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変な痣が出たと思ったら、皇帝の証だった件

【急募】なんか変な痣でたー(´;ω;`)【集合知】

作者: アッサムてー
掲載日:2026/10/20

 魔皇学院にあるお仕置部屋は、意外と快適である。


 大昔からある、悪さをした生徒たちを閉じ込め、反省させる部屋だ。

 時代が時代なら【懲罰房】と呼ばれていた部屋である。


 俺の第二の私室だ。


 現代では、精々悪さをした生徒を反省させるために閉じ込め、反省文を書かせる程度の部屋だ。

 冷暖房完備、飲食OK。

 なんと快適なことか。


 そんなお仕置部屋の常連というか、住人となっているのがこの俺だ。


「ぜっっっったいに、でてくるなよ?!

 わかったか!?

 わかったなら返事をしろ、シア・ドラグナイト!!」


 半ば怒鳴りつけてくる担任に、俺はいつも通りのんびりとした返事をする。

 何をイライラしているんだか。

 いつもなら、こんなことは無いのに。


「はーい」


 プハー、炭酸ジュースぷめぇ!!


 全く、俺がここから自分で出ていったことなどないのは知っているだろうに。

 ちゃんと、担任が呼びに来るまで待っている。

 担任はカッカしながら、お仕置部屋から去っていった。

 ちなみに、ここは別棟である。

 本校舎の方にある体育館では、現在大事な儀式をしているらしい。

 次代の皇帝を決めるとかなんとか。

 とにかく、そういう儀式をしているのだ。

 よく知らない。

 俺には関係ないことだからだ。


 なにせ、俺は魔族でありながら、魔力ゼロ判定を受けた出来損ないだ。

 家族や同級生からはとにかく存在を無視されている。

 ……全員が全員と言うわけではないけど。


 魔族は実力主義、能力主義の種族のため、とりわけ魔力が低い者には冷たい。

 魔力ゼロの俺は、冷たいどころではなく存在を認めてはいけないのだ。


 そのため、友人どころか知人も、ほぼいない。


 しかし、実家が名家なのだ。

 それこそ、何度も皇帝を輩出している家柄だ。

 そんな家の生まれだから、慣例としてエリート校である【魔皇学院】へ入学させられ籍を置いていた。

 まぁ、それもあと三日の話だ。

 三日後、卒業式がある。

 俺も三年生なので卒業だ。


 卒業式の日に、家を出ていくこととなっている。

 古い言葉でいうところの、追放だ。

 別に気にしてない。

 家にも、学校にも居場所はない。


 それが普通だった。

 魔力ゼロ認定を受けてからの、日常だった。


 そんな場所に未練などなかった。


 なんなら早く卒業したかった。

 そうすれば、夢にまで見た新生活がはじまるのだ。


 俺にはすでに、ここではないところに居場所があるのだ。


 指折り数えるくらいには、卒業の日が楽しみで仕方がない。


 そんなわけで今日も今日とて、第二の私室に持ち込んだ漫画や小説を読みふけり、お菓子を貪り、ジュースをゴックゴクと飲んで、悠々自適に過ごしていた。


「あぁ!!嘘、死ぬの?

 お前しぬの??

 ヤダヤダ、死ぬな!!

 これからだろ!!

 これから幸せになるんだろ!!

 俺の推し、死ぬな!!」


 バイト先の先輩に教えてもらった漫画を熱心に読みふけっていると、急に部屋が明るくなった。

 もともと照明のおかげで明るかったが、さらに明るくなったのだ。


「???」


 漫画から顔を上げ、照明器具を見る。

 まん丸の光の玉が浮いていた。


「なんだ、これ??」


 俺が呟くのと、光の玉が一際強く発光するのは同時だった。


「うわ?!」


 思わず目を閉じる。

 一秒、二秒たち、おそるおそる目を開けた。

 光の玉は無くなっていた。


「何だったんだ?」


 首をひねる。

 誰かのイタズラか何かか??

 魔法のことはよく知らない。

 もしかしたら、儀式関連で何かミスりでもしたのか。

 わからないが、爆発とかしなかったしまぁいいや。

 そう考え直して、俺は漫画の続きを読もうとした。


 その時に、気づいた。

 左の手の甲に、火傷痕のような痣が出来ていることに。

 あわてて制服の袖を全部めくる。

 左腕全体に、痣のようなものがでている。


「え、なにこれ?!」


 さっきまでこんなのなかった。


「さっきの光の玉か?!」


 そうとしか考えられない。


「落ち着け、落ち着け。

 とりあえず、落ち着け俺」


 こういう事例を、たしかベル先生から教わったはずだ。

 記憶を手繰る。

 呪い、という言葉が浮かんだ。


「呪われた?!

 俺、呪われたの?!

 ヤダぁぁぁあ!!!!」


 パニクってしまうのは仕方ないだろう。

 どうしよう、どうしよう、どうしよう??

 そんな俺の脳裏に、またしてもヒントになるような言葉が浮かんできた。


「あ、そうだ」


 俺は指を中空で滑らせる。

 すると、そこに薄いガラスのような枠が出現した。

 俺にだけ見えるウィンドウだ。

 そこには、【掲示板】と呼ばれる情報交換の場があった。

 ここに繋がっているものなら誰でも書き込める場所だ。


 恩人である先生に教えてもらい、繋げてもらった。


 俺の居場所の一つだ。


 この【掲示板】、さまざまな世界と繋がっている。

 つまり、いろんな世界の人たちとも交流できるのだ。


 ――なにかあったら建ててみるといい、おもしろいぞ――


 先生がそう言っていた。

 今までは、少し眺めるかちょっと書き込むくらいしかしていなかった。

 でも、試しに使ってみようと思った。

 ありとあらゆる世界の人が見ているなら、誰かしら助言してくれそうだ。


 念の為基本情報タグに、いまいる世界と国のことを書いておく。


 準備は整った。



【急募】なんか変な痣でたー(´;ω;`)【集合知】



 これがスレタイだ。

 俺は、最初の書き込みを行う。

 たのむ、だれか、だれか書き込んでくれ。


 今までの人生、身内や家に仕える従業員、同級生達からも興味を示されることの無い人生だった。


 俺も俺自身に、そこまで興味を持てなくなった。


 そういうものだ、と本気で思っていたから。

 でも、今初めて、誰かに興味を示して貰いたいと思っている。

 先生のように優しくなくていい。

 なんなら、冷やかしでいい。

 とにかく、誰でもいいからここに書き込んでくれ、と願った。


「……あ」


 願いが届いたのか、最初の書き込みがあった。


 《なに、そのコテハン》


 それから次々と、さまざまな人がスレへ書き込んでくれる。

 ちなみに、俺の固定ハンドルネーム、略してコテハンは【お仕置部屋の住人】である。

 間違ってはいない。

 むしろこれでも無いくらい、俺を表現しているコテハンだ。


 《まぁ、まずはスペックと経緯だ

 スレ主、書き込め》


 そう指示される。

 そうだ、まずは自分の情報と、なぜ掲示板を建てたのか説明しなければならない。

 おもしろおかしく、俺は自分のことを書き込んでいく。


 《魔皇国に住む、転生者!んで魔族だよ!

 子供の頃に、魔力諸々の数値がゼロ判定受けたから

 底辺ゴミ扱いされてるよ!

 でも、一応実家が名家だから魔皇学院に入れられて学生やってるよ!!

 けど底辺だからね!

 友達なんていないよ!

 生徒も教師も九割がた無視してくるよ!》


 書き込んでる途中で、ちょっと泣きたくなってきた。

 ちなみに、この書き込み実際にウィンドウに触れると所謂フラップ入力できるようになる。

 あとは、思考入力と音声入力ができる。

 携帯端末を使わなくていいから、とても楽だ。

 この世界にある携帯端末を使っても、ここへアクセス出来るらしいが。


 携帯端末の購入手続きには、親権者の同意が必要だったので諦めた。

 でも、卒業して晴れて十八歳になったので給料が出たら購入予定だ。

 なぜなら十八歳なら、親権者の同意が必要ないのだ。


 俺は泣きたくなった心境をそのまま顔文字で表現した。


 《ボッチってやつだね(´;ω;`)》


 自分自身のことにも興味はなかったはずだが。

 こうして文字にしてみると、やはり自分の置かれた境遇にちょっとだけ悲しみのようなものが湧いてきたのだ。

 気を取り直して、今日のことを説明する。


 《今日は色々あって、お偉い人達が学院にきて

 とっっっっっても大事な儀式をするから

 俺みたいな出来損ない底辺生徒は、お偉い人達のお目汚しになるからってことで

 お仕置部屋に閉じ込められてるんだ!!》


 まぁ、正確には意気揚々と部屋に来た。

 そして、悠々自適に菓子とジュースを貪って漫画読んで感情移入しまくって楽しんでいた。

 そこで、どうやら魔皇国の住人らしい人が書き込んできた。


 《あ、あー、はいはい

 次代の皇帝が選ばれる日だったな、そういや》


 世間的にも有名なイベントだからか、知っている人がいてもなにもおかしくない。

 さて、俺は本題に入った。


 《まぁ、なにかしらあったら閉じ込められるのがデフォだから

 積んでた小説とか、お菓子、ジュースを持ち込んで

 悠々自適に過ごしてたんだけどさ

 見てくれよ、これ》


 俺はウィンドウの機能を使って、自分の左腕を撮影し、その画像をスレへ貼り付けた。


 《お、おう》


 まず、戸惑った反応があった。

 つづいて、


 《なにこれ、蕁麻疹??》


 という書き込みがされた。

 蕁麻疹、たしかにそう見えなくもない。

 俺はさらに書き込んだ。


 《わかんない(´;ω;`)

 いきなり、部屋の中に光の玉が現れてさ

 めっちゃ光ったかと思ったら、この痣が出来てて


 これ、なに??

