その64 体育祭 5番目
今回の話は割と短めです。
キリがよかったので……。
「さて、今回は俺とお前は同じ組に入ったな」
「そうだね、大貴」
どうやら、8人の内の2人は、大貴と健太らしい。
同じ色でありながら、戦う羽目となったみたいだ。
「とりあえず、一位二位独占と行こうじゃないか」
「そうだね」
「けど、どっちが速いか、競争しないか?借り人競争だけど」
「いいよ」
大貴の提案に、健太は同意を示す。
そして、争う必要のない戦いが、ここに開かれようとしていた。
「位置について〜」
「正々堂々。手加減なしだぞ」
「分かってるって」
「よ〜い」
(パン!!)
スタートの合図が鳴り、健太と大貴は、駆け出した。
「あれか?」
「多分そうだと思う!」
健太と大貴、その他の人は、封筒がある場所まで到着した。
封筒と言っても、人数分ちょうどあるわけではなく、何枚もばら撒かれていた。
大貴が最初に取った封筒の中には、
『ハズレ♪来世からやり直せ、バ〜カ』
と書かれた封筒が入っていた。
「アホか!」
(バシン!)
思わず大貴は、それを地面に投げつけてしまった。
「何が書かれてたんだよ、吉行……」
他の人達は、
『何か世界征服が出来そうな人』
『明らかに不審者っぽい顔をしている、とても親切な人』
『可愛い男子』
『明智光秀っぽい人』
『チンゲンサイを食べてそうな人』
など、無理難題が書かれていた。
ちなみに、『ハズレ』と書かれている封筒以外は、変えてはいけない規則となっている。
「くそ……これだ!」
大貴は、再び一枚の封筒を選び取る。
その封筒の中身には、
『当たり!よかったね!!……なんて言うと思ったかバーカ。ハズレだよ、いい加減理解しろ』
と書かれてあった。
「何で俺はこんなのばっかり取るんだよ!!」
(バシン!)
もう一枚の封筒も、先ほどど同じように、地面に叩きつけた。
「大貴の奴、ハズレでも引いたのか?」
吉行が、遠くから大貴の様子を眺めて、言った。
「えっと、僕は……」
健太も、封筒の中身を開く。
すると、そこには。
『美人な女の子』
と書かれていた。
「……あれ?美人な女の子?何だか意外に普通だな」
美人な女の子と言えば、健太の知る限りでは、一人しかいない。
「ん?こっち来るな」
吉行は、健太が自分達の方へやって来るのを察知した。
「「え?」」
かなえとマコが、揃って声を出す。
「もしかしたら、借りる人が、うちのクラスにいるのかもね」
美奈がそう呟くが、誰も聞いていなかった。
「かなえさん!」
「え?」
「ちょっと来てくれないかな?」
「う、うん……」
「じゃあ、行くよ!」
(パシッ)
自然と手を繋いで、健太とかなえは走る。
そんな二人の様子を、何やら不満そうな顔で見るマコの姿があった。