る筈です。それが純粋な機械だろうと人の形を取っていようと、変わらない筈ですので、試させてください。その後、送命者ならばその物は命が宿り、念動力者ならただ動かせるだけ、復元者なら元のガラクタに戻ります。その他の異変はこの端末にデータとして入力してあるので確かめて置いてください。・・・それでは。私はこれで。・・・無事に生まれる事を期待してますよ?ノーラ嬢」
「ふふふ。それは私もよ。」
そういって、話をした後、ガラハッドは帰って行った。
「さー、早く生まれないかしら~?」
「マスター、気が早すぎますよ。」
「だってー。」
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