 変な虫に刺されたとかだと思う??

 それとも呪いかなんかだと思う??

 教えてエロいひと!!》


 蕁麻疹の可能性があるなら、虫刺されの可能性もある。

 体質にもよるが、場合によっては毒性の弱い蚊にさされても腕全体が腫れ上がることがあると聞いたことがあった。

 続いて別の人が書き込んでくれた。


 《なんか呪われることしたんか?

 スレ主は??》


 俺はその書き込みへ、答える。


 《(( 'ω' 三 'ω' ))

 してない》


 そもそも誰も俺に興味が無い。

 まあ、俺の存在自体を憎んだり嫌ってる人がゼロかといわれるとわからないが。

 しかしわざわざ、【呪いをかける】という関わり方をするとは思えない。

 魔族からすれば、俺は【関わりたくない存在】なのだ。


 掲示板には書かなかったが、言うなれば俺は【野糞】のような存在だ。

 自分から野糞に素手で触りに行ったりする者はいないだろう。

 チラ見してそれが野糞だとわかれば、目を逸らすはずだ。

 俺は言うなれば、そういう存在なのだ。

 そんな存在に、わざわざ【呪いをかける】という関わり方をするとは考えられなかった。


 糞の上に糞をする理由は無い。


 そこからは質問タイムとなっていった。

 痒みや痛みないか、と問われ、無いと答える。

 呪いの可能性が浮上する。

 しかし、やはり肌の違和感がないことを理由に、呪いの可能性も否定される。


 そんな中、俺の自己紹介の書き込みにツッコミを入れる人物が現れた。


 《誰でもいいから、スレ主の境遇に突っ込んでやって

 転生者のところとか

 シンデレラよろしく閉じ込められてるところとか》


 スペックを問われて書いたが。

 俺には前世の記憶というものがある。


 俺からしたら、全く他人のアルバムを見せられているような感覚に近かった。


 頭を打った影響か、それとも前世のことを思い出したからか。

 あるいは両方か。

 俺は、魔力ゼロ判定を受けてからの今までの扱いに関して、自分で言うのもなんだがどこか冷めた感覚があった。


 存在を無視されているのはその通りだけど、衣食住という最低限のものは与えられていたからだ。


 俺はスレの話題を、戻すことにした。


 《まぁ、俺の生い立ちはそんな感じ

 で、話を戻すけど

 この痣ってなに??》


 その疑問に、また別の人が書き込みで答えた。


 《痒みの出ない蕁麻疹って可能性もあるな

 自分、なったことあるし》


 へぇ、そんな蕁麻疹もあるのか。

 蕁麻疹は痒いもの、とおもっていた。

 もしも、蕁麻疹なら菓子とジュースの食べ過ぎなのかもしれない。

 食べ物によって蕁麻疹がでる、ということは聞いたことがある。


 なら、お仕置部屋から出たらダメ元で保健室にでも行って診てもらうか。

 なんとなく、思ったことをそのまま書き込んだ。


 その直後のことだ。


 《知り合いの特定班連れてきたー

 医者ではないけど、参考までに意見書いてくれるってさ》


 そんな書き込みがされた。

【特定班】とは、文字通りいろんなことを特定するのが得意なもの達が使っているコテハンだ。


 これはありがたい。

 蕁麻疹なのか、呪いなのか、はたまた妙な皮膚病なのかわかればいい。

 個人的には、【痒みのない蕁麻疹】で決まりかなと思っている。


【あ、蕁麻疹だ。医者いけ】


 そんな書き込みがされると考えた。

 そう思っていたし、信じていた。


 しかし、特定班の書き込みは俺の予想を裏切るものだった。


 《……おめでとうございます?》


 なぜ疑問形。

 そのあと続いた説明に、俺は絶句することとなった。


 《スレ主の腕の痣

 痣じゃなくて、皇帝の証の【魔皇紋】って紋章だよ

 儀式やってたみたいだし

 まぁ、つまりそういう事だ》


 は????

 意味がわからない。

 分からなさすぎて、つい顔文字でそれを表現してしまう。


 《( ゜д゜)》


 そんな俺の書き込みに、ほかの人達も続く。


 《(・Д・)》


 この書き込みを見て、意外なことに冷静になれた。

 冷静になれたついでに、反応をしておく。


 《こっち見んなwww》


 即座に、やってる場合か、とツッコミが入ってしまった。

 続いて、


 《え、スレ主、どうするん、これ??

 多分、儀式してる会場困ってるんじゃないか?

 主に、お偉いさんとか困ってそう》


 という書き込みと、さらに特定班から、


 《参考までに書き込むと

 魔皇紋は、一儀式につに一人って決まってるからな

 複数人に出ることはない》


 そんな書き込みがあった。

 ということは、アレじゃん。

 もう俺に決定じゃん。

 うわぁ、やだ。

 端的に言うと、めっちゃヤダ。

 俺が嫌がっている間に、書き込みが加速した。


 《儀式してる会場とか、お偉いさんとか困惑でどよめいてそう》


 《誰も皇帝に選ばれてない、ってことだからな》


 《つーか、皇帝候補って魔皇学院の生徒限定なんだ??》


 その書き込みを見て、たしかに、と思ってしまった。

 どうせなら経験も知識も豊富な大人から選んだ方がいいと、俺でも思う。

 しかし、現実は何故か学生から選んでいる。

 なんでなんだろ??

 まぁ、いいや考えても仕方がない。


 《一応、初代皇帝の血が入ってる連中が集められてるからな

 どんなに薄くても、初代皇帝の血筋ってわかってるなら入学させられるらしい》


 へぇー、そうなんだ。

 あ、だからか。

 魔力ゼロでも、初代皇帝の血筋ってことなら俺が学院に入学させられたのにも納得できる。

 魔力の有無は関係なかったってことだもんな。

 でも、学院も相当嫌がっただろうな。

 なにせこの三年間、各授業での出欠の確認でさえ、俺は飛ばされていたし。

 美術の授業で作った作品は、学園祭等で展示されたりするのが基本だ。

 でも、俺の作品は展示されなかった。

 それどころか、普通にゴミ箱に捨てられていたこともあったっけ。

 所有者、作成者不明ってことで処分されたのだ。


 まぁ、これに関してはさすがに思うところが無いわけではなかった。

 下手くそでも作ったものだ。

 愛着くらいあった。

 でも、抗議したところで俺の声は聴こえていない。

 無駄に終わるのは目に見えていたからだ。


 特定班がさらに情報を追加してきた。


 《会場の様子、配信されてたみたいだぞ

 つ【儀式会場である、体育館の配信映像の切り抜き】》


 配信なんてしてたのか。

 思ったことをそのまま、書き込んでみた。

 すると、


 《おいwww在校生www

 なんで知らねーんだよwww》


 と、またしてもツッコミを入れられてしまう。


 それはそうと、切り抜き映像を試しに見てみる。

 おー、たしかにザワついてる。

 しかし、誰もここへ来る気配がない。

 ま、そんなもんだよなぁ。

 皇帝に選ばれるからには、相応の魔力があり、かつ人柄とかそういうのがとてつもなく良くて、たかい評価の人物というイメージがある。


 汚物として無視されている俺とは、どうしたって繋がらない。

 とりあえず、疑問に関して返答しておこう。


 《ボッチで、存在無視されてるヤツに情報が回ってくるとでも??( ^言^)》


 まぁ、自分で調べるなりしたらわかったんだろうが。

 生憎、そんなことをする義務は俺にはない。


 さてここで、更なる疑問を投げられた。


 《……ちょい疑問なんだけど

 存在無視されてても卒業できるんだ??》


 それが出来ちゃうんだよなぁ。

 成績とか上手い具合に調整されてて、ギリギリ落第しない程度の成績にはなっていた。

 それどころか、俺への配点が別の生徒へ振り分けられていたこともザラだった。

 少なくともテストは自分でも採点したから、確実にあえて点数を下げられていたはずだ。


 それらをサラッと書き込む。


 ま、組織ぐるみで散々そんなことをされてたら、抗議できたとしても握りつぶされるのがオチだ。


 さて、俺の書き込みを読んで、また別の者が書き込みを行った。


 《スレ主って勉強できるんだ

 頭いいんだな》


 それは、先生のおかげだ。

 俺を無視せずに、この学院で唯一ふつうに接してくれた人だ。

 恩人である。


 そのことを書き込んだ。

 いい人も居るんだなーという反応をもらった。


 さて、その直後、話題が紋章のことへ戻ってきた。


 《それで、スレ主はどうするんだ??

 その紋章のこと、名乗り出るのか??》


 ないわー。

 無い無い。

 世界が滅んでも有り得ない。

 それをそのまま書き込む。

 まぁ、当然ながら疑問が書き込まれた。


 《なんで?

