目が覚めて
・・・ん?ワシ、死んだんじゃないのか?何故まだ意識があるのじゃ?
じゃが、体は動かんし、眼も見えん。声も出せん。
・・あ、眠くなってきた。今度こそ死ぬのかいの?
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ピーーーーーー!
「あら、どうしたのかしら。幾らなんでもこんなに早く意識が芽生えるなんてことないと思うけど。・・・やっぱり、何ともないわね。一応の人の形を取れたばかりだし、幾ら私の子共でも早過ぎよね。・・・えーと、これが、SPの感じ方。・・・これがAI制御の教育法。・・・これがオートマターの製造過程と製法。・・・あー、教えたいことが山ほどあるわ。私の子供だから、やっぱりSPは人並み外れた物があるはずだし。頭脳もあの人の頭脳を引き継げていたら、坊さん(BOOO=オオハラ・オリジナル・オートマチック・ブレイン)システムも正しく理解して、より進化、発展させてくれる筈だしね。問題は能力か・・・これは、本当に運の要素が強いから怖いわ。」
そういって、独り言をつぶやいていた女性が不意に隣を見て、ちょいちょいと手招きする。
すると、坊さんシステムにより意志ある機械として生み出されたメイドロボ(外見はほぼ人型の17・8の若い女性、創造主の趣味が反映されたのか全ての女性型は、黄金率で計算されたごとく整っている。)がスゥーと音もなく近寄ってきて
「ナンデショウカ、マスター。タダイマノジコクハ、ゴゼンジュウジジュップン、チョウドデス。」
と時刻を答えた。
「ああ、時刻は良いの。エリス、貴女をこのもうすぐ生まれてくる、私の子供の教育係兼護衛に命じます。私も、出来る限りこの子の傍にいて、愛して、育てたいけど、もうすぐ始まる星間戦争に司令官として抜擢される可能性が高いの、この子と後の6人の子たちが無事にこの宇宙に生を受けられても、この宇宙船の中だけでは教育に限界があります。よって、この子達が15歳に成ればコロニーアセンブレットカントリーに寄港し、人工の物ではあるけど、自然を肌で感じさせようと思うの。勿論、この子だけでなく、他の子にも、それぞれ坊さんシステムを備えた、養育者を付けるけどね?」
「ワカリマシタガ、マスター。コノオコサンノ、オナマエハ、ナントオヨビスレバ、イイノデショウカ?」
「あー、言ってなかったわね。この子は、私とあの人の愛の結晶。よって、何れは坊さんシステムの全てを司るキングになって欲しいという願いを込めて、アーサーと名付ける事にしたわ。」
女性が子供の名を告げると、エリスと呼ばれた、坊さんシステムのAIロボットはその名を聞いて
「ヨイオナマエデスガ、ワタシハコノ、ハナシカタデモヨロシイノデショウカ?フツウノヒトノ、ハナシカタデ、セッシマショウカ?」
エリスの提案に、女性は「うーん」と唸ってから
「そうね。今後の事も考えて、機械の話し方では何かと不便だし、人の話し方にして頂戴?」
「リョウカイシマシタ。アー、あー。これで宜しいでしょうか?」
「うん、OKよ。それで、教育の方も宜しくね?」
「畏まりました。」
そう、頷くと、エリスは自分の教育方針をカリキュラムとして、データに落とし込んでいく作業に移った。
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・・・ん?ここは?やっぱり意識があるな。・・・何故だかわからんが。生きていることは解る。
ピーーーーーーーーーーーーー!!
「生体ナンバー001、通称アーサー。意識クリア。微かにですが会話も可能な模様です。マスター、指示をどうぞ。」
ん?今のはなんの声だ?人の声にしては少し発音が変だったが。
「**、***********?****?*、****、**************。*****、**************?」
目の前の少し緑の液体は、見覚えがあるな。・・・確か、培養カプセルだったか?ワシはその中に入っているのか。あの魔道で生きてるのも不思議なんだが・・・。しかし、言葉が分からんのはいかんな。どこの惑星に跳んだんだ?
「**、ああ、あーあー。聞こえる?わたしの赤ちゃん。聞こえたら、どんなことでもいいから行動して?」
目の前の女性が、赤ちゃんと言ったが。・・・はて?どこに、赤子がいるのだ?この中にはワシしか居ないのじゃが?
「のう、お嬢さん。何処に赤子がおるのだ?この中にはワシしかおらんぞ?」
ワシの言葉を聞いた女性が、ピシッといった具合に固まり、急いで目の前の計器を調べ始めた。
どうしたというんじゃ?ワシ、なんか変なこと言ったかの?
そして、再びワシの方を見て女性が恐る恐る聞いてきた。
「ねえ、一応聞くけど、貴方の名前は?」
?なにを言うかと思えば。っと、そういえば自己紹介がまだじゃったな。
「申し遅れた。ワシはアルマテラス星系第八惑星リードルカ星の帝国は皇帝付大魔道士クレイフ・ゾールマン提督。どうやら、部隊の危機を脱するために放った究極魔道が変な作用を起し、ここの近くに飛ばされてきたようだの?ワシ自身、生きていられるとは思わなんだが、助けてくれて感謝する。・・・して、ここはどこかいの?」
ワシの紹介を聞いた女性が物凄く気まずそうに顔を俯かせ、数瞬後、何かを決意した様に顔を上げて
「申し訳ないけど、貴方は多分、一度その、自分の魔道?によって命を失ってから、再び記憶のあるままに私の赤ちゃんの元に入り込んだのだと思うわ。しかも、今貴方に聞いた惑星も星系も聞いたことが無い物だから、別宇宙か、もしくは数世紀過去の物だと思う。戦争はまだ続いてるけど、私たちが使うのはサイキックパワーでSPと呼んでる物で、魔道と言うのは使ってないわ。SPだけというのでもないけどね?少なくとも、生身で行使できる力はSPだけよ。坊さんシステムにインストールすればボルティックアーマーを介して様々な不思議現象を起こすことも可能だけどね?」
うーん。生きてるのは良かったが、まさか赤子になっていようとは。それにワシが居た宇宙とは色々と変わってしまっているようだ。・・・なんか、考えていたら、だんだん眠気が・・・・
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「・・・あら、とうとう寝ちゃったみたい。しかし不思議な事もあるものね。まさか、爺さんが赤ちゃんの中に入るとは。まー、私の子には間違いないから、意識が芽生えるのが早くて優秀、位に思ってたらいいか。」
「マスター。それでいいのですか?」
「良いの良いの。けど、私たちのやることに変わりはないわよ?どうやら、何も知らないのは赤ちゃんもお爺ちゃんも変わらないようだから。教える事は多いと思うわ。頑張りましょう?エリス。」
「はい、マスター。」
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