明日はどーん
明日はどーん
と、天気予報のお姉さんが突然、突拍子もない爆発音を口から出したので、俺は一人焼肉をしていた手を止め、テレビ画面を見た。
お姉さんは『どーん』と言ったあとの『n』の形の口の形のままおし黙り、挑発するような笑みを浮かべて視聴者を見つめ返している。
俺はとても不安な気持ちになった。
明日はどーなるんだ? どーん、と何が起きるんだ?
きっと視聴者からの苦情が殺到しているだろう。俺と同じく『とても不安な気持ちになった。どうしてくれる』、あるいは『子供が泣き出してパニックになっ』ている家庭もあるかもしれない。苦情ばかりではなく、中には『女神殿、どうか続きをお願いいたす』みたいなマニアの懇願も混じっていることだろう。
お姉さんは3分43秒、黙り続けた。正確な筋による計算に基づいている。その間ずっとまばたきもせずにテレビ画面の右から左、左から右と、ゆっくりと顔を動かし続ける。
俺は彼女の言葉を待った。
固唾を飲んで待ち続けた。
これ以上待たされたらホットプレート上の上ミノが黒焦げになってしまうというところで、ようやくお姉さんはまた喋り出した。
『……と、地球が滅亡しちゃいますよ~』
いや待て。預言者かなんかなのか、このお姉さん? いや結構人気のお天気お姉さんなのだが? そう思っていると、お姉さんが可愛く舌をペロッと出した。
『みなさん、今日はエイプリルフールです。騙されましたか?』
え。
今日は四月二日なんだが……?