 見返せるじゃん

 親とか同級生とか》


 もうそんな次元はとっくに終わっている。

 見返すとか、そういうのいいから。

 とにかく、もう関わりたくない。

 あ、そう考えると俺と、家族や学院側の人間の利害は一致しているのか。

 お互い、関わり合いたくないわけだから。


 そのことも素直に書き込む。


 《興味無いし

 今更、こんなので掌返しされても気持ち悪いとしか思えない

 黙って卒業だよ

 就職先も決まってるし》


 それで学院側が困ったところで知ったことじゃない。

 俺には新しい居場所、【就職先】という場所がすでに用意されているのだ。

 ことの発端はアレだ、バイト先兼就職先の上司から尋ねられたのだ。


 いつまで普通通りにシフトに入れるか、と。


 なんでそんなことを聞くのかと疑問に思ったが、蓋を開けてみたらなんてことはない。

 他のバイト仲間達の就活が活発化してきたので、確認のためだった。

 職業訓練系の専門学校に行っている人は、就職先へインターンに行くためシフトに入れなくなることもしばしばだ。

 俺は現状を包み隠さず話した。

 ある程度は、バイトの面接の時に話していたが改めて説明しなおした。

 就職先は決まっていないこと。

 卒業後は出来ればここでバイトを続けながら、就活をしたいことを話した。

 怒られるかなと流石におもった。

 そんな人生甘くない、と言われるかもと思った。


 しかし、上司の返答はあっさりしていた。


『なんだ、それならうちの社員になる??

 一応、面接はやるけど』


 縁故採用が決定した瞬間だった。


『シアちゃん、しっかり報連相できるし。

 仕事ぶりは丁寧だし。

 シアちゃんは気づいてないっぽいけど。

 人当たりがいいから、他のバイトの子やお客さんからの評判もいいんだよ。

 だから、うちに来てくれるなら物凄くたすかるんだよね』


 自分を欲しがってくれる人がいたことに、少しだけ泣きそうになっことを覚えている。

 もちろん、俺は即答した。

 是非に、と即答したのだ。


 さて、それはともかくとして。


 話はここで終わるはずだった。

 俺は、卒業式を待って晴れて学院や実家からおさらばする。

 そして、新しい生活に突入。

 悠々自適の社会人生活を送るのだ。


 《王様になる未来蹴るの??

 なんか勿体ない》


 そんな書き込みをされる。

 俺は、学院にも実家にもなんの未練もないことを含めて、こう書き込んだ。


 《勿体無くなんかない

 ずっと無視され続けた世界になんていたくないし》


 本心だ。

 自分を必要どころか居ないものとして扱ってきた世界になんて、興味ない。

 そんな世界よりも、俺は俺を必要としてくれる世界を選ぶ。


 しかし、スレ民の中には懸念を示す者がいた。


 《でも、大騒ぎにならない??

 儀式したのに次期皇帝が見つからないんじゃさ》


 たしかに、その通りだ。

 でも、俺はそこまで心配していなかった。

 その理由を書き込む。


 《魔力無しが次期皇帝だなんて誰も思わないって

 だから名乗り出なきゃ、そこでこの話はお終いだ》


 皇帝のことはよく知らない。

 でも、魔皇紋を所有しているだけでなく、魔族のなかでも一番魔力が強かったり、量が多かったりしなければならないはずだ。

 これは周知の事実だ。

 皇帝となるからには、相応の力が必要なのだから。

 前者はともかく、後者について俺はその条件から外れている。

 なにせ、魔力ゼロ。

 公式の記録でそうなっている。

 だから、そもそも魔皇紋が出たことが間違い、バグかなにかに違いない。

 書き込んだように、俺が魔皇紋でましたー、と名乗り出たところで捏造とか偽造とか疑われて終わりだ。


 疑われるだけならまだいい。


 下手すると逮捕案件になってしまう。

 なにしろ、皇帝を騙ったことになるからだ。

 法律についてはよく知らないが、そんなことになったら下手すると処刑だと思う。

 よくて終身刑といったところかな。

 まえに、皇族を騙って革命だか反乱を起こそうとした人がいたらしい。

 結局その人は捕まって、一族郎党全て処刑されたと聞いている。


 俺にはそんな度胸はない。

 書き込んだように、無視してきた教師たちや同級生、そして家族を見返したいとも思わない。


 俺は、ダメ押しでもう一度、自分の考えを書き込もうとした。

 その時だった。

 コンコンとお仕置部屋の扉がノックされる。

 そして、


「おつとめごくろーさん」


 と、聞き覚えのありすぎる声とともに、扉が開けられた。

 現れたのは、俺の恩人である【先生】だった。


 黒髪で、そんな前髪で隠れている目も黒。

 いつもは少し締りなく着ているスーツが、今日はちゃんとアイロンをかけられピシッとしている。

 人間族のベルウッド先生である。

 まぁ、外見だけだと魔族と人間族は見分けはつかない。


「あー、ほら。

 ドラグナイト、お前スカートなんだから、足を開かないの。

 あんまり言いたかないけど、女の子なんだから少しはそういうの気をつけな」


「大丈夫ですよ。

 誰も見てませんし」


 そもそも無視されてるから問題ない。


「あのな、目の前に先生がいるだろ」


 はぁ、と先生は息を吐き出すと俺の左腕を見た。

 足はちゃんと閉じた。


「あー、【魔皇紋】お前に出たんだな。

 やっぱりというかなんというか」


「あんまり驚いてないんですね」


「儀式は成功した。

 でも、魔皇紋が出た生徒はいなかった。

 消去法であの場にいない奴に出た、って考えるのが普通だろ」


 ま、そりゃそうか。

 さらにこう言ってきた。


「教師陣、魔族のお偉方もお前に気づいていないし。

 そもそも、教師陣は魔力無しに魔皇紋が出るなんて考えもしていない。

 んで、魔族のお偉方はお前の存在に気づいていない。

 学院側が魔族の汚点ってことで隠してるからな」


 今日きたゲスト陣も、やはり俺のことはしらないらしい。

 好都合この上ない。


「でも、先生。

 いくら消去法っていってもよく俺に魔皇紋が出たって気づきましたね」


 先生も俺が魔力ゼロであることは知っているはずだ。

 いくら消去法で考えたとはいえ、すぐに思いつくものだろうか。

 と、そこで先生はこの世界にはない言葉をつかってこう言った。


「When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.」


 俺の耳には、ちゃんと訳されてきこえている。


 ――いいか?

 ありえないことを綺麗に全部潰していって最後にのこったものが、どんなに嘘くさく、信じられないことに見えようが、結局それが答えなんだ――


「有名すぎる探偵のセリフですね」


 かなり意訳されているが、意味はだいたい同じだ。


 俺には前世の記憶がある。

 そして、その前世とはこの先生の故郷でもある。

 正確には次元がすこし違うらしい。

 平行世界みたいなもの、らしい。


 先生は少しだけ表情を引き締めると、改めて俺に確認してきた。


「でも、このままじゃ遅かれ早かれ、魔族のお偉方はお前のことに気づくかもしれない。

 確認なんだが、お前、王様に……皇帝になりたいか??

 なりたいなら、名乗り出るのに俺が付き添ってやる。

 なりたくないなら、誤魔化しに手を貸してやる。


 今ここで決めろ、お前はどうしたい??」


「へ?」


 まさか先生からそんな申し出があるとは思っていなかった。

 俺の答えは決まっていた。

 でも、それを言う前に聞いておきたいことがある。


「先生、なんで俺にこんなに優しくしてくれるんですか??」


 気にかけてくれて、バイト先や勉強の面倒を見てくれた。

 他の人達はなんにもしてくれなかったのに。

 先生だけは、ちゃんと俺を見てくれた。


「なんでって、困ってそうだったから助けただけだぞ」


 なんてことない風に先生は言った。


「でも俺、初めて先生と会った時、結構酷いこと言いましたよね?

 それでも、なんで見放さなかったんですか?」


 それはもう、罵詈雑言を投げつけたし暴力も振るった。

 でも、先生は飄々と受けとめてくれた。

 俺の話を聞いてくれた。

 そんなことをしてくれた人は今までいなかったから、本当に驚いたし、最初こそ気持ち悪くてしかたなかった。

 周囲の扱いに対して冷めていたのに。

 そこにきて、先生は優しくしてくれたからイライラしたのも事実だ。


 なんで、いまさら。

 もっとはやく、先生みたいな人が現れてくれたら良かったのに。

 そんなどうしようも無い感情でぐちゃぐちゃになったのだ。


「パニクってる子供の癇癪に、いちいち心を痛めてたら大人なんてやってられないっての。

 落ち着いたらちゃんと話もできるものだしな」


 先生のなかではそういうものらしい。


「それで、お前はどうしたい?

 名乗り出るか、否か」


 俺は今度は即答した。


「王様も、実力主義の魔族もどっちもクソ喰らえ!

 大ッッッ嫌いだ!!

