その84 球技大会 9番目
あ、あれ?
とうとうその9まで来ちゃったよ……?
様々な競技が行われた球技大会も、残すところ後一つ。
そう。
健太が出場する、サッカーだ。
「健太く〜ん、頑張って〜!!」
「が、頑張ってください!」
客席からは、応援の言葉が投げかけられる。
そして、舞台は決勝。
相馬学園と、四季高校の対決である。
「相手チームには、和樹がいるんだよね……ちょっと、大変かもな」
健太は、そう呟く。
和樹とは、四季高校に通う、眞鍋和樹のことであり、サッカー部に所属している、名選手なのである。
そのボール捌きといったら、感心するしかない程、うまいのであった。
「ふぅ……」
今溜め息をついたのが、眞鍋和樹。
黒くて短い髪が特長の少年である。
いくつか健太と共通するような部分も見られるが、果たしてそれは、偶然なのだろうか。
「とにかく。この試合に勝って、優勝カップ貰っていこうぜ!!」
言い忘れていたが、この球技大会では、それぞれの種目で優勝すると、優勝カップが貰えるのである。
また、その優勝カップの数によって、総合優勝も決まるのと言ったルールがあるわけではないので、あくまで記念として考えるべきだろう。
しかし、優勝カップを持って帰る。
この事は、とても名誉なことであり、錦を着て故郷に帰るような気持ちになれるのだろう。
「相手はスポーツの名門だからな……みんな!気合い入れてくぞ!!」
「「「「「お〜!!!!!」」」」」
部員全員の声が響く。
その中には、勿論健太の物も含まれていた。
四季高校側でも。
「ここで勝てたら、優勝だ。いいかお前ら!ここまで来たら、優勝するしかねぇぞ!」
「「「「はい!!!!」」」」
「錦を着て故郷に帰るだ。優勝して、学校に帰るぞ!!」
「「「「は、はい!!!!」」」」
こちらもやる気十分のようだ。
そして、選手達はそれぞれの位置につく。
ボールは、相馬学園側からとなった。
「木村!今回は攻めてけよ!!ここまで体力は温存してるはずだからな!!」
「はい!」
そう。
ここまでの試合、健太は出場していなかったのだ。
何故かと言うと、この時の為だ。
そして。
(ピィ〜!!)
審判の吹く笛の音が、試合開始の合図となった。
「まさかまたお前と会うなんて、夢にも思わなかった……」
「私もよ」
健太達の試合が始まる少し前。
大貴の元クラスメイトだという早織と、大貴が話をしていた。
「お前ら、中学の時のクラスメイトだったのか……」
「……意外、ですね」
「人は見かけによらないわね」
「いや、それ意味違うから」
大貴は、美奈の言葉に突っ込みを入れた。
「本当は恋人同士なんじゃねぇの?」
「「いや、それはない」」
吉行の言葉に、大貴と早織の二人は、言葉をハモらせて言った。
「おお……結構息合ってるな」
二人の様子を見て、吉行がそう言ったその時だった。
(ピィ〜!)
試合開始を告げる笛の音が、聞こえてきた。