第四話
事件当日の三条邸。
その時、この家の中には家主である三条 玲子とその友人。そして、資産・三十億円令嬢殺人事件の犯人である北大路 十子の二人がいた。
「ねぇ、玲子。考え直してもらえない?」
「それは無理よ。だって、彼は私と結婚して家族を作りたいと言っていたし、私も彼の気持ちを尊重したいと思うわ」
「そんな……」
「だから、諦めて……」
三条と北大路には共通の男に好意を持っていた。
男は、三条と結婚することを希望していた。
だが、北大路は諦めきれない気持ちがあった。
男との付き合いは三条と北大路も同じくらいだが、気持ちは誰にも負けていないと北大路は思っている。
北大路は愛用のバックから殺傷性の高い薬を取り出し、机の上に置かれた水の入ったグラスに薬を入れた。
そして、それを飲んだ三条は数時間後……。
「北大路さん……」
「いいの……。私が悪いんだから……」
北大路は逮捕された。
三条と結婚を夢見ていた男はこの世からいなくなった三条玲子との結婚を破棄し、別の相手を探し続ける日々を送っていたが、玲子ほど良い女性はいないとし、生涯独身を貫くことを決意するのだった。