一人の男の引き際
あーあ、やっぱりフラれちゃったかぁ。でも僕の心の中は、自分でもビックリするくらい落ち着いている。
それはあの初詣での出来事があったから、だからきっともう覚悟ができていたからだと思う。
初詣の帰り道。人混みの中に川島くんを見つけた瞬間の、彼女のあの顔。
まるで失くした半身を見つけたみたいな表情だったな。
あの時、槇原さんは川島くんを目指して駆けだしていた。その姿を見た時に、もう答えは出てしまったな、と思ったよ。
あの顔を見てしまったら、もう僕に勝ち目なんて万にひとつもなかったんだって、そう認めるしかなかった。
彼女は「夏休みも、花火大会の夜も……藤原くんが隣にいてくれたおかげで、私はどれだけ救われたかわからない」と言ってくれた。
「藤原くんの優しさがなかったら、きっととっくに一人で潰れちゃってたと思う」と言ってくれた。
「藤原くんみたいな素敵な人と付き合えたら、きっと幸せになれるんだろうな」って言ってくれたんだ。
彼女は僕にたくさんの「ありがとう」と「ごめんなさい」をくれた。もう、それで十分すぎるじゃないか。きっと僕のこの初恋は、一番美しい形で終わったんだ。
でもやっぱり、悔しいよな。あの川島くんに、槇原さんの気持ちなんか全然無関心な川島くんに負けたんだから。
だから……。
――川島良樹のバカヤロー!
これくらいは言ってもバチは当たらないよね?
初恋は成就しなかったけれど、少なくとも僕は、彼女の助けであることは出来ていたみたいだ。
今はもう、それだけでいいや。そう納得しよう。
そして、これからも彼女が困った時には迷わず手を差し伸べる、そんな人間でいよう。
ここで恨みつらみを吐き出すような、そんな人間にだけはなりたくない。
槇原さん、僕の親友になってくれるかな。
今は、それでいい。
彼女がこれから川島くんと歩む道がどんな結末を迎えるのか、それは誰にもわからないんだから。
もし彼がまた槇原さんを泣かせるようなことをしたら、傷つけたりしたら……その時は……。
(……だから、これからは親友でいさせてよ)
僕は、けっこう本気でそう思っているんだ。




