悪行のツケ
ついに一希を見つけることができた輝真だが、彼女の状態を見て愕然とし、同時に盗賊達に対する激しい憎悪が溢れ出てきた。そんな時、ふと案が思い浮かび、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。ローウェルはそんな輝真の不穏な雰囲気を感じ取る。
『輝真さん…?』
ローウェルが声をかけると、輝真は彼女に問いかけてきた。
「なぁ、ローウェル、盗賊ってギルドに引き渡せば懸賞金が貰えるんだよな?」
『……?そうですが…?』
【マスター、盗賊は殺しても罪には問われません。首を切断してそれをギルドに引き渡せば懸賞金が貰えます】
「……生きたまま引き渡せばどうなる?」
『奴隷として売られたり、実験用モルモットとして使い潰されるのがほとんどですね。……なんでそんなことを聞くんですか?』
ローウェルがそう聞くと輝真は頭を掻きながら、悪そうな顔で答える。
「なーに、一希をこんな目に遭わせたんだ。それにこいつらはそれなりに悪行を重ねているだろう。ツケを払わせてやろうと思ってな…。あ、ちなみに言っとくが殺しはしない。俺は流石にこういうのは気が引けるからな」
『………何をするつもりですか』
すると輝真は先程一希を連れて行こうとしていた盗賊の持ち物を物色し始めた。どさくさに紛れて金品などをくすねており、ローウェルは呆れつつも輝真のやりたいようにさせていた。すると、宝石のようなものを見つける。
「なんだこれは?」
『あぁー、これでオーガを操っていたんですね』
「なんだこれは?」
『これはマインドストーンといって、特殊な周波数を発する石で、生き物の思考を狂わせる効果があります。それを加工して操っていたんでしょう。とはいえ、モンスターを操るのは法律上禁止されています。モンスターを襲わせてその隙に金品などを盗む犯罪が実際にありますからね』
輝真はそれを聞いてそういえば手記にもそういうのがあったと心の中で呟く。マインドストーンをしばらく見つめると、懐の中にしまう。
「オーガと奴らが起きる前にさっさと済ますか…」
『輝真さん、何がしたいんですか?』
輝真はまず、一希を解放し、その小屋の中に盗賊達を放り込んでいく。そうしているうちに徐々に夜が明けていく。輝真は急ぐかのように作業スピードを上げる。そして最後にオーガを放り込むと扉を閉めた。
「これでよし…。…一希、もう大丈夫だぞ…。」
輝真は一希を担ぎ、クリエイトで即席の背負子を作成すると、一希を落ちないように固定し、背負うとマナンストライカーに跨り、隠れ家に向かって走り出した。
◇
「こちら、報酬となります。廃村の盗賊全員の捕縛、感謝します」
輝真はラビリーの街に戻り、冒険者ギルドに報告し、盗賊達を引き渡して報酬を受け取った。かなりの人数であったため、予想よりかなりの大金が手に入った。輝真は大金の入った袋を嬉しそうに担ぎながらギルドを出ていった。するとギルドの職員達が話し始める。
「しかし、盗賊とはいえ、少し哀れですね」
「えぇ…、寝込みをオーガに襲われてあのざまにされるなんて、なんか同情しちゃったわ。」
職員達はそう話しながら盗賊達の方を見る。そこには四肢が全て無くなった盗賊達が絶望の表情を浮かべながら呻いている姿があった。
「ところで、どうしてオーガは手足だけを食べたのかしら?」
「手足が好みな個体だったんじゃない?」
ギルドを出た輝真は上手くいったぜと言いたげにニヤリと笑みを浮かべていた。
(まさか自ら手を下さずにオーガを利用して盗賊達にこんな制裁をしてしまうとは…、人間は時として恐ろしいことを考えますね…)
ローウェルは輝真が自分で直接手を下さず、オーガの特性を利用して盗賊達に制裁をしたことに改めて人間の狡猾さを恐ろしく思った。それは今から少し遡る。
◇数時間前◇
輝真は一希を隠れ家まで運び、傷の手当をして、ベッドに寝かせると冒険者として活動する格好に着替え、一希の看病をピクセルに任せ、マナンストライカーに乗って再び廃村へ向かう。ドローンからの映像を見て盗賊とオーガが目を覚ましてないか気にしながら。
『あの、輝真さん?一体何を考えているのですか』
「…………」
