その68 重い過去 1番目
新章開幕です。
ですが、ちょっぴり微妙な感じが隠せない……。
月は変わり、6月となった。
窓から外を見てみると、雨が降っている。
ここ最近、日本は梅雨入りをしていて、晴れる日が少ない。
本日は、日曜日。
雨なので、外に出ることも出来ないでいた。
「雨やまないね〜」
「そうだね……」
窓から外を眺めながら、健太と美咲は呟く。
相変わらず、雨は止む気配はない。
それどころか、逆にその勢いは増すばかりであった。
「……私、6月って嫌い」
「……そっか。あの日も6月の雨の日のことだったもんね」
健太の言う『あの日』。
それは、美咲にとって、ある重大な事件が起きた日でもあった。
「でも、これを言っちゃうと、少しあれかもしれないけど。そのおかげで、僕と美咲は巡り
会えたことだし……」
「……私も、嫌なこともたくさんあったけど、お兄ちゃんに会えたこと、そして、
今のお父さん・お母さんにも会えた」
「まぁ、うちの親は、本当に破天荒だけどね」
「アハハ!」
二人して楽しそうに笑う。
「……けど、あの日のことは、あまり思い出したくないな」
「……辛かった?」
健太が、美咲の顔を覗き込んで、尋ねる。
美咲は、何も言葉を発さず、ただ頷いた。
「さて、今日は何をする?」
「……う〜ん、街に出たいと思ったけど、この雨じゃね……」
「今日は、ゆっくり家で休むことにする?」
「……うん」
健太の提案に、美咲は同意を示した。
「たまにはこういう日もいいかもしれないね」
「……でも、暇だよ」
「あはは……それじゃあ、テレビでも見る?」
珍しく、健太がそう提案する。
「お兄ちゃんがそんなこと言うの、珍しいね」
美咲も、そう言ってくる。
「そう?まぁ……普段あまりテレビを見ないからね」
(ブウン)
テレビの電源を入れて、見る。
今の時間帯は、ニュースをやっていた。
「……ねぇお兄ちゃん」
「何?美咲」
「……これからも、一緒だよね?」
美咲が、健太の顔を覗き込むようにして尋ねて来る。
「……うん」
健太は、一言そう呟いた。
それは、健太と美咲が出会う前。
美咲の身に起きた出来事。
それは、4年前の話。
美咲の身に起きた不幸な話。
それは、梅雨入りした6月の雨の日の話。
美咲の、健太との出会いの話。
これは、美咲と健太との、最初の出会いまでを描いた物語である。
故に、他の人物達はほとんど登場しないだろう。
そして、重い話になることだろう。
しかし安心してほしい。
決して、美咲は、不幸な人間ではないという事を、知ってほしい。
苦労はしたけど、その分に値する幸せを手に入れたことを。