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第11話 頼りになる友

「眠い……眠すぎる……」


 翌日、いつも通り学園に来た僕は、何とか睡魔との戦いに勝利し、昼休みを迎えることが出来た。そんな僕の元に、今日も元気なアミィが、大きなポニーテールを揺らしながら歩み寄ってきた。


「随分と酷い顔ねぇ」


 酷い顔とは、なかなか酷い事を言うなとは思ったが、そう言われても仕方がないだろう。夜中に目が覚めてから一切眠れず、そのまま今に至っているからな。疲れが全く取れていないんだろう。


「あまり寝てなくてな」

「そうなの? ちゃんと私みたいにぐっすり寝ないと!」

「ぐっすり寝すぎて、頻繁に遅刻ギリギリに登校するアミィはもっと反省しろ」

「私はいいんだも~ん」


 何が良いんだろうか。貴族の娘として、遅刻ギリギリじゃなくて余裕をもって登校してほしいものだ。以前スラム街の事を聞いた日は、珍しく普通に登校していたが、たまに本当に遅刻するしな……。


「とりあえずごはんにしよ~よ。お腹すいた~」

「ああ。今日は食堂に行くか。前に約束したパフェの件もあるしな」

「お、さっすが~ちゃんと覚えてた!」

「約束は守る主義だからね」

「や~んマルク様かっこいい~ほれちゃ~う」


 うっとりしたような表情で身体をくねくねさせるアミィ。どうみても芝居だろそれ……。


「やっぱりなしにするか」

「ちょ、ウソだから! さあ、早く行くよ!」


 アミィは慌てたように早口でまくし立てながら、僕の手を強く引っ張って食堂へと向かう。そんなにパフェが食べたいなら、余計な事を言わなければいいのになと思ってしまうのは僕だけだろうか。



 ****



「ふ~ごちそうさまでしたっ! やっぱり食堂のデラックスパフェは格別ね~」

「それはよかったよ」


 僕達の前には、見事に綺麗になった皿が並んでいる。とはいっても、アミィの皿の数は僕よりも倍くらいはある。一体この細い身体のどこに入り、どこに吸収されるのか気になる。やっぱりその豊満な胸に行くのだろうか?


「それで、例の所には行ったの?」

「ああ。レナを連れていってきたよ」

「そう。とりあえず無事に帰ってきてくれて安心だわ。それで、どうだった? まあ門前払いされたのが関の山だと思うけど。それで上手くいかなかったからどうしよう~って考えてたら、眠れなくなったんでしょ?」


 なにか当てずっぽうな事を言うと思っていたが、想像以上に現実味のある予想で少し驚いてしまった。


 以前も思った事だが、知り合ってから一緒にいた時間が長いと、僕の事をちゃんと理解して予想をしてくるからタチが悪い。


「診てもらえたよ。傷に塗る薬と、栄養失調を治す飲み薬を貰った」

「え、うっそ!?」

「本当だって。それにまた何かあったら来いとも言われたよ」


 身を乗り出して驚くアミィの勢いに、ややたじろぎながら、僕は更に言葉を続けると、アミィは席に座り直してから、何故か腹を抱えて笑い出した。


「あはははっ! まさか診てもらうどころか気に入られるなんて思ってもなかったわ! あははっ!!」

「そんなに爆笑するような事か?」

「だ、だって……! そんな展開は絶対ないって思ってたから! いや~流石はマルク・ジュラバル! ほんとあんたという娯楽といると、人生退屈しないわ~!」

「それ絶対褒めてないだろ」

「そんな事無いわよ?」

「視線が泳いでるからな!」

「てへっ」


 全く、アミィは僕の事を何だと思っているんだ。気兼ねなく話せるから一緒にいてくれるのはありがたいが、たまに彼女の事がよくわからなくなる。


「あーお腹痛い……えっと、じゃあなんで寝れない程悩んでたの? そんなに酷かった感じ?」

「いや、レナに関しては問題ないよ。適切に治療すれば治る。ただ……初めてスラム街の状況や、そこに暮らす民を見て、その悲惨さを知って……心が痛んだ。なんとかしたい……救いたい。彼らもこの国の民……いや、この国の宝だから」


 目尻を擦りながらまだ小さく笑い続けるアミィとは対照的に、僕は真面目に悩んでいる事を話すと、釣られるようにアミィも真面目な表情になった。


「いいんじゃない? 王族として民を守るのは良い事だと思うし」

「やはりアミィもそう思うよな!?」

「ちょ、そんな身を乗り出さないの。私は権力なんかで偉そうにしたってお腹は膨れないんだから、民を大切にして国を豊かにした方が、権力者も民もお腹が膨れて幸せだよねって思ってるだけだから」


 少し考え方は変わっているが、アミィも民に幸せになってもらいたいと思っているという事だろう。


 ……やはりこの国の在り方は間違ってる。アミィの言葉を借りるなら、権力のある人間や極一部の民だけがお腹がいっぱいで幸せで、それ以外の民はいつもお腹が空いて不幸だなんて……。


「私は馬鹿だからどうすればいいかはわからないけどさ、話を聞くくらいは出来るし。それに、馬鹿じゃないと浮かばないような発想が出てくるかもだし!」

「ありがとう。頼りにしているよ」


 馬鹿とかそんなの関係ない。僕のために話を聞いてくれる人がいて、協力してくれる人がいる。そう思えるだけでも、僕にはとても救いになる。


 いつになるかはわからない。けど、この国で苦しんでいる民を一人でも多く救いたい。僕は改めてそう強く思った――

ここまで読んでいただきありがとうございました。次のお話はこのあとすぐに投稿します。


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