第38話 昨日ぶりの
「おはようございます、ソフィア様」
「おはよう、クラリス」
翌朝。
クラリスが大窓のカーテンを開けると、気持ちの良い陽光が身体を包み込む。
起きて早々、身体に仕事スイッチが入りそうになったが、ここが実家ではなくエルメルである事に気づく。
とりあえず、日課である朝のハナコもふもふを堪能するソフィア。
「朝ごはん、ここに置いておきますね」
「ありがとうー、クラリス」
「それからアラン様からの伝言ですが」
「アラン様からっ」
まるで、長らく離れ離れだった恋人から便りを貰ったような勢いで上半身を起こすソフィア。
「身体が回復したなら今日の午後から早速、精霊魔法の制御の練習をしようと思うが、どうか。無理はしないで大丈夫だ、とのことです」
ソフィアがその伝言に対しての返答は、言うまでもなかった。
◇◇◇
「身体は本当に大丈夫か? 無理はしていないか?」
午後、屋敷の広い庭にて。
アランに聞かれたソフィアは元気の良い声を返す。
「はい、大丈夫です。美味しいものを食べて、ぐっすりと寝て、ハナコにもパワーを貰いましたし」
文字通りハナコから精霊力を貰ったことが大きく回復に繋がっているのだが、その事にアランは気づかない。
「なるほど。リフレッシュが上手いな、ソフィアは」
「えへへ……」
アランに褒められて、もっと元気になるソフィアであった。
「では、本題に入る。伝言でも伝えた通り、今日から精霊魔法の制御について鍛錬を行なっていく。どの場所にどのくらいの出力で、どのくらいの量の力を発現させるのか……実のところ、この制御の部分が一番難しい」
「う……私に出来るでしょうか……」
ソフィアの瞳が不安げに揺れる。
そんな彼女の頭に、アランは手を乗せぽんぽんと撫でた。
「ソフィアなら大丈夫だ。無論、反復練習が必要となってくるが、君ほどの才能なら、すぐに習得する出来るだろう」
心強くも優しい言葉に、ソフィアの口元がきゅっと引き締まる。
胸の前で拳をギュッと握って、ソフィアは言った。
「やってみないとわかりませんが……出来る限り、頑張ります」
「良い心がけだ」
満足気な言葉と共にもう一度、アランはソフィアの頭を撫でた。
気持ちよさそうにするソフィアがハッと目を見開く。
「あの、つかぬ事をお聞きいたしますが……」
「なんだ?」
「私の鍛錬に、時間を使い切りで大丈夫なのでしょうか……? とてもじゃないですが、アラン様にそこまでお時間のあるようには思えず……」
「……鋭いところに気づいたな」
バツの悪そうに頬を掻きながら、アランは言う。
「本当であれば俺が毎日つきっきりで精霊魔法を教えたいところだが……流石にそこまでの時間は確保出来なかった、申し訳ない」
「そんな、謝らないでください。軍務大臣さんですもの、むしろ時間がある方がおかしいですよ」
「そう言って貰えると助かる。だが安心してくれ。代わりに、優秀な精霊魔法の使い手を手配した」
アランがそう言うと、黒いスーツを着こなした青みがかかった濃い髪色の男がどこからともなく現れた。
「モーリスさんっ……!?」
「昨日ぶりです、ソフィア様」
額の上から伸びた鋭い一本ツノ、腰にはふさふさな尻尾。
ユニコーンのモーリスは眼鏡を持ち上げた後、深々と頭を下げた。
【報告】
モーリスの性格を鑑みて外見を一部変更しました。
髪色 ブロンド→青みがかかった黒髪
眼鏡なし→眼鏡あり
加えて眼鏡被りが発生するため、アランは眼鏡なしに変更いたしました。
(書いててそこまで眼鏡をかけているキャラっぽくもなかったため)
恐れ入りますが、ご認識の程何卒よろしくお願いいたします。