ローウェルがそう聞くが輝真は何も言わず、まるで急いでいるかのようにマナンストライカーを走らせる。そして廃村に着くと、盗賊とオーガを閉じ込めた小屋にいき、盗賊からくすねたマインドストーンを取り出す。
「確か手記によればこう使うんだっけ…」
輝真はマイクを扱うかのようにマインドストーンに向かって声を出した。
「〝目の前にいる人間達の手足だけを喰え〟」
すると次の瞬間、咀嚼音と盗賊達の悲鳴が響き渡る。
「ぎゃあああああああああ!!!」
「嫌だアアアア!!助けてええええ!!」
「痛いよママァァァァァァ!!!」
ローウェルは小屋の中はおぞましい光景が広がっていることを察した。しかし輝真は盗賊達の悲鳴を聞いて顔を顰める。
「助けて?嫌だ?一希をあんな目に遭わせておいて何言ってんだ?バカなの?お前らだって略奪だの色々やっておいて調子いいこと言ってんじゃねえよ」
そのまま盗賊達の悲鳴を聞き流しながら近くに転がっていた岩に腰掛ける。しばらくすると咀嚼音が止む。
「終わったか…」
輝真はゆっくりと立ち上がると小屋の中に入る。そこには手足のない盗賊達が気を失っていたり、精神が崩壊してケタケタと笑っていたりしていた。
「よし、お前はもう用済みな」
輝真はオーガの頭に躊躇なく剣で突き刺し、討伐する。そしてマインドストーンも足で踏みつけて粉砕した。
「さて、ギルドの職員でも呼んでこいつらを運ぶのを手伝ってもらうか」
『………』
輝真はその場を後にし、冒険者ギルドへと向かって行った。そして現在に戻る。
◇
盗賊達に報復を終えた輝真は隠れ家に帰宅し、カオスギアを通してピクセルに話しかける。
「ピクセル、一希はどうだ?」
【まだ眠っています】
部屋に入ると、包帯を巻かれた一希を小型ゴーレム状態のピクセルが看病していた。
【栄養不足に陥っていましたので栄養剤を注射しました。今のところは安定してます。しばらく経てば、目を覚ますでしょう】
「そうか…」
輝真は一希の横に座り、彼女の様子を見ながら今後のことを考えていた。
(……例え全員連れ戻して帰れたとしても、あいつらは多分大きなトラウマを抱えているだろう…。あんな目に遭わされれば、そうなっても仕方ないし、元の世界に帰れたとしても、彼女達はやっていけるのだろうか…)
輝真は一希を保護することは成功した。しかし、それまで彼女は散々辱しめを受けている。これは大きなトラウマになるだろう。後の6人もそうかもしれない。全員例え保護をして、元の世界に帰れたとしても、彼女達は今までと同じ生き方は出来ないだろう。
輝真は頭を掻きながら考えるが、こればかりは本人次第で彼女達がこれからどう生きていくかは彼女達自身の問題なのだ。
(まあ、その辺は相談しながら解決していくか…)
輝真はふと急に眠くなってきた。今思えば昨晩から一睡もしてないし、色々と忙しかったので疲労困憊だ。
(ちょっと寝るか…)
流石に眠気には勝てず、輝真は座ったままの状態で眠りに落ちていった。そしてローウェルは不機嫌そうに近くにいる誰かに話しかける。
『それで、なんで悪魔であるあなたがここにいるんですか?』
ローウェルはがそう言うと物陰から悪魔ラーペが姿を現した。ラーペはヘラヘラと笑っており、何やらご機嫌な様子だった。
「いやぁ、盗賊への制裁は見事なものだった!実に愉快だった!泊崎輝真、その容赦のなさは中々のものだな!面白いものを見せてもらった!」
ラーペは大げさに拍手をする。どうやら輝真が盗賊に対して行った制裁を称賛しているようだった。それを聞いたローウェルは呆れたように溜息をつく。
『相変わらず悪魔はこういうのが好きなんですね』
「なんとでも言ってろ天使。それにあの盗賊らも略奪だの色々していたから妥当だろ」
『あなたが彼に興味を持った理由がわかりました。輝真さんの内なる黒い野心が目的なのでしょう?』
「フフフッ」
ローウェルの指摘にラーペは不敵に笑う。この悪魔は輝真の容赦のない黒い野心が気に入ったようだ。
「これからこいつがどんな制裁をするか楽しみだな」
『言っておきますが、彼はあなたの思うようには動いてくれませんよ』
「その言葉、お前にもそっくりそのまま言い返してやるよ」
ラーペはそう言って笑いながら姿を消した。ローウェルは眠っている輝真を複雑そうに見つめる。そしてこのまま黒い野心が大きくならないことを祈った。




