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私の守護霊は、ハイカラさん  作者: 紅p
 一学期
1/70

出会いは突然、四月最初の月曜日に訪れた

 【小松 みどり】は、本日、中学三年生になった。

 そんな【みどり】は、いつものように、朝日を遮る為、カーテンを閉めようとする。

 だが、【みどり】の傍で、見知らぬ女性が、【みどり】を見下していたのだ。

 今日は四月最初の月曜日。

 朝日が東の私の部屋の窓から入って来る。

 鬱陶しい日の光だ。

 私は、小松 みどり(こまつ みどり)。

 今日から中学三年生。

 でも、私は中学一年生から学校には通っていない。

 どうせ義務教育であって、行っても、行かなくても同じだ。

 学校に行かなくても私は中学三年生に勝手になった。

 だから、行っても意味がない所には今後も行く気はない。

 と、言う事で、鬱陶しい朝日が入らないように、

いつものようにカーテンを閉める為私はベットから起きようとした。

 でも、出来なかった。

「へっ、はっ⁉ ひぃーーーっ‼」

 私は心臓が止まるかと思った。

 だって、見知らぬ羽織袴姿の、黒髪で、日本人形のような顔をした女性が、私のベットの傍にいて、

私を無言で見下していたのだから。

「な、ななな、何っ⁉ だ、誰っ‼」

 私はその黒髪で、日本人形のような顔をした女性から出来るだけ離れ、壁に背を付け、尋ねた。

「はぁ……。婦女子たる者が何てはしたない……」

「ふ、腐女子⁉ 私は腐女子じゃない‼」

「何をおっしゃってるの? あなたは婦女子でしょうに」

 この黒髪で、日本人形のような顔をした女性は何を言ってるんだ?

 と言うか、何で見ず知らずの女性が私の部屋にいるんだ⁉ 

 私はパニックになり、大声を上げた。

 すると、一階から大きな足音をたてながら私の部屋に人が近づき、私の部屋のドアを開けた。

「どうした、みどり?」

 そして、父と母が、慌てて私の部屋に入って来た。

「お父さん、お母さん、この人、誰?」

「みどり? 何を言ってるんだ?」

「みどりちゃん、誰もいないよ?」

 父と母は、怪訝そうな顔で私を見た。

「いるって‼ ほら、ここに‼」

 私が指を差しても、父と母には分からなかった。

「み、みどり……。偶には朝食でも食べなさい」

「そ、そうよ。落ち着いて、食べてね」

 父と母は、そそくさと部屋を出て行った。

「お父さん、お母さん、どうして見えないの⁉」

「ほほほ。それは私が所謂、幽霊だからです」

「はっ⁉」

「おや? その顔は信じていないようですね。では、証拠をお見せいたしましょう!」

 その黒髪で、日本人形のような顔をした女性は、上品に笑った後、

紺の羽織の懐から扇子を取り出し、ぱっと広げた。

 その扇子の絵柄は薄紫のベースの中に、橙色と薄桃色の花びらが舞っているものだった。

 そして、その黒髪で、日本人形のような顔をした女性は、私にその扇子を見せ、軽く扇いだ。

 すると、私の体は宙に浮いた。

「ひ、ひえぇーーーーっ⁉ どうなってんのぉ⁉」

「ほほほ。どうでしょう?」

「どうでしょうじゃなぁーーーい‼ 下してぇ‼」

「では、学校とやらに行くと約束すれば、下してあげましょう」

「な、何で、そうなるのよ‼」

 私が叫ぶと、何故か、父と母の会話が聞こえてきた。

ーー

「ねえ、お父さん。みどりちゃん、どうしたのかしら」

「うぅん。また、あそこに通わせた方が良いんじゃないか?」

「そうねぇ……。みどりちゃんの為、そうした方が良いのかもね」

                            ーー

 あそことは、心のケアなるものをする所だ。

 父と母曰く、私は心に病気を持っているらしい。

 でも、私はそうは思っていない。

 だって、私は病人じゃない。

 普通の女の子だもの。

 あんな所にはもう、行きたくない‼

「では、学校に行かれては?」

「へっ⁉ 何で、私の考えが分かったの?」

「ほほほ。それは、私があなたの守護霊だからです」

「あなたが私の守護霊⁉ そんな馬鹿な‼」

「馬鹿ではありません‼ 今日から、私があなたの守護霊です‼」

「勝手に決めないでぇーーー‼」

「もう、決めてしまった事ですから! それより、どうなされます?