 俺は、平穏無事に卒業して、バイト先で正社員するって決めてる!」


 先生は、怒鳴るように言った俺へニコニコ顔を向けてくる。


「おーけーおーけー。

 じゃあ、さっさと処置しよう」


 そこからは、もうあっという間だった。

 先生が俺の左腕にある【魔皇紋】へ、封印の術式を施してくれた。


「はい、終わり。

 これでわからないはずだ。

 紋章自体も見えなくしたから、誰にもわからないはずだ」


「俺にはガッツリ見えてますけど……」


「大丈夫大丈夫。

 なんなら、帰る時腕まくりして帰りな。

 さすがに学生にこんな派手な刺青があったら、無視できないから。

 見えてたらガン見されるはずだ」


 それはその通りだ。

【魔皇紋】は人目を引くデザインだ。

 たとえ似たデザインの刺青だったとしても、学生、それもエリート校の生徒がこんなものを入れていたら人目をひかないはずがない。


「先生を信じますよ」


 先生の来訪と、やり取りを掲示板へ書き込む。

 即座にスレ民から反応があった。


 《先生、いい人だな》


 なかにはやはり懸念の書き込みもある。


 《……それ、先生は雇用主を裏切るようなもんだろ

 いいのか??》


 そこで先生は書き込みをおこなった。

 この特別な掲示板を、俺に教えてくれたのは先生だ。

 なので当然先生も書き込めるし、スレ立てもできる。


 《いいんだよ

 どうせ、スレ主の卒業式で離任するし》


 ちなみに、先生のコテハンはそのままファミリーネームの【bellwood】である。


 唐突な先生の書き込みに、スレ民たちが盛り上がる。

 だが、当の本人は、


「あ、退職だった。

 雇用期間終わったから、無職に戻るんだった」


 と呟いている。

 そこから、先生に掲示板の存在を教えてもらったことなど説明した。

 先生がなぜ、非常勤とはいえ教師をしているかの話にもなったりしつつ、話題が戻ってきた。


 というか、先生が話題をもどした。


 《話を今回の件に戻すが

 スレ主の判断は正しいと思うぞ

 結局、皇帝になったらなったで

 お前なんて認めねー!ってヤツが出てきて殴ってわからせることになってたからな

 なにせ、魔族は実力主義社会だからさ

 俺も学院に雇われてからそういうの結構相手にしてたから、詳しいんだ》


 なにげに先生も、教師生活中に色々あったようだ。

 書き込みながら、遠い目をしている。


 《とりあえず、卒業式まであと三日

 大人しくしてやり過ごす

 とはいえ、誰も俺に興味を示さないとは思うけど》


 これは俺の書き込みである。

 と、目の前にいるのに先生がわざわざ書き込みして茶化してきた。


 《逆に興味示して近づいてくるやつがいたら要注意だな》


 間髪入れず、スレ民からツッコミがはいる。


 《先生のことじゃん、それ》


 すると、先生は何故か俺を見てから返信した。


 《見かねてスレ主に菓子差し入れしたり

 勉強みてやったりはしたが

 他の教師と違って、手を出したりはしてねーぞ》


 お菓子やジュース、あと漫画の差し入れは大変良かった。

 勉強も助かった。

 しかし、最後の書き込みに俺はドン引きしてしまった。


「え、それって」


 俺と同じことを考えた者がスレ民のなかにもいた。


 《うわぁ、みなかったことにしよう》


「そういうことだ」


 先生がやはり俺を見ながら言ってくる。

 全ては言わないが、つまりはそういうことなのだろう。

 先生の反応から察するに、タチの悪い冗談でも無さそうだ。


「問題にならなかったんですね」


 感想を呟くと、先生が物凄く嫌そうな顔をした。


「問題にしなかったんだろ。

 本人たちはおそらく【真実の愛】だ、ってことで盛り上がってたんだろうし。

 俺は関わりたくもなかったから、匿名で学院長に報告上げて終わった。

 ま、証拠を掴むことが出来なかったのか、握りつぶされたのかは知らんけど。

 その後、進展無かったな」


 まぁ、結局俺には関係の無い話でしかない。

【魔皇紋】は封印&見えないように処置してもらったし、スレへの書き込みは、今日はこれくらいでいいだろう。


 《とりあえず、卒業式おわって

 スレが残ってたらまた書き込みにくるわ

(・ω・)ノシ》


 俺は、そう書き込んで終わろうとした。

 すると、


 《スレ残ってなかったら

 新しく立てて報告してほしい

 本当にバレなかったかとか、スレ主が逃げ切れそうかとか知りたい》


 そう書き込まれてしまう。

 なにがなんでもその後が知りたいから、報告スレを立てろ、ということだ。

 俺は了解する意味で、敬礼の顔文字を書き込んだ。


 その後、俺は普通に実家に帰ってきた。

 門を守っている衛兵に会釈をして、門を開けてもらう。

 衛兵はちらりと俺を見るだけだ。

 ほかの兄弟姉妹に向けられる笑顔も、【おかえりなさいませ】という言葉もなにもない。


 俺には兄弟姉妹が多い。

 腹違いの兄弟姉妹だ。

 俺は正妻の子供だけれど、魔力ゼロなので母親の中では産んだことすら無かったことになっている。


 ほかの兄弟姉妹達はみんな魔力が多い。


 今の皇帝がたしか、魔力数値9999だったはずだ。

 これが最高値とされている。

 魔族の魔力数値は平均300くらいだったか。

 中央値はまた違うらしい。

 数学や算数が苦手なのでよく知らない。

 ただ、この数値は成長するに従って増えていく。


 腹違い含めて兄弟たちはみんな、生まれた時はすでに1000を超えていたと何かの折に耳に挟んだことがある。

 そこにきて、俺はゼロ。

 ま、見捨てられるのも当然だ。


 子供の頃はよく、攻撃魔法の練習として的当てにされてたほどだ。


 我ながら、よくグレなかったなと思う。

 グレる前に前世の記憶が戻ったし、そもそも的当てにされた所で怪我もほとんどしなかったから、威力がそこまでじゃなかったんだと思う。

 不幸中の幸いだ。


 成長するにつれ、他の兄弟たちも俺への興味を失っていった。

 糞に興味を持つのはハエくらいだ。

 つまり、そういうことだ。


 それでもなんとか生きてこれたのは、必要最低限の衣食住を与えられていたからだ。

 これも幸いだった。


 俺は本邸にはいれない。

 屋敷の敷地内にある、先々代が愛人を囲っていたという小さな家。

 そこが俺の住処だった。


 ここには一言も喋らず、また基本的に姿も見せずに淡々と仕事をこなすメイド達や下女がいる。

 俺からも話しかけたことはない。

 みんな、名前すら知らないもの達だ。


 きょうもしっかりとその家は掃除されていた。

 キッチンのテーブルの上には、夕食がすでに運ばれている。

 冷めてはいるが、温め直すための自動魔道器具もあるので困らない。

 自動魔道器具は、魔力の有無は関係ない。

 スイッチ一つで魔法が発動する、生活用品だ。

 そのため、人間族の一般家庭にも普及している。


 自室に行く。

 あと三日過ごすだけの部屋だ。

 もともと私物はほとんど無い。

 簡素な学習机の上には、旅行カバンが置いてある。

 中には、必要最低限の衣類と雑貨が入っている。


 ほかに貴重品はない。

 財布諸々は持ち歩いている。

 盗むものすらない。

 たぶん、あっても盗まれないと思う。

 たとえ出来損ないの糞の世話でも、そこは名家がしっかり選んだ人材ばかりだ。

 不誠実を働く者はいない。


 部屋着に着替え、食事のためにキッチンへむかう。

 一人で食事をとる。


「……お世話にはなったんだよなぁ」


 冷め切った夕食はそれでも美味しかった。

 それを食べながら呟いた。

 俺なんかの世話はそれはそれは嫌だっただろうに、おくびにも出さずに全うしてくれた人達には感謝しかない。


 俺はさっさと夕食を食べ、沸いていた風呂に入って、その日はすぐに眠った。

 卒業式の日まで、どうせ学院には行かなくていい。

 だから、明日、明後日はフルでシフトに入れてもらっているのだ。


 英気を養うために、俺はたっぷりと睡眠をとった。



 ※※※


「え、これ??

 沢山はいってるやつでいいの??」


 バイト先の店長が目を丸くして聞き返してきた。


「はい。

 多い方がいいかなって思って」


 俺の手には、贈答用の菓子の詰め合わせがある。

 俺のバイト先は、喫茶店だ。

 そして何故か贈答用の菓子の詰め合わせを販売していたりする。

 そのなかでも、いちばん高く、たくさんお菓子が入っているものを手に取っていた。


「自分への卒業祝い??」


 店長は、俺よりもたしか二つほど年上の二十歳の女性である。

 白髪の髪に赤い瞳の女性だ。


「違います違います。

 これは、今まで俺の世話をしてくれた方々への気持ちです」


 糞からのプレゼントだから、食べてくれるかはわからない。

 もしかしたらそのままゴミ箱行きも覚悟している。

 でも、気持ちだから。


 なにせ、十八年だ。

 十八年、人の入れ替わりくらいはあったと思う。

 でも、文句1つ言わずに、洗濯や掃除をしてご飯を用意してくれていたことは事実だ。

 そのことへのお礼だった。

 つまりは、俺のエゴである。


「そっか。

 お買上げ、ありがとうね」


 店長はそれ以上なにも言わず、聞かず、従業員割引をつかってレジを通してくれた。


「それにしても、今日は忙しかったですねぇ」


「だね。

 なんか、シアちゃんのことナンパする人多かったもんね」


 今はさすがに落ち着いている。

 この喫茶店の営業は19時までだ。

 18時現在、さすがに客は数人の常連客のみだ。


「シアちゃんさー、なんかトラブルに巻き込まれたか??」


 コーヒーを飲んでいた常連客の一人が、そう声を掛けてきた。


「はい??

 いえ、とくには」


 ちょっとドキリとした。

【魔皇紋】のことは、誰にも話していない。

 店長にもだ。

 現に、普通に腕まくりをして仕事をしていたが、誰にも指摘されなかった。

 だから、誰にもバレていないはずだ。


「そっかー」


 と、その常連客はまたコーヒーをすする。

 すると、ずっと新聞を読んでいた別の常連客が声をかけてきた。

 こちらは噂大好き、別名【スピーカー】の異名を持つ中年女性だ。


「そういえば、シアちゃんの行っていた高校?

