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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
5/70

ハイカラさん、強敵、石川にあだ名を付ける

 無事に中学三年生の始業式の日を終えた【みどり】だったが、

次の日の最初の授業は強敵、【石川】の数学だった。

 【みどり】の足は重く、中学に通えなくなるかと思いきや、また、【みどり】にあの声が響く。

 そして、【みどり】は、色々な声に包まれながら、学校生活に挑むのだが……。 

 ここ数年、規則正しい生活とは縁がない生活をしてきた。

 だから、数年ぶりにたった一日、規則正しく起床し、半日だけど、学校生活を過ごし、

そして、ちょっとした運動までもすると、次の日の朝に規則正しく起床するなんて無理だ。

 しかし、無理ではなかった。

「みどりさん、朝ですよ」

 私は、ベットの上で寝ていた。

 その私の上で、黒髪で、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性の幽霊が、私を起こしてきた。

 この幽霊は、ハイカラさん。

 昨日から私の主語霊になってくれている。

 でも、今のハイカラさんの行為は、金縛りだ。

 起きるどころか、息苦しい……。

「ハ、ハイカラさん……。く、苦しい……。起きるから、どいて……」

「おや⁉ これは、失礼いたしました!」

 ハイカラさんは、私の上で正座をしていた。

 幽霊だけど、正座をしていた。

 そのハイカラさんが場所を代えると、私の金縛りは消えた。

「おはようございます。みどりさん」

「おはようございます。ハイカラさん」

「さあ、起きて、朝食を食べなさい。そして、支度をしなさい」

「はい……」

 ハイカラさんは私の守護霊だけど、逆らう事は出来ない。

 何故なら、超能力的な力が使えるからだ。

 もし逆らうと、また、昨日のようになってしまう。

 しぶしぶ私はベットから下りる事にした。

 そして、朝食を食べに行った。

 すると、母は驚いた。

「みどりちゃん⁉ どうしたの?」

「おはよう。朝食を食べるんだけど」

「もう食べるの?」

「うん。食べないと、学校に遅れちゃうから」

「えっ⁉ 学校に行くの?」

「うん。行ってみる

 母の顔は驚きと喜びが共存していた。

 そして、母は急いで私の分の朝食を準備してくれた。

 パンと、真っ白いご飯が並んだのは謎だったけど……。

 それから、私は、また制服を着た。

 昨日よりは着やすかったけど、今日の鞄の重さは私をそこから先に進ませてくれなかった。

「どうなされました?」

「うん……

 今日の鞄の重さは、私の気分を鎮めた。

 この鞄の重さは、私が学校にいる時間と同じだ。

 昨日、授業がなく半日であんなに疲れたのに、今日は六時限目までフルに授業がある。

 しかも、一限目は石川の数学。

 そして、体育の授業まであった。

 もう、不安しかない。

 私はその場に座り込んでしまった。

 すると、

「みいーどおーりちゃあーん‼」

と、家の外から私を呼ぶ美雪の声が聞えた。

「美雪ちゃん⁉」

 私が窓から外を見ると、美雪が私に手を振ってきた。

「迎えに来たヨ! 一緒に行こう‼」

「み、美雪ちゃん。恥ずかしいよ。近所迷惑!」

 私を迎えに来たのは、宮本 美雪。

 私の幼馴染である。

 美雪は演劇部をずっと続けてきたせいか、声が通る。

 私が恥ずかしがっていると、

「早く行かなければ、もっと御近所様方に聞こえるようにいたしますが?」

と、ハイカラさんに脅された。

 ハイカラさんはこうやって私を脅す事がある。

 そして、ハイカラさんに逆らえない私は美雪と共に学校へ向かうはめとなった。

「おはよう、みどりちゃん」

「おはよう、美雪ちゃん」

 そして、美雪はまた私の手を握ってきた。

 今度は左手だったけど。

「行こう!」

「美雪ちゃん、恥ずかしいよ!」

「恥ずかしくなぁーい!」

 美雪は無邪気に笑い、私の左手をしっかりと握り歩き出した。

 私はその美雪に導かれ、学校への道を進んだ。

「ねえねえ、みどりちゃん、聴いて!」

「どうしたの?」

「私ね、演劇部の部長になったんだ!」

「へえ、凄いね」

「へへぇーん! 今日、朝市で みどりちゃんに聴いてほしかったんだ!」

「どうして?」

「どうしても!」

 美雪は私の左腕を抱きかかえるように、ギュッと掴んだ。

 はっきりとはわからないけど、美雪が嬉しい事だけは分かった。

 そして、何となく、私までも嬉しくなった。

 すると、私の足取りは軽くなり、無事に教室に入る事が出来た。

 そして昨日も座った私の席に座り、鞄の中の荷物を机に入れ替えていると、