 その心のなんとかに行かれますか? それとも、学校に行かれますか?」

「どっちも、嫌ァぁーーー‼」

「我儘をおっしゃらないで‼ あなたは病気なんかじゃない‼ 婦女子でしょ‼」

 この黒髪で、日本人形のような顔をした女性の、あなたは病気なんかじゃない、

という言葉を聞いて、私は何かずっと感じていた重しが取れた気がした。

「お婆さん……」

「私は、お婆さんではありません」

「でも、見た目が……」

「まあ、そうでしょうが……。お婆さんは止めてくださる?」

「じゃあ、何て、呼べばいい?」

「そうですね……。ハイカラさんで、お願いできます?」

「ハイカラさん? どういう意味?」

「それは御自分でお調べなさい‼ そんな事より、どうなされるのですか?」

「ハイカラさん……」

 私は怖さの中に、何故か、このハイカラさんを信じたい気持ちが出て来た。

 だから、こう答えた。

「行く……」

「どちらに?」

「学校よ‼ だから、早く下してぇーー‼」

「よろしい! では、下してさしあげましょう」

 そして、私はやっとベットの上に下ろしてもらえた。

 だけど、ここからハイカラさんの厳しい指導が始まった。

「さて、朝食を召し上がって来なさい」

「は、はぁーい」

「はぁーいじゃ、ありません! はい、と言いなさい!」

「はい!」

 色々と口煩いハイカラさんの命令により、私は、リビングに向かわされた。

 そして、本日二回目の両親との顔合わせとなった。

「あっ、みどりちゃん、おはよう。御飯、食べれる?」

「うん。食べる」

 そして、私の前に茶碗に装われた真っ白な御飯と、みそ汁、

それに、千切りキャベツと卵焼きが並べられた。

 だけど私が箸を持った瞬間、

「こらっ! いただきます、と、言いなさい!」

という、ハイカラさんの厳しい声がした。

 私が、そっと後ろを見ると、眉がつり上がり口を尖らせたハイカラさんが私を見ていた。

「は、はは。いただきます……」

 背中から突き刺さる視線をビンビン感じながら、私が御飯を一口食べようとすると、

「何ですか⁉ その箸の持ち方‼」

と、ハイカラさんの言葉が私だけに響いた。

 そんな事を言われなくても分かってる。

 私は、両親のように箸を使えない。

 強いて言えば、箸を×印のように使い、食事を口に入れて使っているだけだ。

「だって……。使えないもの……」

 私が俯いて小声で言うと、ふわっと後ろから風を感じ、

こうするのですよ、と、ハイカラさんの声が聞こえた。

 すると、私は両親のように箸を持つ事が出来た。

「どうなってるの⁉」

「ほほほ。最初は私が協力いたします。慣れれば、ちゃんと使えるようになりますから」

「良く分からないけど、ありがとう」

「いいえ。あなたは変に力を入れすぎているだけですから」

「そうなの?」

「そうですとも。さあ、食事を進めなさい」

「はい、分かりました」

 そんな会話を心でしながら、私は食事を進めた。

 何となくだけど、いつもより綺麗に食べれ美味しかった。

「御馳走様でした」

「みどりちゃん⁉ いつの間に箸をちゃんと使えるようになっていたの?」

「へへ、秘密!」

「みどり、あのな、今日……」

「お父さん、今日、学校に行ってみるね」

「みどり⁉ 今、何て?」

「遅れるから、じゃあね!」

 私は、そそくさとリビングを退出した。

 何となく、悪戯が成功した気がしたから。

「どうなされたのです? 急に、御機嫌になって」

「ハイカラさん、見た? 今のお父さんと、お母さんの顔!」

「驚いていらっしゃいましたね」

「でしょ? キャーッ、嬉しい!」

「そのような事で、嬉しいのですか?」

「ハイカラさん、私の心が読めるんじゃないの?」

「読もうと思えば読めますが。例え読めたとしても、私には分かり兼ねます」

「えぇーーっ⁉ そうなの?」

「まあ、あなたが喜んでくださっているのは、分かりますが……」

「ねえ、ハイカラさん。お願いがる!」

「何なりと」

「みどりって、呼んで!」

「はい?」

「私の守護霊なら、みどりって呼んでよ!」

「意味が分かり兼ねますが?」

「いいから! 呼んでくれなきゃ、学校に行かない‼」

「何と! そうきましたか……。では、みどりさんで、よろしいでしょうか?」

「みどりさん⁉ 何か、恥ずかしい‼」

「では、何と? みどり様とかの方が宜しくて?」

「いいえ! みどりさんで、お願い‼」

「承知しました。みどりさん」

「はい、ハイカラさん。じゃあ、準備するね!」

 そして、私は数年ぶりに学校に行く支度をし、

ここから背後霊のような守護霊のハイカラさんとの奇妙な生活が始まった。


 私は、小松 みどり。

 勢い余って、あんな事を言っちゃったけど、大丈夫かな?

 それにしても、ハイカラさんって、何者なのかな?

 うーん……、前途多難な気がしてきた……。

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