その47 展覧会 3番目
今回の話は短いですが、キリがいいのでここまでにしました。
「案外楽しそうにしてるね」
「そうだな〜けど、これが発展することはないだろうな〜。いや、あって欲しくないな」
美術館館内。
現在、健太とかなえは、二人で絵を見ている。
その後ろを、美咲と吉行がついていく感じである。
今はサングラスは外してある。
何故か。
「やっぱり不審者扱いされるのはな」
「そうだよね」
先ほどこの美術館に入る際、サングラスをしていた二人は、入館を拒否された。
理由は簡単、怪しいからだとのこと。
「私達、お兄ちゃんたちを監視しに来ただけなのに!」
「……まぁ、監視も十分怪しいけどな。つか、これもはやストーカーだし」
珍しく吉行が正論を述べる。
「それでも探らなきゃいけない時があるの!」
「分かってるよ。それに、なんだか面白そうだしな」
やはり、吉行は吉行だった。
「それじゃあ、行こっか、吉行さん!」
「あ、ああ……」
残りHP680/1000。
「やっぱりピカソの絵って、奥が深い感じがするよね」
「そうだね。顔の構造をすべて平面にまとめる為に、わざとあんな描き方をするなんて」
「わざとあんな風に見せる描き方がいいよね」
どうやらこの二人には、ピカソの絵の素晴らしさが分かるようだ。
道行く人は、そんな二人に大変感心している。
中には、拍手をする素振りを見せる人もいた。
「次は、あっちかな?」
「そうみたい。それじゃあ、あっちを見にいこう」
(パシッ)
「あ……」
言って、健太は、かなえの手を取る。
その時、かなえの顔が、自然と赤くなっていた。
「次はどんな絵があるんだろね」
「う、うん……」
「どうしたの?」
「そ、その……手が……」
「……あ、ご、ごめん!」
慌てて握っていた手を解こうとする健太。
しかし、
(ギュッ)
「え?」
「……このままで、行こ?」
「う、うん」
握っていた手に、かなえが力を入れて来た。
その手は、微妙に震えていたような気がした。
「て、て、手を……」
「つないで……いるぞ」
その様子を見ていた二人は、呆然としていた。
「も、もしや、このままいい雰囲気に達して、それで、それで……エェクスタシィイイイ!」
「意味わかんない奇声をあげないでください」
美咲の発言により、吉行の奇声は斬られた。
「それより、早く行きましょう!」
「あ、ああ……」
美咲にせかされて、吉行は後をついて行った。
……恐らく、吉行は将来、女性の尻に敷かれるタイプとなるだろう。