その69 重い過去 2番目
今回は割と平和な話です。
しかし、次回辺りから怪しく……?
四年前。
6月3日金曜日。
とある家庭での、ある少女の日常。
「ただいま〜!」
赤いランドレスを背負って、短いスカートを履いている少女、月宮美咲が、
学校から帰って来た。
「お帰り〜」
返事をするのは、台所で食事の用意をしている、母親だ。
エプロンをしていて、右手にお玉を持っている。
どうやら夕食を作っている途中みたいだ。
「今日の夕飯なに〜?」
「今日はカレーよ。美咲の大好きな」
「わ〜い!」
本日の献立を聞いて、素直に喜ぶ美咲。
その顔は、とても幸せそうで、見る者の心を癒してくれそうなほどだった。
「お父さんももうすぐ帰って来るから。それまでに宿題終わらしちゃいなさい」
「は〜い♪」
(トントントン)
美咲は、母親にそう返事を返すと、階段を登り、自分の部屋に入る。
(ガチャッ)
中は、小学生の部屋らしい、可愛らしい人形達に囲まれた部屋だった。
ベッドには、基本色がピンク色のベッドがあり、抱き枕らしき熊の人形が置かれている。
机には、家族三人で撮ったらしい写真が入った写真立てが立てられていた。
「よ〜し!早く宿題終わらしちゃうぞ〜!」
気合いを入れて、美咲は、本日出された宿題を片付けることにした。
「まずは算数から〜」
楽しそうにそう言ってから、美咲はランドセルより教科書と筆箱を取り出す。
その中から、鉛筆と消しゴムを取り出すと、宿題をし始めた。
「……う〜」
少し、唸り声をあげる。
時々分からない問題等があるが、少しずつ宿題を片付けていく。
そして20分後。
「終わった〜!」
算数の宿題を、片付けた。
そして、次の漢字に入ろうとしたその時。
「ただいま〜」
遠くより、父親の声が聞こえて来た。
「あっ!帰って来た!」
(ガタッ)
美咲は、イスから立ち上がると、急いで玄関まで行く。
玄関まで辿りついた美咲は、
「お帰り!」
自然な笑顔で、父親に抱きついてきた。
「お〜美咲。ただいま〜」
父親も、美咲を抱く。
そうしている内に、
「あなた、おかえりなさい〜」
「ただいま、母さん」
笑顔で父親は、母親にそう声をかける。
母親は、
「今日はカレーよ」
「おっ!カレーか。久し振りだな」
と、お玉を持ったまま、居間へと出来る。
「もう出来てるから早く食べちゃいましょう〜」
「「は〜い!!」」
この日までの美咲の生活は、とても楽しい暮らしだった。
しかし、この後美咲の身に、十歳足らずの女子にはきついような出来事が、たくさん降りかかる
こととなるのだが、この時の美咲は、何も知らなかった。
文中に登場した、『月宮美咲』という少女は、美咲が養子になる前の名前ですので。