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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
6/70

強敵は、石川だけじゃなかった

 【石川】の授業を終えた【みどり】だったが、久しぶりの学校生活は、まだまだ続く。

 そんな【みどり】の前に乗り超えなくてはならない強敵が次々と現れる

 ハイカラさんと木田の背中、

それから美雪の存在で私は、中学三年の学校生活二日目を過ごせている。

 まだ、石川の数学の授業一つが終わっただけだけど、今日を乗り切れそうだった。

 二限目は、大塚の国語、三限目は、清水の理科だった。

 まともに勉強をしていない私は相変わらず内容についていけなかったけれど、

やった事をノートに書き留め、授業に参加した。

 そして、鬼門の体育の授業となった。

「まあ、そのような服装で、運動なされるのですか⁉」

 ほぼ新品の体操着に着替え終わった私に話し掛けてきた、この黒髪で、日本人形のような顔をした、

年齢不詳の女性の幽霊が、私の守護霊のハイカラさんである。

「結構、動きやすいよ?」

「そうでしょうか?

 上着にセーラー襟は無く、お洒落間は減り、

ブルマーでなく中途半端な袴では動けそうにはなさそうですが……」

「動けるから、見ててよ!」

 今日の体育は、来月行われる体育祭の徒競走に向けてのタイム測定だ。

 協力プレーの運動ではないし、運動器具がある訳でもないし、

それに、私は走るのは得意の方なので気が楽だった。

 そして例によって、美雪の先導により私は運動場へ向かう事となった。

「やだな……。私、足が遅いから測りたくない‼」

「そう言えば、美雪ちゃんはあまり速い方じゃなかったね」

「そうなんだよね。みどりちゃんは早いから羨ましい!」

「ずっと走ってないから遅くなってると思う」

 そんな話をしていると、四時限目の花田の体育の時間が始まった。

 一〇分程の準備体操の後、男女に分かれ五人ずつ、五〇メートルのタイムを測定した。

 すると、意外な事に私は学年で五番目、

私のクラスには運動部の女子がいない為か、私は、クラスの女子の中で、一番の成績だった。

「小松。お前足が速いんだな。今からでも俺の陸上部に入らないか?」

「花田先生。それは遠慮します」

「そう言うな。もったいないぞ?」

「私は、運動部なんて似合わないですから」

 そして、私は花田の勧誘から逃げた。

 花田は悪い先生ではないけど、少し強引な所があるので困る。

 この花田の強引さで、石川の一件が生まれたのだから。

 もう二度と石川に嫌味を言われない為にも、私はこれからずっと花田から逃げ続けるつもりだ。

 そう、心に決めると、

「みどりさん、本当にその服は動きやすいのですね」

と、私を見守っていてくれたハイカラさんに言われた。

「でしょ?」

「しかし、みどりさんは足が速いのですね」

「まあね。ずっと走っていなかったから心配だったけど、昨日の予行演習が良かったのかも!」

「では、お母様にお礼を申し上げなくては」

「そうだね!」

 だけど、私とハイカラさんが話していると、また八木から話し掛けられてしまった。

「小松さんって、足が速いんだね」

「そんな事ないよ」

「あるよ。だって、去年まで私が一番だったの。それより全然、速かったじゃない。

 これで今年の体育祭のリレーの女子のアンカーは、小松さんで決まりね」

「そ、そんな、無理だよ‼ だって、私、来月の体育祭に出るか分からないし」

 私がそう言うと、ハイカラさんの視線が突き刺さった。

 私がちらっとハイカラさんを見ると、ハイカラさんの顔は体育祭を休ませてはくれそうになかった。

 それを見て私が苦笑いをすると、八木が話を続けてきた。

「そんな事を言わないで。一緒に体育祭、がんばろう」

「あ、う、うん……」

「約束よ」

 そう言い残し、八木はポニーテールでまとめた茶髪の長い髪を靡かせ、私から離れて行った。

「良い友ですね」

「う、うん……」

「そうではないのですか?」

「何と言うか、関わりたくないんだ」

「色々とあるのですね」

 ハイカラさんと話していると、今度は美雪が私に話し掛けてきた。

「みどりちゃん、本当に足が速いね!」

「偶々だよ」

「偶々な訳ない‼」

「はは……。ところで、美雪ちゃんはどうだった?」

「私はギリ、最後にはならなかったよん!」

「良かったね」

「うん! でも、みどりちゃんがメェメェより速かったから、ちょっとすっきりした!」

 メェメェとは、八木のあだ名である。

 美雪が小学生の時に付けたもので、私と美雪の間だけで通じる名前だ。

「聞かれたら、怒られるよ?」

「大丈夫。聞こえてないって!

