大好きな温もり
「うぅ…、うぅん……?」
一希は目を覚ますとそこはベッドの上何故ここにいるのかという疑問より、ベッドの心地よさに耽ってしまう。
【おはようございます。天野一希様】
「ひっ…!?」
突然のピクセルの声に一希は思わずびっくりしてしまう。ピクセルは小型ゴーレムを通して一希に話しかけていた。
【まだ安静にしてください。あなたの体調は万全ではありません】
「えっと…、誰…?」
【申し遅れました。私は人工知能ピクセル。今、マスターが戻ります】
「マスター…?」
【あなたのよく知る方です】
するとドアが開き、輝真が入ってくる。一希は目を見開き、輝真も気がついた彼女を見て、目を見開く。
「テマ……?」
「一希…、気がついたか…!」
一希は少し唖然としていたが、目に涙を溜めてベッドから飛び出した。
「テマ!!」
「おぉっと!?」
しかし、右足が欠如しているため、一希は転倒しそうになり、輝真が即座に受け止めた。一希はそのまま輝真に抱きつく。
「テマ…!テマぁ…!会いたかったよぉ…!」
「お、おう…。気がついてホントよかった」
輝真は一希を抱きしめ、彼女が落ち着くまで待った。ローウェルとピクセルは黙ってその光景を見守っていた。
◇
「落ち着いたか?」
「うん…」
輝真は一希をベッドに座らせ、意を決して彼女にあの時のことを聞く。
「一希、本当はこんなこと聞きたくないんだが、あの時…、お前達に何があったか教えてくれないか?」
一希は少し間を置くと、これまでの経緯を語りだした。
「テマの誕生日パーティーをしてしばらくたったときかな…。帰ってるときに後をつけられてる気がして、それは叶や玲衣達もそうだったみたい。ちょっと気味が悪かったから、7人で行動することにしたんだ。そしたらガラの悪い集団に囲まれて、僕達を拐おうしたんだ。玲衣が何人か倒したんだけど、流石に多勢に無勢だったから皆捕まって、そこからは…地獄だったよ…」
彼女達はガラの悪い集団に捕まり、毎日が陵辱と暴行の日々で、多くの男達の相手をさせられ、時には売春もさせられたという。
「しまいには僕達が通っていた学校の生徒やクラスメイト、さらには先生まで参加して…、もう、何もかも信じられないよ……」
手で顔を覆い、泣きじゃくる一希に輝真は拳を握りしめた。まさか学校の生徒だけでなく、教師までも参加するという外道っぷりに激しい怒りと呆れの感情が渦巻いていた。しかし今は目の前にいる彼女のケアをするのが先だと気持ちを切り替え、優しく頭を撫でる。
「辛かったな……。もう大丈夫だから安心してくれ。それにここは安全だ。お前を傷つけたりはしない」
輝真の言葉に一希は嗚咽しながら頷く。ローウェルは黙って聞いていたが、彼女もまた怒りを感じていた。
「……ねぇテマ」
「なんだ?」
「その……、ありがとね。助けてくれて」
「……気にするな」
◇
◇ガレット帝国◇
ガレット帝国の皇帝オレンスはミエイルからの報告を聞いて、目を見開いた。
「何?廃村の盗賊が全滅だと?」
「はい、オーガが反逆して散々荒らされた挙げ句、全員四肢を食いちぎられたところをたまたま訪れた冒険者にオーガは討伐され、ラビリーの町の冒険者ギルドに引き渡されたとのことです」
「どういうことだ?確かあそこにはオーガを操るマインドストーンを持たせた部下がいたはず、奴はどうなった?」
「盗賊達と同様に四肢を食いちぎられました。マインドストーンは砕かれており、精神が崩壊していて会話もまともにできません」
「うーむ…、まあいい、そいつはもう要らん。代わりはいくらでもいるからな。おそらくマインドストーンを落として踏んでしまうドジをしたんだろうな。馬鹿な奴だ」
オレンスは廃村の盗賊と繋がりがあったそうだ。だが、盗賊が全滅した原因が自分が役に立たないと捨てた輝真の仕業であることは知るよしもなかった。
◇
◇隠れ家◇
輝真は一希に隠れ家の案内をしていた。彼女は右足が欠如しているため、輝真に肩を貸してもらっていた。そして一通り案内を終えるとリビングで食事を取る。
「ふぇぇ…、久し振りのまともな食事だぁ…。えっぐぅ…」
一希はまともな食事に思わず涙を流し、輝真はそんな彼女を見て、もしかしたらあとの6人もこんな感じになってるんじゃないかと心配していた。すると一希が欠損した右足見せて問いかけてくる。
「この足、気になる?」
「……」
「これね、逆らったらこうなるっていう見せしめで切り落とされちゃって、それで切られた僕の足はオーガっていうモンスターの餌に…」
「もういい一希、言わなくていい」
一希は輝真に説明したが、彼はすかさず制止する。一希はバツが悪そうに俯くが、すぐに話題を変える。
「テマはどうやってこの世界に来たの?僕達がここが異世界ってわかったのはテマにお別れメッセージを送った後だったんだ」
「俺は、クラス全員が転移させられた。ガレット帝国っていう連中の仕業だ」
「ガレット帝国…、そういえば僕達がバラバラな場所に売られる前にそこに閉じ込められてたっけ…。えっ?ちょっと待って、クラス全員ということは僕達を犯した人達も…!?」
一希は自分達を陵辱した者達が、この世界に来ていることを知り、青ざめる。