 ほら、あのエリート校でトラブルがあったんでしょ??」


「トラブル??」


「次の王様が決まらなかったとか、見つからなかったとか書いてあるわよ」


 と、手にしていた新聞を見せてきた。

【魔皇紋】が出現せず、こんなことは前代未聞だなんだと、見出しで大々的に報じられている。

 ……大騒ぎになってた。


「ほんとですねー」


「シアちゃん、この現場にいたんでしょ?

 なにか知らないの??」


「んー、魔力ゼロなので興味無さすぎて。

 なんか、まわりがザワザワしてるなーとしか思わなかったです」


 まさか、本当のことなどいえるわけもない。

 店長がそこで、コーヒーを啜っていたお客さんに訊ねた。


「あの、なんでシアちゃんがトラブルに巻き込まれたと考えたんですか??」


 スピーカーさん含めて、先輩バイトからほかの客まで一斉に常連さんを見る。


「あぁ、いや。

 なんでもない、ただの勘違いだ。

 なんとなくそう思っただけ」


 常連さんは、そう言うと居心地が悪くなったのかコーヒーを一気に呷ってそそくさと店をでていった。


 同じことが翌日もあった。

 よく話しかけられたのだ。

 老若男女問わず。

 ただ、質問は店のオススメメニューについてだったりした。


「店員さんが美味しいと思うのは、どれ??」


 もしくは、


「店員さんが好きなのはどれ??」


 こんな感じの質問ばかりだ。

 こういう質問はじつはよくある。

 そのため、俺含めた店員は賄いとして、一通りのメニューを食べさせられるのだ。

 だから、質問の頻度こそ多いもののそこまで気にしていなかった。


 そうして三日目。

 卒業式の朝。

 俺はキッチンのテーブルの上に菓子の詰め合わせを置いた。

 その上にメモ用紙も置いておく。


【十八年間、大変お世話になりました。

 心ばかりのお礼です。

 皆様で召し上がってください】


 つぎに、門を守ってくれていた衛兵にも頭を下げた。


「これまで、大変お世話になりました。

 毎日、安心して通学でき、勉学に励むことができたのもあなた方のご尽力あっての事です。

 本当にありがとうございました。」


 頭を上げた時、さすがに衛兵二人が動揺していた。

 まさかこんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。

 でも、事実として彼らがここを守ってくれていたから、俺は安全に登下校出来ていたともいえるのだ。


 かかわり合いになりたくないと思っていた。

 でも、これくらいのエゴは許されるはずだ。


 皮肉に取られて、不快な顔をされるかと思いきや。

 動揺していたのは一瞬で、なんと最敬礼が返ってきた。

 俺は微笑んで、いつもの会釈をして実家をあとにした。


 そのまま学院近くにある複合商業施設に向かう。

 コインロッカーが設置されてるので、そこに荷物を預けた。

 いつもの通学鞄だけ持って、学院に向かう。

 そして教室の片隅でぼやーっと立っていた。


 席が片付けられており、椅子すらなかった。

 誰も俺を見ない。

 ただ、卒業式特有のザワザワとした空気が漂っている。

 同級生たちの漏れ聞こえてくる話はなかなかおもしろかった。


 この前の儀式とはまた別の魔族の偉い人達が来賓として、招かれているらしい。

 その中には現皇帝の側近や、次期皇帝の側近予定の人もいるとかなんとか。

 まぁ、若者だけで周囲はかためないよなー、などとボンヤリ考える。


 そんな中、担任がやって来たかとおもうと俺を教室から追い出し、お仕置部屋へと強制連行した。

 その手には、筒があった。

 卒業証書の入った筒だ。


「卒業式が終わるまでここにいろ!!

 おわったら勝手に帰れ!!」


 吐き捨てられ、卒業証書の入った筒を投げつけられた。


「アデッ!」


 おでこにクリーンヒットしてしまう。

 担任はさっさとその場から離れてしまった。

 卒業式、終わるの待たないでもう帰ろっかな。

 でもなー、終わったらって言われたしなぁ。

 しかたない、適当に掲示板でも見て時間潰そう。

 こんなこともあろうかと、いつもの


 遠くから、卒業式をはじめるための鐘の音が聞こえてきた。


「……先生、退職するんだよなぁ」


 ベルウッド先生も、バイト先の常連だったりする。

 時々、店にきてくれるかなあ。

 来てくれたら、うれしいなぁ。

 先生のお陰で、勉強できたし、働けたし。

 就職だってできたようなものだ。


「今日、会えるかな」


 今日、店に来てくれるかな。

 来てくれたら、物凄くうれしい。


「会いたいなぁ」


 会えたらいいなぁ、とのんびり考えつつお持参した菓子を貪り、掲示板をあちこち見て周り、ゴロゴロする。

 そうやっていると、また鐘が鳴った。

 卒業式が終わった合図である。


「さて、店に行くか」


 ゴミを纏めて片付け、部屋を出ようとしたところで扉が乱暴に開いた。

 かと思うと、かっちりした制服を着た人達がドカドカと、お仕置部屋に入ってくる。


「目的の人物を発見!

 繰り返す、目的の人物を発見!!

 保護します」


 一人が通信魔法でそんなことを言っている。


「え、え?!

 誰、あんたら?!」


 俺の戸惑いを他所に、女性がひとり進み出てきて確認してきた。


「シア・ドラグナイト様ですね」


 確信を持って言われた、名前。

 俺の、名前。


「あ、はい」


 同級生からも、そして実家の人間たちからも呼ばれることは皆無だった俺の名前。

 それを呼ばれて思わず返事をしてしまった。


「あ、あの貴方たち、だれ、ですか??」


 すると、お仕置部屋に入ってきた人達は何故か膝を着き、頭を下げこう言った。


「我々は皇帝陛下直属、近衛騎士隊の者です。

 シア・ドラグナイト様、お迎えに上がりました」


 は????


 こーてーへーかちょくぞく??

 このえきしたい??


 え、なにそれ??

 おいしーやつ??


 脳内が大混乱してしまう。


 それからあれよあれよという間に、俺はお仕置部屋から出されてしまう。

 そして、ほかの卒業生やその保護者、そして教師陣の注目を浴びながら、高級車に言われるがまま乗せられてしまった。


 その中に目を丸くする、実の弟と腹違いの兄弟姉妹がいたことにきづいた。

 しかし、声をかけることなんて出来るはずもなく。

 さらに言うなら、俺は彼らの名前をすっかり忘れていた。


 向かい合わせに座るタイプの車、初めてだ。


「あ、あの、おれ、これからバイトさきにいかなきゃで。

 降ろしてもらえませんか??」


 両隣には強面の近衛騎士が座っている。

 体こそ触れていないが、圧がすごい。


「できません」


 片方の騎士が答えた。


「あの、おれ、なにかわるいことでもしたんですか??」


「そんなまさか」


 もう片方の騎士もそう答えてくれた。


 怖い。

 怖い怖い怖い怖い怖い。

 なに、何なん、ほんと。


「あー、えーと、お嬢ちゃん。

 シアちゃんって呼んでいいかな??」


 俺が怯えまくっていると、前方に座っていた一人が声を掛けてきた。

 先生と同い年くらいの茶髪の男の人だ。

 ヘラヘラと人好きのする笑顔を浮かべている。

 その笑顔に、ゾワッと寒気を感じてしまい思わず声を上げてしまった。


「ひぃっ!!」


「あ、そんな怯えないで。

 大丈夫、とって食いやしないから」


「……」


「あーあ、だからもうちょっと穏便に行きましょうって言ったじゃないですか、隊長。

 可哀想に、こんなに怯えちゃって」


 と、茶髪の人はお仕置部屋に入ってきて、俺に声を掛けてきた女性へ言葉を投げた。

 女性は深いため息をついて、俺を見た。


「シア様、大変申し訳ありません。

 このまま我々と王城へ行っていただきます。

 我々は貴方に危害を加えるつもりは一切ありませんのでご安心を」


「あ、はい」


「え、なんでなんで、俺には怯えて隊長には普通に返事してるの??」


 気持ち悪くて、なんて正直に言えない。

 このヘラヘラ笑いは信用できない。

 同級生たちの中でもよく見たやつだ。

 権力に媚びへつらって、あわよくば全部掠め取ってやろうとする人のそれだ。

 俺にそんな笑顔を向ける意味がないから、余計に気持ち悪く感じる。


「すみ、ません。

 おどろ、いて」


「へー??」


 茶髪の人は、じろじろと特に左腕のほうを舐めまわすように視線を向けてきた。


 これ、バレてる?

 だって皇帝直属の近衛騎士って、俺でも知ってるスーパーエリートの人達じゃん。

 そんな人達が俺を捕まえて城まで連行って、絶対おかしい。



 そのまま、王城まで連れてこられると、豪勢な部屋へ通された。

 魔族の皇帝陛下の住まうお城なんて、初めて入る。

 王城は一部分だけ一般にも公開されている。

 皇都に住む者は遠足などで見学にこれるのだ。

 俺の場合、遠足の時も教室に置き去りにされて入ったことなんて皆無だ。


 中、こうなってたんだ。


 フカフカのソファに座らされ、メイドさんたちがお茶を入れてくれた。


 こんなことなら、無理にでも携帯端末持っておけばよかった。

 そうしたなら、先生か店長に助けを求められたのに!!


