その53 約束を果たす時 3番目
甘いカップルっぽくなってますが、違います。
まだ彼らはカップルではありません。
それに、まだこの小説では、誰と結ばれるのかは分かりません。
全員ってのは……ないですよね。
デパートの中は、休日ということもあり、結構賑わっていた。
子供づれの人も多いのか、子供が元気よく駆け抜けている様子も見える。
健太達は、そのデパートの、洋服店を目指した。
その時も、二人の手は、しっかりと繋がれていた。
まるで、六年前の別れをもう繰り返さないようにするかのように。
「あ、この店かな?」
「多分そうだと思うけど」
「それじゃあ、そこのお店に入ろう♪」
「う、うん……」
洋服店の中に入る時には、手を繋いでいたのが、腕を組んでいるという格好に変わっていた。
その動作に驚きを隠せぬまま、健太は洋服店へと入って行った。
その店は、男性用と女性用と、男女別にコーナーが設けてあった。
「う〜ん、どんな服がいいかな〜」
マコは、自分に合いそうな服を、何着か探していた。
健太は、そんなマコの様子をじっと眺めていた。
「……夢じゃ、ないんだよね」
会話をすることが叶わなかった六年間。
そして、会話をすることが出来る、今。
それを思うと、健太の顔が、自然と笑顔になる。
「どうしたの?健太君」
やがて健太は、マコに呼ばれた。
「あ、ううん。なんでもないよ」
「そう?なら良かった♪それでさ、こっちの服とこっちの服。どっちがいいと思う?」
マコは、両手に持つ服を健太に見せ、そう尋ねる。
右手に持っている方は、マコがいつも着ているような、スカートの短いワンピース。
胸元に花柄らしき模様が描かれており、基本色は黒。
左手に持っているのは、白のプリッツスカートと赤のシャツの組み合わせ。
「う〜ん、とりあえず両方着てみたらどうかな?」
健太はマコにそう提案をする。
するとマコは、
「うん、健太君が言うなら、そうしてみる♪」
と、男子の何人かは落とせるだろう笑顔でそう言った。
「それじゃあ、僕は外で待ってるから」
「待っててね」
そう言うと、マコは試着室の中へと入って行った。
「まぁイベントまでは時間があるから、とりあえずこのデパートで何か見ていこう」
「ていうか、本当に何のイベントなんですか?」
デパートに入った瑞穂と充は、行くあてもなく、デパート内をさまよっていた。
瑞穂は、充の言うイベントが何なのか、未だに出来ていないらしく、充にそのことを
尋ねていた。
「まぁ、これがなかなか面白いイベントなんだよね。実は……」
(ゴニョゴニョ)
充は、瑞穂の耳元で、何かを囁く。
すると。
「な……そ、そんなイベントなんですか?」
「ああ。面白そうだろ?」
「そりゃあ、まぁ、面白そうではありますけど……恋人同士でしか出場出来ないクイズ大会、
ですか……景品がそういうのにちなんだ物なんですか?」
「そうなるかな」
どうやら恋人同士限定のイベントとは、クイズ大会のようだった。
それがどこで行われて、どういった内容なのかは、充にもわからないらしい。
「でも、もしその景品が、どこかへの旅行券だったとして、私は行きませんよ?」
「そう固いこと言わないでよ〜」
充は、猫なで声でそう言う。
「……お、いい所に洋服屋がある。見ていこうか?」
「いえ、別にいいです」
「あ、お、おい!」
瑞穂は、洋服店の前をそのままスルーして行った。
その後ろから、充が瑞穂の後を追う。
ちょうどその時。
試着室のカーテンが開いた。
「ど、どうかな……?」
「……可愛い、と思うよ」
試着室のカーテンを開けると、そこには、白のプリッツスカートをはいて、赤のシャツを
着た、マコが立っていた。
若干恥ずかしそうに顔を赤めている所が、また可愛さを引き立てている。
「ホント?それじゃあこっちにするね♪」
実はこれより前に、黒のワンピースも着てみたのだが、反応は普通だった。
普段着でワンピースを着ることが多いマコは、黒のワンピースももちろん持っていたのだ。
「それじゃあ、ボク買ってくるね」
「あ、お金なら僕が……」
「大丈夫だよ。これはボクの買い物だしね」
そのままレジまで行ってしまう。
健太は、マコの会計が終わるまで、待っていることとなった。
「……」
その様子を、健太は無言で眺める。
ほどなくして、マコは戻ってきた。
「それじゃあ、そろそろ行こう♪」
「うん」
そう言うと、マコは自然と、健太の右手に絡まって来る。
健太は、そのマコの行動に、若干顔を赤くしていたが、何とか抑えていた。