その45 展覧会 1番目
ついに新章始まりです。
今回からは、しばらくデートに行って参ります。
世間一般では、G.Wと呼ばれる今日からの四日間。
その一日目、5月3日。
現在時刻、8時52分。
とある駅前で待つ、一人の少年が居た。
少年の名前は、木村健太。
私立相馬学園に通う高校一年生である。
何故駅前で一人待っているのかというと、本日彼は、ある人物とお出かけするのだ。
と言っても、行く場所は美術館で行われる、ピカソの展覧会。
恐らく他にもいろんな場所に行くことになるだろうと思われる。
「まだ9時にはなってないか」
腕時計を見て、時間を確認する。
周りには、人がたくさんいる。
G.W初日の為か、家族で外に出ている者もいた。
「今頃家の親は海外か。頑張ってるのかな〜」
健太は、海外出張をしている両親を気にする。
健太の父親と母親はファッションデザイナーで、現在海外で仕事をしている。
「でも、ファッションデザイナーって、海外出張するような仕事だったかな?」
健太は、思っていたことを呟いてみる。
帰って来る声は、ない。
「美咲に内緒で来ちゃったけど、大丈夫かな……?」
実は、美咲が寝ている隙を見て、健太は家を抜け出していた。
鍵は両方持っているので、どこかに出かける時は大丈夫だと思っている。
何が心配かと言うと、後で自分が怒られるのでは、という部分に対してだ。
「まぁ、別にデートに行ってるわけでも……ってこれって、デートって言うのかも……」
そんなことまで呟いていた。
本日の健太の服装は、下がジーパン、上が白の洋服に、更に赤の上着を重ね着する形を取っている。
そんな時だった。
「健太君〜!」
健太から見て右から、女の子の声が聞こえる。
金色で長い髪、青い瞳の少女が、その先にいた。
「かなえさん!」
健太は、少女の名前を叫ぶ。
少女の名前は相沢かなえ。
健太と同じく私立相馬学園に通う高校一年生だ。
同時刻。
短めでピンク色、双方の髪留めから少し出ている髪の毛が特徴の少女が、ある二人の男女の
様子を見ていた。
一人は、短くて黒い髪の毛、パッチリとした黒い瞳が特徴の男子。
一人は、金色で長い髪、青い瞳の少女。
傍から見れば、その二人はカップルのようにも見える。
「お兄ちゃん。私に黙ってかなえさんと……」
少年の名前は、木村健太。
少女の名前は、相沢かなえ。
そして、その二人の様子を遠くから見ている少女の名前は、木村美咲。
健太の義理の妹である。
赤色のチェック柄のスカート、ピンク色の上着を着ていて、変装道具なのか、サングラスまで
かけている。
「ほぉ。健太もなかなかやるじゃねぇか」
「吉行さん。くれぐれも二人の近くで大声を出さないでくださいよ」
「分かってるって」
美咲の隣には、健太と同年代の男子が立っていた。
少し長めで黒い髪、人懐っこいオーラを放っているこの少年の名前は、海田吉行。
健太の中学生の時からの同級生である。
こちらは、黒いズボンに黒い上着、そして、美咲同様にサングラスをかけていた。
まるで、どこかの漫画に登場するような執事を思わせるような格好をしている。
ただし、スーツではない。
何故この二人がセットになっているかと言うと、美咲が吉行を呼んだからだ。
「しかしまぁ、怪しいのが駅前だと睨んだら、本当に駅前にいるとはな」
「こう言うときの吉行さんの勘って、本当に恐ろしいですね」
「まぁな。勘だけはいいからな」
「……その勘、もう少し別のことに使ったらどうですか?」
美咲は、吉行にそう突っ込んだ。
「そう固いこと言うなよ。んで?これからどうするんだ?」
「二人の後ろをついていきます」
「尾行作戦って所だな」
吉行は、超ノリノリである。
対照的に、美咲は本気である。
……ある意味二人のコンビは、最強なのかもしれない。
「かなえさん……だよね?」
「うん、そうだけど……?」
そこに居たのは、純白の象徴、天使のような少女だった。
白の、ロングスカート型のワンピースを着て、麦わら帽子をかぶっているかなえは、
想像していた以上に美人だった。
「な、なんだか、美人、だね」
「!!そ、そう?」
かなえは、健太の言葉に驚いた。
いきなり美人と言われて、驚くなと言う方が無理もあるだろう。
「それじゃあ、行こっか?」
「は、はい!」
何故か語尾が強くなるかなえ。
微妙な緊張感が、彼らの胸の中を支配する中、二人のデートは始まった。