 でも、みどりちゃんがあのメェメェに勝つなんて、メェメェも思ってなかっただろうね」

 そうやって私と美雪が話していると、今度は八木以外の女子が集まってきて、

私が足が速い事を称賛してくれた。

 あまり話した事のない人からも褒められ、私は少しだけ足が速い事が良かったと思えた。

 そして、無事に体育の授業を終え、皆と着替える事が出来、給食の時間となった。

 私は好き嫌いはない方だけど、白いご飯に牛乳だけは苦手だった。

 なのに、今日の給食はそれだった。

 まあ、今日のおかずに赤魚の煮つけがあったので、

それで誤魔化せそうだと考え自分の箸を取り出した。

 すると、心配症の母が私の箸以外に予備の割りばしを入れてくれていた。

 私はその二膳の箸を見てちょっと呆れてしまったけど、母に感謝して割り箸をしまおうとした。

 すると、意外な人物から命令された。

「おい、小松‼ 割り箸をよこせ‼」

「えっ⁉ さ、西園寺君?」

 それは、隣の席の西園寺だった。

 どうやら西園寺は箸を忘れたみたいだ。

 私の学校では箸を忘れた生徒は担任に申し入れ、割り箸を借り、

次の日に担任に割り箸を返すというルールがある。

「でも、先生に言えば……」

「いいからよこせ‼」

 そう言って、西園寺は私の割り箸を奪った。

 西園寺は怖い。

 小学生の時からしっているけど、乱暴で顔も怖いし、

根っから悪い人ではないけど話しにくいから近寄り難い存在だ。

 なので、逆らわず私が自分の箸で食事を始めようとすると、私はまた話し掛けられた。

「よろしいのですか?」

「ハイカラさん?」

「泥棒行為は見逃せませぬ‼」

 そして、ハイカラさんは例の扇子を取り出した。

 けど、私はそれを止めた。

「いいの。ハイカラさん」

「何故です?」

「何となくね、私、西園寺君の気持が分かるの。

 だって、濁声眼鏡猿に頭なんて下げたくないでしょ?」

「そうですが……。納得いきません‼」

「きっと、明日、西園寺君は割り箸を返してくれるって。そんな事より、箸の使い方を教えて!」

「承知しました……」

 ハイカラさんは納得してなかったけど、私の頼みを聞いてくれた。

 それからやっぱり抵抗があった白いご飯に、牛乳を制覇して、

私は、約二年ぶりの給食を完食した。

 そして、昼休みが訪れた。

 昼休みの間に私は二つの事が気になった。

 一つは、私の壁になってくれている木田である。

 木田は一人で何かの本を読んでいた。

 もう一つは、隣にいる西園寺だ。

 西園寺は怖いが意外と人気者で、

離れた席にいる、伊藤いとう 勇人はやと大隈おおくま 誠司せいじ

それから他のクラスの石井なる男子とプロ野球について話していた。

 何が気になったかと言うと、木田と、西園寺の二人の対照的な昼休みの過ごし方だ。

 どちらも違った楽しみ方をしていて、私にはないものだったから、

つい、その二人を観察してしまった。

 すると、美雪が私の席まで来てくれた。

「みどりちゃん、何を見てたの?」

「えっ⁉ 何も見てないよ?」

「えぇーー? 見てたよぉ。木田君!」

「そ、それは……」

「みどりちゃん、木田みたいなのがタイプだったの⁉」

「違うって‼ 木田君が何の本を読んでるのかなって思っただけだから!」

「なぁーんだ。良かった! 多分だけど、難しい数学の本だよ。数Cって、書いてたし!」

「数C? 難しそうだね」

「そんな事よりさ。次の授業に行こうよ!」

 次の授業は、阿部の技術だ。

 二時限枠もあるけど、私は好きだ。

 何故なら、私は技術系や美術系が好きだからである。

 だから、

「うん。行こう!」

と、私は、はりきって技術室へと向かえた。


 私は、小松 みどり。

 何とか、白いご飯と、牛乳のセットを制覇出来た。

 明日は、このセットじゃない事を祈る!

 でも久しぶりの給食、悪くなかったな。

 そして、次の授業、とっても楽しみ!

 

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