その62 体育祭 3番目
100m走、まだまだ続きます。
今回だけでは終わりませんよ。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「す、凄い迫力だ……健太の隣で走ってる奴、かなり本気だしてる」
「でも、普通に走ってて、そいつに追いつかれない健太も凄い」
大貴と吉行は、今の二人の様子を見て、解説していた。
「な、なんてスピードだ!とても、追いつけねぇ……」
結局、この勝負は健太の勝ちとなった。
「はぁはぁはぁ……な、なんでそんなに速いんだよ……」
「いや、そんなこと聞かれても……」
答えようのない質問をされても、健太には答えを用意することは出来なかった。
「次は女子の100m走だな」
「なんだかんだ言って、僕達三人、一着だったんだね」
「ああ……俺には誰も注目してくれなかったけどな」
「まぁまぁ。おかげでまた、チケットに近づいたんだからいいじゃないか」
「それもそうだな!」
「立ち直り早」
大貴に説得されて、吉行は立ち直った。
その早さは、秒速だった。
「何がともあれ、相沢達の活躍を見逃すわけにはいかないな」
「そうだね」
健太は、吉行の言葉に頷く。
「おっ、そろそろ始まるぞ」
大貴の言葉に、クラスメート達は、全員前に注目する。
第一走者らしき人達が、ゴール目指して走っている様子が見えた。
「あ〜うちのクラスは2位か」
「大健闘じゃん!」
「というか、さっきのお前は4位じゃないか」
「んな!?あ、あれは、周りが足速いやつばっかだったからで……」
そんな会話が聞こえてくるが、健太達は無視する。
次に走った人は、3位だった。
その次に、美奈の出番が来た。
「何か、美奈さんならやれそうな気がするする」
「奇遇だな。俺もそう思ったぜ」
健太の言葉に、大貴が同意を示す。
その言葉を示すかのように、
「お〜速い速い」
「何か、2位との差がかなり開いてるんすけど」
素直な感想を示す男子生徒。
健太達も、同じ感想だった。
「あれ、さっきの吉行と同じくらい速いんじゃない?」
「中川……やっぱアイツは謎だな」
ますます美奈に、謎が深まっていた。
「おっと、そろそろアイドルのお出ましだ」
「ああ、マコだね」
次は、マコが走る番らしい。
「無難な所、3位かな?」
「ビリにならなきゃそれでいいだろ」
「可愛いから、許す!」
「犯罪者になるなよ」
いろんな言葉が飛び交う中、
「よ〜い」
(パン!)
マコは走りだした。
「お、結構速い」
「2位だな」
「ひゃっほ〜う!!」
盛り上がりを見せる男子生徒達。
健太も、マコが走る姿を、じっくり眺めていた。
「お〜!!」
結果、マコは2位となった。
「結構速かったな、MAKOちゃん」
「吉行。ここ一応学校何だから、その名称で言うのはちょっと……」
「何だよ、お前だってマコって呼んでるくせに」
「それは、そっちの方が呼び慣れてるからで……」
「ん?あ、あれは……」
「「え?」」
大貴が、驚きの色を見せる。
そんな大貴を見て、健太は察した。
「ああ、次は二ノ宮さんが走る番だね」
「二ノ宮さんって、A組の二ノ宮夏美のことか?」
「そうだよ……ってか、何で吉行が知ってるの?」
夏美のことは、吉行には教えていないはず。
そう思った健太は、吉行にそう尋ねてみた。
すると、
「美少女の情報は、すでに調査済みだ。ちなみに、二ノ宮は、A〜Eでランク分けするなら、
Aの中レベルに入る」
と、笑顔で言ってきた。
その笑顔が、あまりにも輝いていた為、健太には逆にかわいそうに見えていたのは、ここだけ
の話である。
「んで?その二ノ宮がどうかしたのか?」
「ううん、ちょっとね」
「?」
健太の言葉に、何やら含む物を感じた吉行だったが、その前に、
(パン!)
始まりを告げる音が鳴った為、探ることは出来なかった。
本来なら、大貴を詮索すべきだったのだが、吉行はそこまで至らなかったらしい。