「大丈夫、俺はアイツらから死んだと認識されている。役立たずジョブと言われて城から川に放り込まれたからな」
「テマも結構苦労していたんだね…」
「そんでローウェルと名乗る天使と出会い、かつての転移者が残した隠れ家を使わせてもらってる」
輝真は十字架の首飾りのローウェルを一希の前に出す。
『初めまして一希さん、私はローウェル。この世界を管理する天使です』
「あ、どうも…」
ローウェルは一希に自己紹介をするが、一希は首飾りが喋っていることに驚きと困惑が隠せず、軽く引いていた。
「そしてこいつはピクセル。かつての転移者が残した人工知能で、これはアバターで本体はこの隠れ家の地下の最深部にある」
輝馬はロボットの姿をしたピクセルを一希の前に出し、一希は苦笑いをする。輝真は今やっていることを彼女に説明する。
「……それで今はそのインフィニットリングを集めている。7つ集めれば元の世界に帰ることも可能らしい」
「そ、そうなんだ…」
輝真は元の帰れることを伝えるが、一希はなんだか不安げな様子だった。輝真は一瞬疑問に思ったが話を続ける。
「…とまぁ、こんな感じだ。とにかく今日はもう休もう。一希、風呂は1人で入れるか?」
「う、うん、取っ手とかあったからなんとかいけるかも」
輝真は右足がない一希が1人でなんとかできるか心配だったがどうやら大丈夫そうだった。
◇
「……」
輝真は自室のベッドで寝ていると違和感を感じて目を覚ます。そこにはモゾモゾと何かが動いており、毛布を捲るとそこには生まれたままの一希がいた。
「あ…、起きちゃった?」
「一希…なんで…」
「怖いんだ。捕まっていた時の夢を見ちゃって……、それでテマのところに来ちゃった」
「一希…」
「それとね、助けてくれた礼も兼ねて…」
そう言うと一希は輝真の口唇を奪う。そのまま舌を彼の口に入れて絡ませる。
「んっ…、ぷはぁ…」
そして唇を離すと一希は妖艶な笑みを浮かべる。
「テマはそのままじっとしてていいよ。僕がしてあげるから」
そして一希は輝真を激しく求めた。
◇
翌朝、輝真は目を覚ますと、生まれたままの一希が彼に抱きついて寝ていた。すると一希も目を覚ました。
「おはよう、テマ」
「あぁ、おは…んむぅっ…!?」
輝真は一希に挨拶しようとした瞬間、彼女に唇を奪われる。突然のことで輝真は困惑する。
「んっ…、おはようのキス…、1回やってみたかったんだぁ…」
一希はそう言いながら幸せそうな笑みを浮かべる。輝真が起き上がろうとすると、一希が抱きついて阻止する。
「……一希?」
「もうちょっとこのままでいさせて…」
「……」
輝真はしょうがないなと言いたげに一希を抱きしめ、そのままにしていると一希が胸を押し付けてあからさまに誘ってきた。輝真は柔らかい感触の誘惑に負けて相手をしていたら、昼近くになっていた。
◇
(やっちまった)
輝真は椅子に座り、悩んでいた。一希が求めてきたとはいえ、欲に負けてついつい一線を越えてしまった。すると首にかかっているローウェルが声をかける。
『輝真さん、悩んでいますね?』
「な、なんだよ…?」
『あなたは一希さんとより深い関係になって他の6人に悪いと思っているのでしょう?大丈夫です。この世界は一夫多妻はOKですから』
「何が言いたい…?」
『要するに7人みんなもらっちゃえばいいってことですよ』
「そ、そんなうまい話が…!」
『いいんですよ、あなたは私の依頼を引き受けてくれた。これくらいの褒美は妥当です』
「元の世界の彼女達の家族のこともあるし…」
『なら1つ案があります。まずインフィニットリングを7つ全て集め、この世界と輝真さんの世界を繋いで自由に行き来できるようにすればいいんです。彼女達は好きなときにご家族に会える。この世界で彼女達は輝真さんと結ばれ、輝真さんは悩まずに済む。みんな幸せウハウハ。どうです?win winじゃありません?』
ローウェルの提案に輝真が困惑していると杖をついた一希が入ってくる。
「なるほどね、その手があるんだ…」
「おい一希、今の本気でいいと思ってるのか!?」
なんと一希はローウェルの提案に乗り気のようだった。輝真が困惑していると一希は話を続ける。
「確かに家族には会いたい。でも元の世界に帰っても不安が残るだけだよ。またいつ誘拐されるか怖くて多分まともに生活できない。それに参加していた生徒の一部は僕達を犯しているところの動画や写真を撮ってた。先生も信用ならない。それで弱みを握られてまた同じ目に遭いそうで…」
一希は体を震わせながらそう話す。輝真は彼女の気持ちを考えれば無理もないと思った。確かに彼女の言う通りだ。もし帰ることができても元通りとはいかないだろう。それにクラスメイトの一部は彼女達が凌辱されているところを録画していると言っていた。それで弱みを握られたり、バラ撒かれたりでもしたらどうなるか想像すらしたくない。輝真はだから昨日少し不安げだったのかと納得する。
「叶達がここに来たら、僕が説得するから…ね?」
輝真はしばらく黙り込んだ。時々唸り声を上げながら深く考え込んでいた。そして出した答えは……
「……各親にもどう説得するか、考えておかないとな」
結局折れた輝真であった。




