その60 体育祭 1番目
「体育祭」編の始まりです。
この体育祭は、普通のとちょっと違って……。
体育祭。
それは、私立相馬学園で開かれる三大イベントの一つである。
ちなみに、二つ目は文化祭で、三つ目は学年によって違う。
一年生は、四月に行ったオリエンテーション旅行だった。
ともかく、本日は、全校生徒が一同に集う体育祭なのである。
この学校は、A〜Dクラスまであるので、A組は赤、B組は青、C組は黄色、D組は緑という
風に色分けされている。
それぞれ優勝する為に、今日一日を楽しむ為にと、目的は違うながらも、今日一日を
過ごすこととなる。
今は、その体育祭前のHRの時間。
健太達のクラスは、1−Bの為、青組となっている。
その為か、入って来た外川の頭には、青いハチマキが結ばれていた。
「先生、気合い十分ですね」
思わず健太がそう言ってしまうほど、外川の目は、やる気に満ち溢れていた。
「当たり前じゃないか!優勝して、1−Bの名前を広めるんだ!!」
「広めてどうするんですか」
「ったく、うちの担任は分けわかんねぇなぁ」
大貴がそう呟くが、外川の耳には入らない。
今の外川は、『本当に教師なのか?』という疑問すら感じられるほど、燃えていた。
「この場合、外川はもえ……」
「言わせねぇよ!!その先は言わせねぇよ!!」
吉行がいつも以上のハイテンションに突っ込む。
一方で、最後まで言えなかった美奈は、『チッ』と舌打ちをしていた。
「それに、この体育祭は、最優秀クラス賞というのがあってな」
外川の説明によると、相馬学園の体育祭には、最優秀クラス賞というものがあるらしい。
その基準は、競技での獲得点数によって決められるらしい。
獲得点数が一位のクラスが、最優秀クラス賞に選ばれるらしい。
「だから、青組が一位じゃなくても、学年でトップを取ればいいんだ!」
「仲間同士で仲間割れが発生しそうなセリフですね、それ」
ミサがまともな突っ込みをする。
外川は、それにも動じない。
「知ってるか?みんな。この体育祭はな、優勝した色のクラスに、景品がついてくるんだ」
「景品ですか!?」
吉行が乗り出た。
「ああ。と言っても、何だったかな〜。焼肉食べ放題の券だったかな」
「焼肉食べ放題!?」
「……あれ?大貴って焼肉好きだったの?」
いつも冷静な大貴が、珍しく取り乱す。
こんな大貴を見たのは、健太にとって、二度目だった。
「更に、最優秀クラス賞に選ばれたクラスは、何と、サマラ島遊園地無料券を人数分!!」
「サマラ島遊園地……ってあの?」
「たぶん、そうだね」
隣の席に座っているマコと健太が、この前クイズ大会で貰った遊園地も、その名前だった。
「お前ら、今日は優勝しろよ!!」
「「「「「お〜!!」」」」」
クラス全員が一致団結した時だった。
「頑張ろうね、健太君」
「う、うん」
かなえに言われて、健太も頷いた。
「ではここに、第23回、私立相馬学園体育祭を開催いたします」
校長の話が終わり、まばらに拍手の音が聞こえる。
『次は、この体育祭のスポンサーである、進藤竜太郎様より、お祝いのスピーチです』
「スポンサーって……ああ、景品の件か」
健太は、即座に理解した。
檀上には、進藤竜太郎らしき人物が上がっていた。
妙齢の老人だった。
「この度は、この体育祭の景品を提供しました、進藤竜太郎です。この学校には、様々な
思い出があり、そんな母校の為に何か役に立てることはないかと考え、景品を提供しました。
みなさん、是非優勝を目指して頑張ってください」
(パチパチパチ)
その場にいる全員から拍手を受け取り、竜太郎は去った。
そして、激動の体育祭の幕が、開かれた。