 と、そこではたと気づいた。


(あ、掲示板つかえばいいんだ)


 突然のこと過ぎて、かなりパニックなっていたらしい。

 俺は、お茶とお菓子には手をつけず、手も動かさずに掲示板へ繋がる。

 思考入力ならぬ思考操作だ。

 先日あらたに実装されたのだ。

 使うのは初めてである。


 傍目には緊張して固まっているようにしか見えないはずだ。


 スレタイは、


【たぶん】王城に連行された件(´;ω;`)【バレてる】


 これにした。

 わかる人にわかるはずだ。

 さらにダメ押しで、最初の書き込みでスレタイと同じことを書き込む。


 《えーんエンエン(´;ω;`)

 バレそう

 つーか、たぶん紋章のことバレてる》


 すぐに反応がきた。

 その事にホッとする。


 《お、おう?》


 《こ、このコテハンは?!》


 《三日前に皇帝の目印紋章が現れたスレ主!

 三日前に皇帝の目印紋章が現れたスレ主じゃないか!!

 元気だったか??》


 《そういや、今日卒業式か》


 《余裕ぶっこいてたのに

 紋章バレそうになってることでいいのか?

 それなら草》


 最後の書き込みにだけ、レスする。


 《そうだよ(´;ω;`)》


 すると、笑えるという意味の【草】の文字がつづく。

 その日常に安心した。

 近衛騎士とか、俺の今までの人生に関わってこなかった人達のことを一瞬だけ忘れることができた。

 でも、そうも言ってられない。


 続いて質問が書き込まれたからだ。


 《なんでバレそうになってるの》


 《先生はどうした??》


 どちらに対しても、俺が知りたいことだった。

 なんでバレそう、というかたぶんバレてるのか。

 そして、先生はどこにいるのか。

 バレたのはわからない。

 先生は、たぶんこのあとほかの先生たちによる送別会があるはずだ。

 毎年飲み会をしていると、先生本人からきいたことがある。

 そのことを思い出した。


 俺は1つずつ答えようとした。

 でもそれより早く、見覚えのありすぎるコテハンが書き込みをした。


【bellwood】というコテハン。

 先生のコテハンだ。


 《いるよ》


 先生、いたーーーー!!


 即座に俺は書き込む。


 《せんせい(´;ω;`)

 俺、どうしたら??》


 《まずなにがあったか話してくれ

 こっちも色々忙しくてな

 気づいてやれてなかったから》


 そんな事ない。

 書き込んでくれている。

 それだけで、どんなに安心できたか。

 でも、それを伝えるのはあとだ。

 俺は、自分の身になにが起きたのか説明した。

 すると軽めの先生への非難のようなものが書き込まれてしまう。


 《先生助けてやれよ》


 それに対して先生は、己の立場を説明した。

 要約すると、雇用契約上のこともあって必要最低限しか俺に手を差し伸べることができなかったらしい。

 それでも十分助かったのは事実で、やはり感謝しかない。


 さらにそのあと、なにがあったか書き込んだ。

 それを読んだらしいスレ民が一言書き込む。


 《バレてるな(確信)》


 というスレ民の書き込みに、同意しかできなかった。

 ほんとそれな。

 続いたのは、初歩的な疑問とそのやり取りだ。


 《なんでバレたんだろ?》


 《先生の偽装工作がガバガバだった》


 先生がすかさず反応する。


 《否定できないのがなんとも( ̄ω ̄;)》


 せんせー!!??

 そこは否定してー!!!!

 あんなに自信満々だったじゃん!

 なんならドヤ顔してたじゃん!

 なのにガバガバだったの??


 さらにそこへコテハン【特定班】が現れて書き込みをおこなった。


 《先生のせいではないな

 調べたら、現皇帝側も消去法と地道な捜査をした結果だ》


 なんと!

 先生と同じ方法で、俺を探り当てたってマジか。

 なんでそこまでするんだよ。

 こんな、魔力ゼロのやつ探し当てたってろくな事ないだろうに。

 おもわず、【本当に?】と意味も込めて、


 《そうなん?》


 とレスした。

 すると、特定班が調べあげたことを教えてくれた。


 《儀式は成功してた

 でも、会場には該当者がいなかった

 となれば、そこにいなかった生徒に魔皇紋が出た、と考えるのが普通だろ

 先生も同じ考えで、真っ先にスレ主のとこに来たわけだし》


 《それでも、誰も名乗り出ないのは異常事態だったわけだ

 現皇帝側は儀式当日のうちに、調査班を作って学院に改めて派遣

 在校生の名簿を確認して、会場にいた生徒たち一人一人を照らし合わせていった

 翌日、つまり一昨日にはこの作業が終わり

 スレ主が炙り出された》


 炙り出さなくていいよ。

 そっとしておいてくれ。

 ガチで。


 《さらに一昨日のうちスレ主の情報を秘密裏に収集され

 魔力ゼロで、実家や学院から虐げられていたことが判明する》


 個人的には冷遇はされたけど、虐げられていたというほどじゃなかった。

 そのことを説明する。

 しかし、スレ民は納得しなかった。

 さらに特定班が書き込んでくる。


 《で、この過程で

 先生、あんたのことも皇帝側につたわった

 唯一、スレ主に対してそれこそ普通に接してた存在だからな》


 そのことに、喉がヒュッとなる。

 先生に迷惑をかけるつもりは欠片もなかった。

 さらに続いた先生の書き込みを読んで、血の気が引いた。


 《おっとー、なるほど

 つまり、俺がいま近衛騎士に取り囲まれてるのは

 そういうことか》


 は?


 《城に来てくれだってさ

 話があるんだと》


 待って待って待って!

 そんなこと聞いてない!!

 俺は先生のこと欠片も話してないのに!!

 どうしよう、これで先生にまで無視されたら、嫌われたらどうしよう。


 《お、おれ、先生のことなにも言ってない!

 城に連れてこられて、豪勢な部屋に案内されて

 待ってろって言われただけで(´;ω;`)》


 怒られたくなくて、嫌われたくなくて咄嗟にそう書き込んだ。

 それなのに先生の反応は、俺の心配をよそに普通だった。


 《わかってるわかってる

 スレ主のこと調べあげてる上に、俺の偽装工作に気づいてるから

 とりあえず二人まとめて話を聞こうとしてるだけだ》


 落ち着けと言われた気がした。

 特定班もこれに同意するような書き込みをした。


 《まぁ、アレだろうな

 スレ主だけならすっとぼけられるか

 口を閉ざすの目に見えてるから

 スレ主が気を許してるだろう、先生も交えて話をしたいってとこなんだろうな》


 気をゆるしている。

 たしかにそうだ。

 だって、先生が初めてだったのだ。

 初めて俺の話を聞いてくれた人で、信じられると思わせてくれた大人だった。

 だから、特定班の書き込みはその通りでしかない。


 またも背筋が寒くなる。

 近衛騎士の人達は、そこまで調べあげているということだ。

 この豪勢な空間が、とても怖い。

 なにもかもが怖すぎる。


 《ここまである種の強硬手段に出たのも

 あれだろ

 朝の時点でスレ主が荷物まとめて、すでに家から出る準備万端で学院に来てたからだろ》


 特定班の書き込みの行間を読んでみる。

 つまりは、逃げらる前に捕まえておこうとしたわけか。

 怖っ。

 いや、就職先はバイト先でもあるし、皇都の中なのだから、別に逃げることはないんだけど。

 強硬手段に出るだけの理由になったということかな。


 ほかのスレ民からは、最後に家族と話をしなかったのかと聞かれたが。

 そんなアットホームなやりとりは皆無だった。

 掲示板には、身バレ対策として弟だけが母親にとって家族と書いたが、正確には、ドラグナイト家にとっての家族は、俺以外の子供たち全員だ。


 俺だけが異物だった。


 なにかしらやり取りがあったとすれば、アレだ。

 俺の世話をしてくれたメイドさんたちへ菓子を置いてきたのと、衛兵さんたちに感謝の意を示して頭を下げたくらいだ。


 それこそ、衛兵さんたちのほうが親や兄弟姉妹の顔よりよく見ていた。


 《子供を産んだ女性全員が全員、産んだ子を慈しみ愛せるかって言うとなー

 疑問なんだよなぁ

 ソースは俺の母》


 と、これは先生の書き込みだ。

 先生も色々苦労してきたのだろう。

 そういえば、先生からはお姉様の話はよくきくけどご両親の話は一度も聞いたことがなかった。

 先生のお姉様もお店によくきてくれる。

 姉御肌のかっこいい美人さんだ。

 よく俺や、先輩バイト達にもご飯を奢ってくれる気前のいい人で、バイト仲間たちからはモテまくりだったりする。


 俺も先生のお姉様は好きだ。

 かっこいいし、美人だし、ご飯奢ってくれるから。


 《気分悪くなるだろうし、俺の話はいいんだよ

 今はスレ主のことだろ》


 先生のこの書き込みによって話題が戻ってきた。

 その時だ、別に見計らっていたわけではないのだろうが、メイドさんたちがお菓子を持ってきた。


 目の前には茶菓子がならべられていく。


(ん?)


 ……見覚えのある菓子がちらほらあるの、気の所為か?


 よぅく見てみよう。

 うん、見間違えじゃない。

 バイト先の喫茶店【綺羅星屋】の菓子じゃん!!

 しかも俺が好きな、ステンドグラスクッキーとチョコチップクッキーにフィナンシェまである!?

 あと、人気すぎてすぐに無くなるラングドシャまで。

 え、怖っ!?!?

 なんであるの??

 なんであるの??


 あと、チョコの割合多すぎなような。

 すげぇ、普段なら絶対手を出さないブランドの商品じゃん。

 皇族御用達とかでお取り寄せランキング上位にはいってる店のやつもある。

 たしかに俺、チョコ大好きだけど。

 って、え、待て待て待て。

 なんでよく食べてる駄菓子があるの……。

 こんなとこで出てくるもんじゃないって!!


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 怖いよ〜!!!!!


