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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
16/75

困った時に、やっぱり助けてくれる人が私にはいる

 【美雪】と約束した日が来た。

 期待と、不安と共に、【みどり】は、【美雪】と技術室に向かい、【阿部】の授業に挑むのだが、

そこで【みどり】に思いがけないトラブルが発生してしまう……。

 美雪と一緒にマーちゃんをモデルとした佐野天明鋳物の鋳型を作る事を約束していた日が来た。

 勢いでああ言ってしまったけれど、美雪が満足する佐野天明鋳物の鋳型を作れるか心配だ。

 そのせいか、いつもなら目覚まし時計代わりのハイカラさんに起こされるまで起きない私が、

起こされる前に起きてしまった。

「おはようございます、みどりさん。珍しいですね」

「ちょっとね……」

 この黒髪で、日本人形のような顔をした、年齢不詳の女性の幽霊が、私の守護霊のハイカラさんだ。

「マーちゃん殿の飼い主殿との約束の日ですね」

「そうだね。不安になっちゃう……」

「大丈夫ですよ。

 お二人なら必ずや、マーちゃん殿を佐野天明鋳物の鋳型で再現出来ると、

私は確信しております!」

「もう、ハイカラさんったら!」

 どこからその自信が来るのか分からないけど、ハイカラさんの自信のおかげで、

私の不安は少し薄れた。

「ありがとう、ハイカラさん」

「いえ、当然の事を申したまでですから!」

「ふふ。じゃあ、朝御飯食べてくるね!」

「お待ちしております!」

 そう、実は四月では出来なかったけれど、今の私はハイカラさんの力を借りなくても、

箸を使えるようになったのだ。

 少し不安は残ってるみたいだけど、ハイカラさんに合格点をいただき、

見事六月からはこうやって食事の時、ハイカラさんは私の部屋で待ってくれるようになった。

 そして、本日も無事にハイカラさんの力を借りず朝食を終え、部屋に戻って着替え、

定刻に家を出た。

 すると、いつも通り美雪が迎えに来てくれた。

「みどりちゃん、おはよう!」

「美雪ちゃん、おはよう」

「みどりちゃん、いよいよ今日だね‼」

「うん。がんばって、マーちゃんを作ろう!」

「お願いしまぁーす!」

 それから六月の晴天の朝、私達は並んで登校した。

 私の右隣にいる美雪は、いつも通りの美雪だった。

 こんな美雪が続くように、今日、私はがんばろうと思う。

「ねっ、ハイカラさん!」

「はい。期待しております」

 私が心で話すと、私の左後ろにいるハイカラさんがそう言ってくれた。

 だから、朝のホームルームを含めた石川の声にも耐えれそうだった。

 そして私の思い通りになり、石川の授業を終え、私の好きな国語、

それから相変わらずの清水の理科が終わり、花田の勧誘を逃れながらの体育を無事に終えた。

 さらに給食では、牛乳とパンの組み合わせだった。

 ここまで上手くいくと私にも謎の自信が満ちてきて、

次の授業で必ず美雪が満足する事が出来る気がしてきた。

 でも、その時だった。

「おいっ、小松‼ 箸を貸せ‼」

「えっ⁉ またなの?」

「あぁっ? 文句あんのか?」

「ありません……」

 私は心の中で心配性の母に謝りながら、その母が入れてくれている割り箸を西園寺に渡した。

 大体、一ヶ月に五回は西園寺は箸を忘れる。

 なので一ヶ月に五本の割りばしの行方が分からなくなる訳で、

ここまでなると母が心配性であろうがなかろうが、母から心配されてしまう。

 しかし、一ヶ月に五回ある事が起こるという事は、どうなんだろう?

 どちらかと言うと、あまり良くない事が。

 これは、上手くいかないという事の前兆なの?

