その70 重い過去 3番目
3番目です。
ちょっと雲行きが怪しくなった……のか?
それは、とある日のことだった。
外は、見る限り雨。
梅雨の季節である6月では、仕方のないことでもあった。
「雨、止まないね〜」
「そうだね〜」
教室の窓から、美咲とその友人は外を眺める。
窓は、雨によって濡れている。
その雨は、地面を容赦なく刺している。
止む気配は、ない。
「……雨の日ってさ、なんだか嫌だよね」
「何が?」
突如、隣にいた友人が、美咲にそう話題を出してきた。
「外には遊びに行けないし、それに、何か嫌なことがある時って、雨の日が多いじゃない?」
「た、確かに……ドラマとかだと、そうだよね」
美咲も、その言葉に同意した。
「まぁ、私には美咲がいてくれればいいんだけどね〜」
「きゃあ!」
(ギュ〜)
突如抱きしめてくる、美咲の友人。
どうやら彼女は、美咲のことが嫌いではないらしい。
なお、このクラスで、美咲は結構可愛い方の部類に入るらしく、男子からの好感度は高かったりする。
「やっぱり美咲は可愛いな〜」
「にゃふ〜」
何やら意味不明な奇声を挙げる美咲。
そんな反応を、友人は楽しんでいる。
他の男子は、その様子に見惚れていた。
というより、羨ましがっていた。
「ふみゅ〜」
「もうその辺にしておいたら?」
しばらくすると、他の友人がやって来た。
その友人は、黒縁眼鏡をかけた、どこにでもいそうながり勉タイプだった。
そんな友人は、美咲に抱きついている友人の方を見て、そう言った。
「何で?美咲こんなに嬉しそうにしてるよ?」
首を傾げる友人。
「それは喜んでいるんじゃない。苦しんでるんだ」
「そんなことないはずだよ」
「息出来なくて苦しそうにしてるけど?」
「ちょ、ちょっと苦しい、かも……」
自然と抱きしめる力が強くなっていたのか、美咲が苦しそうにしていた。
「これはこれは。失敬失敬」
言いながら、美咲を離す。
解放された美咲は、もう一度、雨に濡れている窓から外を見た。
「……何だろう」
そして、思わずそう呟いていた。
「どうしたの?」
友人が尋ねてくる。
美咲は、
「うん。何だか変な感じがするんだ」
「もしかして……恋の病!?」
「どこをどう解釈したらそうなるんだ」
突込みが飛んできた。
美咲は、そんな二人の漫才(?)を見て、心から笑っていた。
今思えば、この微妙な気持ちは、これからやってくるとある出来事への暗示だったのかも
しれない。
美咲は、いつしかそう思うのだった……。
降る雨は、その勢いを止めることなく、ただ、地面に向かって降り注いでいた。