 思わず俺は、出てきた茶菓子のことを書き込んでしまった。

 だって怖かったんだもん。


 それに対するスレ民の反応はというと、


 《こっっっわ(´;ω;`)》


 《怖い怖い怖い怖い

((;゜Д゜)))ガクガクブルブル》


 俺と同じ反応だった。

 さらに怖いことを書き込む。


 《俺のバイト先というか就職先

 飲食店でさ

 ケーキとか焼き菓子とかも、出してるんだよね

 土産用にクッキーアソートの缶も売ってるんだ

 俺、これ好きでさ

 たまに従業員割引つかって買ってたんだけど

 そのクッキーが出てきてる……》


 《ぎゃああああ!?》


 《キモイキモイキモイキモイ!!》


 よかった、気持ち悪いと感じているのは俺だけではない。

 うん、怖いし気持ち悪いよ、これ。

 だが、先生はまた違う意見らしい。


 《おい、おまえら落ち着けよ

 スレ主のこと調べた上でのおもてなしだ

 いくらなんでも失礼過ぎんだろ》


 まぁ、たしかに友好の証、と取れなくもない。

 いやでも、普通にキモイわ。


 俺はお菓子を見て、また掲示板をみた。

 先生がさらに書き込みしていた。


 《俺ももうすぐ城に着くから

 とにかく、出されたもの食べて待ってろ

 腹が減っては戦ができぬ、っていうだろ

 近衛騎士に軽く話聞いたら、やっぱり魔皇紋関連で俺たちに話を聞きたいそうだ

 それに近衛騎士はスレ主を見つけた時に、【保護】っていってるんだ

 悪いようにはしないはずだ

 なにせ、近衛騎士の口ぶりから察するに

 スレ主が次期皇帝ってのはほぼ確実にバレてるからな

 これは、確認作業に過ぎない》


 思わず思考入力してしまった。


 《そんなぁ》


 《まぁ、こうなったのには俺にも責任あるし

 説明責任くらいはたすから、とにかくお前は菓子食って待ってろ》


 先生の書き込みに少しだけ安心してしまう。

 本当にこちらへむかっているらしい。


 気持ち悪いけど、たしかに腹ごしらえくらいしたほうがいい。

 栄養の足りてない頭だと、なにもかも悲観的に考えてしまうからだ。


 俺は、食べ慣れているクッキーをひとつ摘んで口の中へ放り込んだ。

 いつもの味だった。


 早くここから出たい。

 そう考えながら、今度はフィナンシェを食べた。


 それから数分もしないうちに先生が現れた。


「よっ」


 片手を上げて、軽く挨拶してくる先生を見た瞬間、


「せ、せんせー!!!!」


 俺は思わず抱きついてしまった。


「こわかったー!!!!」


「あー、はいはい。

 わかったから、ほら、離れろ」


「やだ!!」


 その背後から、俺をここまで連れてきた女性隊長さんと、あの気持ち悪い茶髪の人が声をかけてきた。


「では、お二人ともこちらへ」


「陛下のとこに案内するよー、着いてきてくださーい」


 隊長さんは変わらず淡々としていたが、茶髪の人はなにか面白くなさそうな顔を先生に向けていた。

 俺は先生の腕にしがみついたまま、移動した。

 先生は、興味深そうにあちこち見回している。


 そうして案内されたのは、今度は質素というか簡素な部屋だった。

 皇帝陛下の執務室らしい。


 一応、応接用のテーブルと椅子まで用意してある。

 打ち合わせとかもしているのかもしれない。


「失礼します」


 先生が堂々と招かれるまま、執務室へはいる。

 俺は先生にくっついたまま入室した。


 皇帝陛下は、黒髪に黄金の目をした五十代ほどの男性だ。

 筋骨隆々で、威圧感が半端ない。

 その左腕には、俺に現れた【魔皇紋】と同じデザインの紋章がある。


 近衛騎士の隊長さん達は部屋の隅で、立ったままだ。


「さぁどうぞ、掛けてください」


 椅子へ座るよう促される。


「大丈夫だから、ほら腕離せって」


 俺は震えつつも、先生から腕を離した。

 先生が苦笑している。


「シア殿、そしてベルウッド殿。

 貴方方に聞きたいことがある」


 皇帝陛下も、テーブルを挟んだ向かい側の椅子へ座りながら言ってきた。


「まずシア殿、【魔皇紋】は君に発現した、違うかな?」


 俺は先生を見た。

 先生は俺を見ずに、楽しそうに皇帝陛下を見ている。


「おや?

 なんでそうお考えに??

 この子は魔力ゼロなんですよ。

 次期皇帝の証である【魔皇紋】が発現するなら、せめて魔力数値が1000を超えていないとですよね?」


「え、そうなんですか??」


 俺は思わず先生へそう聞いてしまった。

 すると、控えていた茶髪隊員が、鼻で笑ってくる。


「そんなことも知らないのかよ。

 やっぱりなにかの間違いなんじゃね」


 それを隊長さんが窘める。


「しっ、静かになさい」


「へーい」


 俺は顔を俯かせる。

 何も知らないのは、当たり前だ。

 だって誰も教えてくれなかったから。


「そうなんだよ。

 さらに、魔力数値が1000を超えるものがいたらそのなかで、数値が一番高い者に【魔皇紋】が発現するんだ。

 だから、健康診断の時にだいたいの候補者が絞られるんだ」


「じゃあ、わざわざ体育館で儀式なんてしなくても、その候補者だけ集めて儀式をしたほうが効率的なんじゃ」


「それじゃ、他の生徒たちへのお披露目ができないだろ。

 だからだよ。

 パフォーマンスも兼ねてるの」


 この子が次の皇帝でーす、頭が高い、控えおろうってしなくちゃいけないのか。

 めんどくさいな。


「なるほど」


 皇帝陛下は、どこか楽しそうに口を開いた。


「よくご存知で」


 それから皇帝陛下は俺を見た。


「左腕を見せてくれないかな?」


 俺はまた先生を見た。

 先生は、肩を竦めて、


「見せてやればいい」


 そう言った。

 俺は、制服の袖をまくって左腕をみせた。


「ふむ。

 たしかに、何もないな」


 皇帝陛下が顎をさすりつつ、呟く。

 ホッとした。

 よし、これならすぐに帰れるはず。


「なるほど、封印と偽装か。

 これはベルウッド殿の仕業かな?」


「……っ!」


 俺はビクッと体を強ばらせた。

 隣に座る先生を、見る。

 先生はいつも通り飄々としてい。

 先生が皇帝陛下へ答えようと口を開きかけた時、背後から声が飛んできた。


「ありえない!!

【魔皇紋】を封印しさらに、偽装!?

 たかが人間が??」


 あの茶髪の人だ。

 ズカズカと俺の横に来て、左腕を凝視する。

 それからまた嘲笑した。


「陛下、お戯れもほどほどになさいませ」


 皇帝陛下が、呆れたように茶髪隊員へ言う。


「ジグルド、いい加減にしなさい」


 あの人の名前、ジグルドっていうのか。


「たかが人間と、魔力ゼロの小娘でしょう。

 一応、陛下の客人ということで敬意ははらっていますがね。

 これ以上はどうも」


 そこに隊長さんも口を挟んでくる。


「やめなさい、ジグルド!!」


 一方、皇帝陛下はなにか考えるようにして、ジグルドへきいた。


「納得がいかない、と?」


「さすが皇帝陛下、よく俺の事を理解されておられます」


 と、こんどはそこに先生が手を挙げて口を挟んだ。


「じゃあ、話は終わりですね。

 そこの、えーと、茶髪君の言った通りです。

 俺はたかが人間、この子は魔力ゼロの小娘です。

 封印だ偽装だなどと、たしかに皇帝陛下にしてはお戯れが過ぎます。

 これにてお暇させて頂きます」


 ほら、行くぞ、と先生に促され立ち上がる。

 しかしそこで皇帝陛下が俺の腕を掴んできた。


「え」


「失礼」


 驚く俺へ、皇帝陛下は一言呟いた瞬間。

 パンッと何かが破裂する音が響いた。


「うわ、マジかよ」


 ジグルドの驚いた声が耳に届く。

 気づいた時には、俺の腕には元通り【魔皇紋】が出現していた。


「あーらら、バレちった」


 先生だけが、イタズラ描きを見つかった子供みたいなセリフを吐いた。


「どういうことか、ご説明いただけますかな?」


「せ、説明しないと、どうなるんですか?!」


 さすがに聞いておかなければならないと思った。

 皇帝陛下は、俺を見た。


「仮にも現皇帝を謀り、次期皇帝の隠匿をはかった。

 これはとても重い罪になる。

 まぁ、おそらく死罪か終身刑といったところか。

 それが科される」


「ち、ちがうんです!!

 先生はそんなことしていない!!」


「おい、ドラグナイト、落ち着け」


 先生が俺を落ち着かせようと、声をかけてくる。


「俺が、俺が頼んだんです!

 面倒なことに巻き込まれたくなかったから!!」


 支離滅裂なことを言ってるのは自覚している。

 でも、俺のせいで先生が罪人になるなんて、そんなことあってはならない。

 だから、必死に訴えた。


「だって、ずっと魔力無しだった。

 誰も彼もが俺の事、無視してきた。

 それなのに、魔皇紋なんて出るのはおかしいじゃないですか!

 こんなの出た、なんてどうせ誰も信じないでしょう??

 絶対、なにかの間違いってなるに決まってる。

 だから、先生に頼んで見えなくしてもらったんです!

