僕と私の学校紹介 “最終版”
学校が好きでは無い、全ての方へ。
僕と私の学校紹介 “最終版”
これから、僕らの、私達の、学校紹介をします。
ですがこれは“最終版”です。
①全てが温泉小学校
僕らの学校の自慢は、何と言っても、町の地下から豊富に溢れる温泉を利用した温泉設備です。
あまりに沢山の温泉が湧くので、皆で案を出し合いました。
まず、通学路の全てに泳げる温泉プールを設置しました。
お陰で僕らは、真冬でも水着で通学路をポカポカ温まりながらスイスイ泳いで通学できます。
教室の机の下にはポカポカの足湯が完備、芯まで温まります。
給食もありますが、小腹が空いたら、温泉卵がいつでも食べられます。
これらの施設の一部は、町の人達も自由に利用できます。
とってもポカポカ気持ちが良いので、一度僕らの学校に来てみませんか?
追記:
近年、温泉の湧き出る量が、とても少なくなりました。
設備は全て停止しており、現在は使われておりません。
僕らは今、歩いて登校しています。
足湯もありません。
温泉卵もありませんし、町の人も利用できません。
温泉は限りある資源で、使い過ぎが原因だという人もいますが、詳しい理由は解明されていません。
現在調査中です。
②海の中の小学校
私達の学校の自慢は、何と言っても、海の中に作られている、というところです。
もともと豊かな魚介類の生息地で有名な地域だったので、思い切って海中に学校を作りました。
上に向かって建てる学校が、逆に、海面から下に向かって建っているような構造です。
窓は開けられませんが、窓の外を見ると。
常に色んな種類のキラキラ光る魚の群れを、好きなだけ観察できます。
また、海底に色とりどりのサンゴがひしめき合って、どこまでも続く草原のようです。
昼休みに、釣り、をすると、釣った魚は家庭科調理室で料理する事も、自宅に持って帰る事も出来ます。
青く綺麗で水産資源豊富な私達の学校、一度遊びに来てみませんか?
追記:
近年、魚の数が激減しました。
窓の外に、魚は見えません。
代わりに様々なプラスチックゴミや魚の死骸が漂っているのが見えます。
サンゴは白く変色して、死んでいるそうです。
海水温が上がって、海に様々な変化が起こっているらしいのですが、それだけではないように思います。
昼休みにやっと釣れた魚を捌いてみると、お腹の中から大量のプラスチックが出て来ました。
現在詳しい調査を行っていますが。
私達にも何かできる事はないか、クラスで話し合っているところです。
③ツリーハウス小学校
僕らの学校の自慢は、何と言っても、学校が豊かな森林の上に作られているという事です。
どこまでも広がる青々とした森。
大きな木と木を繋いで、教室も、職員室も、理科室や音楽室なんかも、全て木の上に作られ、渡り廊下は木と木を渡す吊り橋で出来ています。
自然を感じられるし、空気も、森から湧き出る水も、すごく美味しいです。
休み時間は木によじ登って遊べるし、昆虫は捕まえ放題、時期になれば果物だって収穫できます。
木漏れ日の下で小鳥の囀りを聞きながら読書、お昼寝もお勧めですよ。
一度、僕達のツリーハウス小学校に遊びに来てみませんか?
追記:
近年、森林伐採が進み、近くの山で土砂崩れが多発、一部学校は使えなくなっています。
近隣には工場もできました。
空気は・・・以前のように美味しくありません。
開発はどんどん進み、除草剤が撒かれた地域が増え、多くの草木が枯れました。
昆虫を見掛ける機会も減り、虫の種類も少なく、小鳥の囀りも聞けません。
果物はほとんど実りませんし、せっかく実っても、台風などが来ると、守る木が周りに無いので簡単に吹き飛ばされて落ちてしまいます。
豊富に湧き出ていた森の湧き水は、枯渇しました。
僅かに出ている水も、水質調査に通らなかったそうで、飲んだらいけないそうです。
読書やお昼寝はできますが、光化学スモッグ警報が出たら、すぐに屋内に入って窓をピッチリ締めなければいけません。
僕らの学校へ遊びに来ることは、あまりお勧めできません。
これらは『僕と私の学校紹介“最終版”』に掲載された一部です。
現在、廃校となっている学校もありますので、ご訪問の際は、どうぞご注意下さい。
編集部より
自分の身の回りを見ると。
皆が上手く生きているように見え、息苦しい。
なかなかついて行けずに、下を向いてしまう。
けれど、私達は大きな地球の一員で。
その地球さへ、上手くは回っていない。