その85 球技大会 10番目
まさかの10番目。
かなり今回の話は長くなっています。
キックオフの笛が鳴り響き、ボールが蹴られる。
先にボールを蹴ったのは、相馬学園だ。
「行くぞ!」
チームメイトは、前に突っ込む。
全員で攻める作戦だ。
「そっちをマークだ!」
前を行く健太には、ノーマーク。
四季高校の選手達は、別の選手にマークをつけていた。
その選手は、先程までの試合で点を入れていた選手だった。
「ここまでは予想通りだな」
「よし!何としても、先に点を入れるぞ!」
気合いを入れ直す。
「これは……マズイかもな」
健太に対してノーマーク状態のメンバーを見て、和樹は呟いた。
「先輩!あの選手にマークをつけてください!!」
「え?あいつは一年だぞ?どうして……」
「彼のサッカーセンスは、半端じゃないんです!……いや、僕がマークしに行きます」
「……ああ、何故かは知らないけど、頼んだぞ。前半しかないこの試合で、先制点を取られるのも辛いしな」
そう。
この試合は、時間短縮のため、前半の分の時間しかないのだ。
しかも、時間を過ぎれば、点を入れた方が自動的に勝ちになるというルールだ。
(ダッ)
和樹は、健太の元までやって来て、ピッタリとくっつく。
「久しぶり、健太!」
「和樹、僕にマークとは……さすがは和樹だね。他の人達は先輩にマークつけてるのに」
「まぁ、中学で一緒にサッカーやってれば、嫌でも分かるよ。健太が要注意人物だってね」
そう。
和樹は健太と同じ中学に通っていたのだ。
そして、サッカー部で活躍していたのである。
もちろん、健太と共に。
「そこだ!」
(ダッ)
健太は、速度を上げる。
置いていかれないように、和樹も後ろをついていく。
「木村!パスだ!!」
(ボン!)
ボールが高く上に上がる。
その落下地点まで健太は走る。
「そのままヘディングだ!!」
誰かの声が響く。
その声に答えるように、健太は地面を蹴り、跳んだ。
しかし。
「させるか!」
(ザッ)
和樹も、健太に合わせるように、跳んだ。
「くっ!」
(ドンッ)
頭に当たったボールは、そのままゴールとは別の方向へと転がっていく。
「危ない危ない」
何とかシュートを阻止した和樹は、着地と共に、そう呟いた。
「な、何て……何て面白い試合なんだ」
健太の中の何かに、火がついたらしい。
「健太が相手の試合が、ここまで面白いとは」
和樹も、健太に対する対抗心で、燃えていた。
「この試合……本当の意味で、先に点数を入れた方が勝ちだな」
「……そうですね」
先輩の言葉に、健太は頷いた。
「それじゃあ、こっちが先に点入れて、逃げ切るぞ!!」
「「「「「「おー!!!!!!」」」」」」
リーダーの言葉に、一同が返事を返す。
試合はそのまま、終了5分前まで迫っていた。