おはようございますと、挨拶された。

 それは私の前の席の木田きだ さとるだった。

 美雪によると、やはり木田は中学校からこの学校へ通い出したみたいで、

かなりの変わり者らしい。

「おはよう。木田君」

「小松さん、僕が邪魔ならいつでも席を替わりますからね」

 美雪の言う通り、木田は変わり者だった。

 昨日、石川に嫌がらせを受けたのを自分のせいだとまだ思い込んでいる。

「大丈夫だよ」

「本当ですか? 何かあれば、何でも言ってくださいね」

「うん。分かった」

 やっぱり、木田は変わっているけれど、悪い人ではなさそうだ。

 美雪曰く、木田は根っからの理数系で、特に数学は高校生レベルらしい。

 だから、頭をそっちに全振りしてしまっている為、ズレた所があるみたいだ。

 でも、そんな木田がいるおかげで私は落ち着けた。

 木田は痩せ型だけれども、身長は私より一五センチメートルは高く、その背中を見ていると、

私は隠れている気がして、落ち着けそうだった。

 すると、眼鏡が復活した石川が朝のホームルームを始めに来た。

「こらぁ! ホームルームを始めるから席に着かんか‼ じゃあ、出席を取るぞ」

 そして昨日同様。石川の濁声による出席確認が始まった。

 昨日よりかはマシにはなったけれど、やはり、私の名前を呼ぶ時は嫌そうに溜息をついた。

 すると、

「また、眼鏡を壊されたいのでしょうかね……」

と、ハイカラさんの声がした。

「ハ、ハイカラさん⁉」

「それとも、喉を潰してあの耳障りな声が出ないようにいたしましょうか……」

「そんな事しなくても、いいから!」

「しかし、何かしないと気が済みません‼」

「じゃあ、私の傍にいて‼」

「私は みどりさんの守護霊ですから。傍にいますが?」

「そうだけど、見守っていてほしいの。

 ハイカラさんが傍にいて、見守っていてくれたら私、石川の意地悪なんかへっちゃらだよ!」

 私は心の中で正直に言えた。

 石川は嫌いだ。

 顔も見たくないし、声も聞きたくない。

 だから、一年生の時の私なら、学校に行かないという逃げの選択をしただろう。

 でも、今の私は、ハイカラさんと、木田の背中、

それに、美雪がいるから、その選択をせずに済みそうだった。

「出過ぎた事をいたしまして、申し訳ありませんでした。

 ですが、あの濁声眼鏡猿ダミゴエメガネザルが出過ぎた事をやらかしたら、今度は止めないでくださいね」

「分かりました。ハイカラさん」

 濁声眼鏡猿という、あだ名は、さておき、ハイカラさんは、面白い。

 大人の助言をするのかと思えば、こんな子供っぽい所も持ち合わせている。

 だからなのかもしれない。

 ハイカラさんが傍にいると、安心出来る。

 今日一日、がんばれそうな気がする。

 そう思えると、今日の私はホームルームで涙を浮かべる事はなかった。

 そして、一限目の授業へと突入した。

 分かってはいたけれど、石川による数学の授業。

 どうやら今日はいままでの学年でやってきた事を踏まえた小テストを行うみたいだ。

「こんなん出来んかったら、一年生から行き直せよ。

 まあ、そんな奴はこのクラスにはおらんやろうけど」

 そう言って、石川は私を意地の悪い目で見た。

 その目で、分かる。

 お前は俺のテストなんか出来ないだろう?と言われている事が。

 でも、その通りだった。

 一門目から全く分からない。

 このままだと、一門も解けずに小テストを終える。

 また、石川から何て言われるんだろう。

 そんな事を考えていたら、二五分等、あっという間に過ぎた。

 そしてテスト時間は終了し、私は私の列の人の小テストを回収した。

 勿論、私のテスト用紙を一番下にして。

 それから、石川にテスト用紙を渡すと、

「おーぉ、小松。簡単すぎて早く終わったんか?

 えらい早くから、えんぴつが止まっとったみたいだったな」

と、嫌味を言われた。

 私は泣きそうだったけど、堪えた。

 お腹に力を入れ、自分の席に戻った。

 すると、ハイカラさんから優しく出迎えられた。

「みどりさん。良く、がんばりましたね」

「ハイカラさん?」

「あの程度の問題、私が教えます。一緒にがんばってあの濁声眼鏡猿を見返すのです‼」

 ハイカラさんは凄い。

 ハイカラさんのおかげで私はお腹に入れていた力を抜く事が出来た。

 そして、これから一緒にがんばって石川を見返せる気がしてきた。



 私は、小松 みどり。

 ハイカラさん、私、がんばるね。

 石川を絶対に見返すから。

だから、一緒にがんばろうね。

 で、でも、今日は、これから、あの先生の授業もあるんだぁ……。

 どうしよう⁉

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