 私は心配になった。

 それでも給食を完食し、いよいよ阿部の技術の時間となった。

 いつものように美雪と技術室へ向かい、いつもと同じ席に美雪と座った。

 そして、いつものように阿部が入ってきた。

「じゃあ、先週作った作品を取りに来い」

 阿部のこの言葉で、各々、自身の作品を教卓まで取りに行く事となった。

 私達は後の方で自分の作品を取りに行った。

「じゃあ、これが小松ので、こっちが、宮本のだな」

「そうです。阿部先生」

「阿部ちゃん、見てて! 今日でこのマーちゃんは生まれ変わるから!」

「それは、楽しみだな! 期待せずに待ってるぞ!」

「もぉーっ‼ 期待しててよ‼」

 美雪は少し怒ったが、その気持ちを作品にぶつけるらしく、さらにはりきっていた。

 その美雪の横で私は美雪を指導する事にした。

「よしっ!  やるぞ‼」

 美雪の言葉で、マーちゃんをモデルにした佐野天明鋳物の鋳型の作成は再開された。

 まずは、美雪の蜜蝋を適度な硬さになるまで温めた。

 それから少し心を痛めながら美雪の作ったマーちゃんを捏ねた。

 そして、美雪のデザインを参考にマーちゃんを作ろうとすると、

やはり、美雪はそのデザイン通りには作れないみたいだった。

 そこを何とか私がフォローしながら、

一時間以上掛けて佐野天明鋳物の鋳型となるマーちゃんは完成した。

「美雪ちゃん、どうかな?」

「すぅーんごく、上手く出来た‼ 本物のマーちゃんの難分の一スケールってやつだよ‼

 ありがとう、みどりちゃん‼」

「どういたしまして!」

「ところで、みどりちゃんはもう出来てるの?」

「私は、あと少しだけ手を加えるだけだよ」

「ねえねえ、見せて!」

「いいよ」

 そして、私は美雪に私の作品を見せた。

 すると、美雪は複雑な顔をした。

「どうしたの? 何か、変?」

「みどりちゃん……。マーちゃんの肉球、足りない‼」

「えっ⁉ どういう事?」

「マーちゃんだけじゃなくて、猫の前足には親指の方に肉球があるの!」

「そ、そうなの⁉ 見てなかった……」

 私は、見落としていた。

 それは、どうやらハイカラさんも同じみたいで、

「私とした事が‼ 申し訳ありません‼」

と、謝ってきた。

 大した事ではないけれど、何となく嫌な感じになった。

 かと言っても、私達はマーちゃんのその肉球の形を知らない……。

 あの前兆がこれだったのかもしれない……。

 私達は困ってしまった。

 でも、そんな私達に救世主が話し掛けてきた。

「今度は私が教えてあげるね!」

「美雪ちゃん⁉」

「ここぐらいは任せて! 毎日、マーちゃんの肉球を触ってるから、大丈夫!」

 美雪は自信を見せた。

 この自信は、信頼出来る。

 そう直観出来た。

 だから、

「じゃあ、お願いします!」

と、私は言って、美雪の指導を受けた。

 残り三〇分を切った阿部の授業で、私は美雪と私の作品を完成させていった。

 そして、最後五分を切った頃、私は美雪のチェックを受けた。

「どうかな?」

「うぅーーん……」

「駄目?」

「んっもう! 最高だよ‼ これぞ、マーちゃんのリアル左前足!」

 美雪は喜んでくれた。

 しかも、自分の作品のように。

 だから、私も嬉しくなった。

 そして、私達は阿部に私達の作品を無事に提出する事が出来た。

 阿部は、美雪の作品を見て、かなり驚いていた。

 その顔を見て、美雪はさらに喜んでいた。

 こうして無事に私達二人のマーちゃんをモデルとした佐野天明鋳物の鋳型は完成した。

 あとは、夏休み前に行われる阿部の授業で砂に埋め込んだその鋳型に溶かした金属を流し込み、

乾燥させ取り出すだけとなった。

「完成が楽しみだね、みどりちゃん!」

「うん、美雪ちゃん!」

 そして、私は私を見守ってくれたハイカラさんを見た。

「楽しみだね、ハイカラさん!」

「はい。みどりさん」

 そうして、私は美雪とハイカラさんと技術室を後にした。

 それから石川の帰りのホームルームを終え、美雪と別れた私はハイカラさんと家路に着いた。

 そして、いつものように家で過ごしたけど、私の気分は珍しく晴れた今日の晴天のように、

晴れ晴れしていた。

「良かったですね、みどりさん」

「うん、ハイカラさん。全部、ハイカラさんのおかげだよ!」

「またまた、御謙遜を! 以前にも申し上げましたが、一番がんばったのは、みどりさんですよ!」

「ここまで導いてくれたのは、ハイカラさんだよ! 明日からも、がんばるから、お願いね!」

「承知しております」

 勉強を終えた私はこんな話をしながら過ごし、また、いつもの日を迎えた。


 私は、小松 みどり。

 美雪ちゃん、良かったね

 それから、いつも、ありがとう!

 これからも、私の友達でいてね。

 うわわ⁉

 嘘でしょ?

 まだ、あの悪しき伝統って、続いてたんだぁ……。

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