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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
8/70

家に帰っても、学生は大変なの!

 家に帰っても、【みどり】に安住の時は訪れなかった。

 何故なら、それは……。

 数年ぶりに登校し、フルに授業を出て、体育にも全力で参加し、

さらに嫌な濁声眼鏡猿の嫌味にも耐えると、さすがに疲れた。

 母は御機嫌で私の好物ばかりの夕食を作り、

それを美味しく食べ終わると、眠たくなってきた。

「みどりちゃん、お風呂に入ってね」

「はーい」

 そして、ゆっくりお風呂に浸かり体を温め、さっぱりとした気分でお風呂から出ると、

さらに眠気が襲ってきた。

 でも、まだ眠れそうにはなかった。

「みどりさん、やりますよ! さあ、机に向かいなさい!」

「ハイカラさん⁉」

 この黒髪の、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性の幽霊は、私の守護霊のハイカラさんだ。

「あの濁声眼鏡猿の出した問題等、この私が見事、解いてしんぜましょう‼」

「で、でも、どんな問題だったかなんて、覚えてないよ?」

「そこは私にお任せあれ!」

 そして、ハイカラさんは例の扇子を出し、机に置かれていた白紙の紙を閉じた扇子で触った。

 すると、白紙だった紙に今日の石川の小テストがくっきりと写し出された。

「ど、どうなってるの⁉」

「ほほほ。この程度で驚かれても困ります。それより、始めますよ!」

 そう。ハイカラさんはあの扇子で次々と不思議な現象を起こす。

 少しだけ慣れたけど、やっぱり、驚いてしまう。

「でも、全然分かりそうにないよ……」

「さて、まずは教科書とやらを開きましょうか?」

 そう言ってハイカラさんが扇子を拡げ扇ぐと、

ずっと閉まってあったはずの中学一、二年の数学の教科書が、ふわふわ飛びながら机に近付いて来た。

 そして、それらの教科書はゆっくりと机に置かれた。

 それから、あるページが勝手に開いた、。

「さて、どうでしょう? ここを読んで、もう一度この問いを解いてみてください」

「分かった」

 ハイカラさんの指示通り問題を解いていくと、

一〇問あった問題は二〇分もあれば解く事が出来た。

「す、凄い‼ 解けちゃったよ⁉」

「ほほほ。あの濁声眼鏡猿が出す問題等、この程度のものなのです。

 そして、みどりさん。

 明日も、この問題をやりますが、明日は教科書とやらを見ずに解いてみてください」

「はい」

 私はまたハイカラさんに付いて行こうと思った。

 そして、ハイカラさんの指示通り、今日あった授業の復讐。

 そして、宿題を行い眠った。

 いつもならスマホを片手にベットの中で夜更かししていたけど疲れも加わり、

何とも言えない達成感がそれをしなくても私を眠らせてくれた。

 でも、やっぱり朝はきつい。

 外の雰囲気が朝を告げてるけど、ベットが私を離してくれない気がする。

 だから、起きなかったのに、

「みどりさん、朝です。起きてください」

と、ハイカラさんから起こされた。

「まだ、眠いよ……」

「みどりさん? 朝ですよ? 起きてください!」

「まだ、眠たい……」

 そして、私は掛布団を顔まで掛け、ハイカラさんから隠れた。

 でも、風を感じ、

「それで、隠れたつもりですか?」

という、ハイカラさんの声が聞こえた。

 すると、私の掛布団は宙に浮き、私のだらしない姿が露わになった。

「へっ⁉ ど、どうなってるの?」

「さあ、みどりさん、朝ですよ?」

「はぁーぃ」

「何です? その返事は?」

「はいっ!」

 結局昨日同様、私は朝食を食べ、美雪に連行され学校へと通う事になってしまった。

 でも、昨日よりかは足取りは軽く、給食の時間を迎える事が出来た。

 そして、いざ給食の時間になると、今日は牛乳にパンの組み合わせだった。

 それを見た私がほっとしていると、ハイカラさんの御機嫌は斜めだった。

「みどりさん」

「ハイカラさん、どうしたの?」

「昨日の男子は、借りた物を返さないのでしょうか?」

「西園寺君の事?」

 ハイカラさんに言われ私が西園寺を見ると、

西園寺は何事もなかったかのように自身の箸で給食を進めていた。

「西園寺君、忘れてるみたい」

「でしょうね。許すまじ‼」

 そして、ハイカラさんは例の扇子をまた取り出してしまった。

