悲しい嘘
川島くんを好きになってから知ったことがある。それは、人を好きになるって、とっても幸せだっていうこと。
そして、同時に知ってしまったことがある。それは、人を好きになるって、とっても悲しくて辛いってこと。
今日のデートを最後にしようって思ってたの。冬休みの間ずっと考えていて、結論がようやく出て、もう私の気持ちがブレないうちにハッキリと伝えようって。
でも、最後にもういちどだけデートして思い出を作りたかった。大好きな人との思い出を、もうひとつだけでいいから加えたかったんだ。
楽しい1日だった。でも、途中なんども泣きそうになっちゃった。こうして2人きりでデートすることはもうないんだなって思ったら、今までのことが全部思い出されてきちゃって……。
あそこに行った、あんなことした、こんなこと言った、全部昨日のことみたいに思い出しちゃって……。
別れを告げた時、川島くんは何度も何度も諦めずに食い下がってきた。自分から別れるって言ったくせに、でも嬉しかったんだ。だって、彼は本当に私の事が好きだったんだって、そう心から思えたから。
私は彼のことをキライになったわけじゃない。むしろ今でも大好き。本音を言えば、ワガママを言っていいなら、絶対に別れたくないよ。
でも、それはダメ。だって彼は私のことを好きだけど、でも大好きな女の子が、もうとっくに心を奪っていたんだもん。2人で長い時間をかけて築き上げた大好きに、私の好きが敵うわけないじゃない。
だから今日の目的は、彼を槇原さんに返してあげること。ずっとずっと待っている彼女の元に、川島くんを戻してあげること。
そしてそのためには、川島くんが私に少しでも心を残しちゃいけない。
彼は私のことを大好きだと勘違いしてる。でもそれじゃあ正直な気持ちを伝えてくれた彼にも、ずっと待ち続けてくれている彼女にも失礼だよ。槇原さんが可哀相だよ。
だから私は、彼の好意を総て完全に断ち切って別れなくちゃいけない。そうしなくちゃいけなかったの。
でも川島くんは諦めなかった。だから今日たったひとつだけウソをついたの。他に好きな人が出来たから別れて欲しいって。
そんなの、ウソに決まってる。そんな人いるわけないよ。でも、もうそう言うしか私には思いつかなかったの。
辛かった。悲しかった。こんな想い、もう二度としたくない。でも後悔はしてないの。
川島くん、私と付き合ってくれてありがとう。
一年にも満たなかったけど、キミが私の初めてのカレシで本当によかったって、心の底から思ってる。ほんのちょっとの間でも、キミと恋人になれて心から幸せだったよ。
ひとつだけ心残りなのは、一度でいいから私も『よしくん』って呼びたかったなってこと。
でもダメか。だってその呼び方は、槇原さんだけのものだもんね。
川島良樹くん、大好きだよ。ありがとう。苦しい思いをさせてしまってゴメンね。
川島くん。どうかもう自分の心に嘘をつかないで。
そしていつだって隣りにいる、キミにとっての本当の宝物に、早く気づいてあげて。
いつか、心の底から笑えるようになったキミと、また会えますように。
――さよなら、よしくん。




