その87 遊園地で 1番目
ようやっと新章突入。
今回は、どんな話になるのだろうか。
月は変わって7月。
季節も変わって夏。
長かった梅雨が明け、期末試験も終了し、本日より相馬学園は、夏休みに入ろうとしていた。
「いやぁ〜ははははは……」
「どうしたの?吉行」
えらく渇いた笑いをしていた吉行に、健太は声をかける。
力なく健太に笑いかけて、吉行は言った。
「見てみろよ。俺の成績を」
言いながら、自らの成績表を、吉行は見せた。
そこに書かれていたのは、
「うわぁ……」
「今どき珍しいぜ……評価2が三つとか」
「体育と情報は5だけど、他はほとんど3か2……もう少し頑張ろうよ……」
成績表には、過酷な現実が写し出されていた。
「何だ吉行。その成績は情けないな」
「何だと……なら、お前の成績見せてみろ〜!!」
(バシッ)
吉行は、大貴の右手にあった成績表を奪いとる。
そして、すぐにショックを受けた。
その間、わずかに2秒。
「……俺、旅に出てもいいかな?」
「……止めやしないけどな」
何故かかなりノリがいい大貴。
「……」
「どうしたの?かなえさん」
「……どうしても、英語だけは苦手だな……」
かなえはどうやら英語が苦手のようだ。
「私はオール3だったわよ」
「……自慢することじゃないな、それ」
美奈の自信ありげな言葉に対して、大貴はそう突っ込んでいた。
「……う〜」
「……まさか、マコも?」
「いや、なんだか嬉しくてね〜」
「どれどれ……お〜」
健太は、マコの成績表を見る。
すると、ほとんどの科目が4以上だった。
「マコ、凄いね。仕事とかあって大変なのに」
「えへへ〜」
褒められて、素直に喜ぶマコ。
そんな様子を見て、かなえは少し嫉妬していた。
「……ところで、体育祭の時にもらった遊園地のチケット。あれ、期限いつまで?」
なんとか立ち直ったらしい吉行が、みんなに尋ねる。
「確か……今月末までだったような」
「大変だ!早く行かないと、期限切れちゃう!!」
吉行の質問に答えたミサの言葉で、健太達は気づく。
未だチケットを使っていなかったのだ。
「……それじゃあ、今度の日曜日、みんなで行こうよ」
健太は、みんなにそう提案する。
すると。
「賛成!」
「いいわね、それ」
「まぁ暇だし、大丈夫だ」
「是非行こう!」
「ボクも行く〜!」
「反対意見、なしね。もちろん私も賛成よ」
全員が健太の意見に賛成した。
「僕も美咲を呼ぼうかな……」
「美咲ちゃんも呼ぶのか?」
吉行が尋ねる。
「うん。一人にしておくわけにもいかないしね」
健太は、そう言った。
「よし!それじゃあ今度の日曜日は、駅前に8時30分に集合ね!!」
いつの間にか指揮を取っていたミサが、みんなにそう言った。