「ちょ、ちょっと、ハイカラさん⁉」

「停めないでください、みどりさん」

「いいの‼ 西園寺君は昔からこういう人なんだから‼」

 そう、西園寺は昔からやりっぱなしな所がある。

 特に親しくした覚え等ないのに、勝手に私の者を借りて、返す。

 偶に返してもらえない事もあったけど、忘れているのかこういう風に何事もない顔をしている。

 ちょっと、困る事もあるけれど、特に嫌な思いをした事はない。

 だから、私はちょっと自慢した。

「ねえ、それより、見てよ!」

「ほう、これは……」

 私は箸を上手に持ち、動かしてみせた。

 ハイカラさんの助けを借りて持てていた箸の感覚が残っていて、

今なら箸を上手に持てる気がしたからだ。

「どう? 合格点、くれる?」

「まだまだ、危うい所もありますから……。六五点といった所でしょうか?」

「えーっ⁉ 厳しいな……」

「ほほほ。世の中は厳しいものです」

 私は少し残念な気持ちになったけれど、もっとがんばろうという気持ちの方が強くなり、

何だか嬉しくなって給食を美味しく食べる事が出来た。

 そして、何れハイカラさんに褒めてもらおうという小さな野心が出来てしまった。

 そうして、私は今日も無事にフルに授業をこなし、またハイカラさんと一緒に家に帰った。

 それから昨日同様、母のあの色んな心が共存している顔を見て、

家に入ってゆっくり休憩を取った後、ハイカラさんと勉強した。

 でも、昨日の石川の問題は半分しか解けず、また教科書に頼るはめとなってしまった。

「ごめんなさい」

「ほほ。これは想定内です」

「えっ⁉ そうなの?」

「当然です。努力せず出来る者等、そういませんよ」

「だよね。あーぁ、木田君みたいに頭が良ければいいのにな!」

「木田? あの、理数大臣の方の事ですか?」

「理数大臣⁉ 面白いあだ名だね!」

「こほん! 人には得手、不得手があるのです。みどりさんだってそうでしょう?

 社会と国語とやらの授業の時は、生き生きしてますよ?」

「だって、歴史は好きだから、昔から色々見てたし。国語は何となくわかるから」

「それでよろしいのです。そちらに関しては私は言う事はありませんもの」

「ハイカラさん……」

 やっぱり、ハイカラさんのこういう所が好きだ。

 だから、私は数年間サボって来た勉強に取り組む事が出来る。

 以前なら分からないで済ませていたのに。

 もう少し、がんばろうと思える。

 そして信じられない事に、私は見事金曜日まで中学校に通い続け、

ハイカラさんと一緒に勉強するという事を成し遂げた。

 そして、土曜日を迎えた。

 でも、土曜日は休みなのに、ハイカラさんは例の如く、私を起こしてきた。

「ハ、ハイカラさん……。今日は休みだよ?」

「休みであろうと、なかろうと、婦女子たる者、規則正しい生活をしなければなりません!

 見て見なさい。あなたの御両親は既に起きて生活をしていますよ?」

 ハイカラさんに言われ、私が耳を澄ますと、確かに、両親は起きているようだった。

「そうだね……」

「さあ、起きて、御両親の所に行きなされ」

「はい」

 そうして私が両親の所に行くと、両親は驚いた。

 でも、心のケアなる所に行く事を進める事はなかった。

 私は嬉しかったけど、その後、ハイカラさんによる約一週間分の勉強の復習地獄が始まり、

またスマホで、色々と見る余裕がなくなる程、疲れてしまった。

 そして、その日の夜。

 私が眠ろうとしていると、ハイカラさんが、そわそわしていた。

「ハイカラさん、どうしたの?」

「いえ!」

「いえ!じゃないよ?」

「そ、その。明日のご予定はどうなっておられるのかと……」

「明日は美雪ちゃんの家に行くんだけど?」

「そ、そうでしたか!」

「もしかして、それを気にしてたの? ちゃんとスマホに連絡来てたから、大丈夫だよ!」

「世の中は便利になりましたのね」

「そうだよ。だから、安心して」

「分かりました」

「じゃあ、おやすみなさい」

「おやすみなさい、みどりさん」

 そうして、私は明日に備えて、眠った。






 私は、小松 みどり。

 もう、ハイカラさんったら!

 また、面白いあだ名を考えるんだから。

 気を付けないと、木田君の前で、そう言っちゃうかもしれないなぁ……。

 でも、家に帰っても、あれじゃ疲れちゃうから、気を引き締めなきゃ!

 えぇっ⁉

 ま、まさか、ハイカラさんが⁉

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