 先生はなにも悪くないんです。

 罪人なんかじゃ、ないんです」


 言い切った時、肩で息をしていた。


「あーもう、自分から喋っちゃってお前は」


 先生が呆れている。


「だって、先生ぇ」


「わかったわかったから。

 とりあえず、先生にまかせておけ、な?」


 そうして、先生は皇帝陛下に向き直ると洗いざらい白状した。

 その上で、


「この子の考えを尊重するなら、代役を立てるべきです。

 この子が魔力ゼロなのは変えようのない事実ですしね」


 俺が皇帝にならないよう、考え直すように提案してくれた。

 しかし、皇帝陛下はくつくつと笑っている。


「これはこれは、ベルウッド殿は本当に気づいてないのですかな?

 そんなわけないでしょう」


「え?」


 俺は困惑する。


「いや、なかなかの役者ですな」


 皇帝陛下と先生を交互に見る。

 先生は、そこではじめて冷や汗を流していることに気づいた。


「あ、あの、先生?

 何の話ですか?」


「あぁ、シア殿には教えていなかったと。

 なるほどなるほど。

 それならたしかに、こちらも騙せる可能性が高い」


 皇帝陛下はなにやら納得している。


「……なんのことかさっぱりです。

 俺は、彼女の意志を尊重しただけですよ。

 皇帝になりたくない。

 面倒事にまきこまれたくない、という意志をね」


「わかりました。

 そういうことにしておきましょう」


 そこで皇帝陛下が隊長さんへ目配せしたかと思うと、


「それでは水晶の用意を」


 そう指示を出した。


「水晶?」


 戸惑う俺の横で、先生が呟いた。


「わるい、これ以上は誤魔化しきれない」


「え、それってどういう」


「これから、お前の魔力を改めて計り直すんだ。

 用意される水晶は、おそらく普段使われている四桁のものじゃなく、おそらく五桁以上の魔力を計れるやつだ」


「え、え??」


 皇帝陛下がニコニコと、俺達を見ながら言ってくる。


「【魔皇紋】と、皇帝の役目から逃げることはできない。

 これは神の定めた役目だからだ」


 水晶が用意される。

 俺の前に置かれる。


「極々稀にいるんだ。

 四桁以上の魔力数値を持つ者が。


 ちなみに、我々の祖先である初代魔皇の魔力数値は七桁だったと伝わっている。


 この水晶は、十桁までの数値を計測できる代物だ。

 さぁ、シア殿。

 水晶に手をかざしてくれ」


 ちょっと待て。

 なんだ、この状況は。

 これじゃ、これじゃまるで、俺に四桁以上の魔力があるみたいじゃないか。


 まさか、そんなわけはない。

 きっと、からかわれてるんだ。

 魔皇紋だって、なにかの間違いで発現したに違いない。

 きっとこれは、それを確かめるための検査に過ぎない。


 そう、自分に言い聞かせる。

 水晶に触れた。

 水晶が輝いて、やがておさまる。

 数値が浮かび上がっていた。


【9999000000】


「うそだろ、おい」


 まるで不気味なものを見たかのような、ジグルドの声。

 続いて、隊長さんの、


「すごい」


 という声。

 皇帝陛下は、うっとりと目を輝かせ、


「素晴らしい」


 そう声を漏らした。


 俺は、先生を見た。

 先生は申し訳なさそうに、俺を見ていた。




「先生は知ってたんですか、俺の魔力のこと」


 ようやくそう先生に聞けたのは、最初に通された部屋に戻ってきてからだった。


「さきに気づいたのは、店長だよ。

 ほら、何回かお前、包丁で指を切ったことあったろ。

 その傷の治りが、あまりにも早すぎたんだ。

 それで気づいたらしい」


「俺に言わなかったのは、何故です?」


「……今みたいなことになるって、わかってたんだろうな」


「店長らしいや」


 メイドさん達が、新しく紅茶をいれてくれた。

 お菓子はまだそのままだったので、今度はチョコを摘む。


「悪かったな」


「謝らないでください。

 それより、俺、これからどうなるんですか??」


「そりゃ、お前、皇帝になるんだろ」


 むちゃくちゃだ。

 なにもかもがむちゃくちゃなのだ。

 もっと適任がいるだろうに。

 なんで、こんな痣で人生を決められなきゃいけないんだ。

 それも、散々魔力ゼロを理由に無視してきた場所で生きていかなきゃいけないなんて、地獄すぎる。

 とにかく俺が皇帝になることは決定事項らしい。

 それだけはくつがえらないようだ。


「側近の人選とか、やることは沢山あるらしいぞ」


「え」


「ん?」


「それって、一緒に仕事してくれる人、自分で選べるってことですか??」


「そういうことだろ。

 皇帝陛下直々に説明あっただろう。

 聞いてなかったのか??」


「まったく」


「お前なぁ。

 だから、授業は真面目に聞けって言ってただろ。

 こういう時、人の話を聞くための訓練でもあるんだからよ」


「じゃあ、先生。

 側近になってくださいよ。

 誤魔化しきれなかった責任とって。

 お願いします!!」


「えー、そう来るのお前?」


「だって、事実そうじゃないですか」


 まぁ、無理にとは言わないが。

 さすがに、味方皆無のところでひとりでやってく自信はない。

 そもそも俺は、魔族が大嫌いだ。

 我慢してここにいたら、精神がぶっ壊れる自信があるくらいには大嫌いだ。

 それなら、まだ好きな人にいてもらいたい。


「それに俺、先生のこと好きだから一緒にいてほしいんです」


「ドラグナイト、そういうのはちゃんと好きな人が出来たらいってやりな。

 先生じゃなくてな」


「えー、でも、先生やさしいし。

 今回は誤魔化しきれなかったですけど、なんだかんだお願い叶えてくれるし。

 ほら、好きになる理由しかないでしょ」


「お前、不健全って言葉知ってる?」


 いつものじゃれあいだ。

 先生に対して、俺は恋愛感情は皆無だ。

 ただ、やっぱり遊んでくれる相手に好意をもつのはしかたないとおもう。

 そもそも恋愛がどんなものかも知らない。


「知ってますよー。

 まぁ、それはともかく割とガチめに相談してるんです。

 このままだと俺、操り人形コース予定な気がしてならないんで。

 先生がそばにいたら、魔族より強いし安心できるんです」


「あー、身の安全も含めてってことか」


「そういうことです。

 ほら、俺、これでもか弱い女の子じゃないですか。

 自惚れとかじゃなく、そっちの意味でも嫌な予感がするんですよ。

 先生なら俺の護衛にピッタリだなって」


「信用しすぎだ」


 なんて会話をしている所に、近衛騎士隊の二人が現れた。

 隊長さんと、ジグルドだ。


「シア様、お部屋が用意できましたのでご案内します。

 ベルウッド殿は、おかえり頂いて結構です」


 は??


「え、先生、帰っちゃうの??」


「はい。

 ここはそもそも人間族は入れない場所ですから。

 今回は特例で招かれているにすぎません」


 俺は先生をみた。

 先生は肩を竦めてみせる。


「あー、そのことなんですがね。

 たしか皇帝が直々に側近に選んだ者なら、ここに居れたはずですよね。

 それは、次期皇帝でも同じだったはずです」


 先生は俺をちらりとみた。


「何、お前、自分が次期皇帝の側近に選ばれると思ってんの??」


 ジグルドが挑発してくる。

 しかし、先生はいつも通り飄々としている。


「まぁ、どこぞのチキンな子犬くんよりは、次の皇帝様とは懇意なもので」


 あ、先生も煽ってる。


「んだと、コラ!?」


 ジグルドが殴りかかってきた。

 それを先生はひょいと避けて、胸ぐらを掴んだかと思うと床にめりこませた。


「あ、わるいわるい。

 手が滑ったわ」


 と、全然悪びれずに言った。

 ちなみに先生は、魔族より強かったりする。

 掲示板にもそう書き込んでた。

 まさか近衛騎士より強いとは思わなかった。


 隊長さんが、もの凄く疲れた顔をしていたのが印象的だった。

 さらにこのあと、ジグルドの件を聞きつけてやってきたほかの近衛騎士達が、先生に攻撃を仕掛けたのだが、全員床や壁、天井にめり込むことになってしまった。


 そしてやはり隊長さんだけが、盛大に疲れたため息をはきだして、


「馬鹿ばっかり」


 そう呟いていた。


「力量を推定する力くらい身につけましょうよ。

 エリートでしょ、あんたら」


 先生の指摘に、隊長さんは頭を抱えていた。


「言葉もないです。

 あぁ、ベルウッド殿の部屋もご用意できました。

 これからはシア殿の護衛兼助手として働く、ということでよろしいですね?」


「えぇ、それでよろしくお願いします」


 いつの間にか隊長さんの了解は得ていたらしい。


「ほら、先生は願いをちゃんと叶えてくれるじゃないですか。

 先生のそういうところ、大好きですよ」


 俺の言葉に、先生も負けず劣らず盛大なため息を吐いたのだった。



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 異性のコンビだったら俺得だと思ってたんですがやったー!  俺っ娘良いですねw  根が良い娘なのは感じてたから本当傀儡飼い殺しコースは避けて欲しい。  まあ先生いれば公私共に安泰ですねw  いずれ神に…
喫茶店に来てる常連の皆さまがそのうち側近としてやってくる未来しか見えない予感…喫茶店のマスターもやばいよこれ多分。 というか入れ替わり立ち替わり喫茶店で話しかけてきた皆さんがただの素人とは考えにくいの…
何故に全てを焼き尽くさないのだろうか、ボブは訝しんだ
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