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その43 五月 7番目

やばい……。

7番目に来ても、この話終わらなかった。

「はぁ……」


午後8時。

家の中には最低限の物しか置いていない為、健太の暇つぶしといったら、読書しかなかった。

それ以外だと、たまに体力づくりの為に、外を走ってきたりしているのだ。


「走ってくるか。寝る前にちょっとだけ」


健太は、ジャージに着替えると、ランニングの為に外へと出て行った。















「ふぅ……」


橋の辺りに来た所で、一旦休憩に入る。


「この橋も、あとどのくらい渡ることになるんだろうな……」


などと呟いて、橋の近くに位置する土手に座り込む。

空はすでに暗くなっていて、街灯の明かりが、道行く人々を包んでいた。

たまに通り過ぎる車以外は、特に何も通らない、そんな静かな場所だった。

そんな場所だったのだが。


「……ん?」

「……!!」

「    !!!!!」


何かを叫びながら、健太の方へと走ってくる人影が見えた。

それは、1つではなく、複数。

それはまるで、誰かが追われているようだった。


「まさか、女の子が不良に追われてる、何てベタな展開じゃないよね?」


本音を健太が言う。

そして、その健太の本音は、不幸にも、当たってしまった。


「待ちやがれ!!」

「逃げるんじゃねぇよ!!」

「オレ達とちょっと付き合うだけでいいんだよ!!」


1人の女の子が、不良達に追われている図が、目の前に広がっていた。


「……こんなんで待ってくれるわけないじゃない」



(スクッ)



健太は座っていた場所から立ち上がる。

そして、橋を走る人影の方へと、ゆっくり歩み寄る。


「ん?おい、誰か来るぞ」

「何だ?正義の味方気取りか?」

「いや、この場合は、弱者の味方か?ハハッ!笑わせてくれるぜ、おい!!」


不良だと思われる複数の男達は、健太に対して言いたい放題だった。


「ちょっと、すみません」


健太は、女の子と不良達の間に入る。

女の子は、健太の背中に隠れる。


「何だ?テメェは?」

「いまどき正義の味方気取りですかぁ?」

「相手は、4,5人か……」


現状を理解する。

そして健太は対策を練る。


「……うん。大丈夫だと思う」


意を決すると、健太は、不良達に話しかけた。


「この子が困ってるじゃないですか。ていうより、何でこんな夜中の街を疾走してたのですか?」


不良が答える。


「いやぁ、ちょうど帰宅途中の可愛い女の子を見たからな、話しかけただけだ」

「するとその子が逃げ出しちまって、追いかけてたってわけだ」


女の子の手には、鞄が握られていた。

恐らくは、塾とか何かに行っていた人の部類なのだろう。


「それは、いい訳ですよ。僕が言いたいのは、何故そこで思い留まらなかったのか、ということです」

「はぁ?思い留まる?何それ、おいしいの?」

「少なくとも、おいしくはねぇんじゃねぇの?」


不良のうちの誰かがそう言うと、残りの人達も皆、笑い出す。


「……あまり調子に乗ってると、警察呼びますよ?」

「やれるもんならやってみな。まぁ、そん時には、言葉を発せないような状態になってるだろうけどな」


それだけを言うと、不良の1人が、健太に向かって走ってきた。


「その程度で僕を倒せると思わない方がいいと思いますけどね」



(ヒュン)



その不良の攻撃を余裕で回避し、カウンターを繰り出す。



(バキッ)



「ぐおっ!」


殴られた不良は、その場に倒れこむ。

すると、敵討ちを取るかのように、何人もの不良達が襲い掛かる。

だが、健太はこれらの奇襲も軽くあしらうと、全員に同様に殴り返す。


「つ、強い……強すぎる!!」

「これが噂の……主人公補正ってやつか!?」


意味不明な言葉を残し、不良達は去って行った。


「……大丈夫だった?」

「あ、はい……」


呆然と健太達の様子を眺めていた少女は、戸惑いながらも返事をする。

健太はその少女の姿を見た。

背は健太よりも少し小さめで、ショートヘアーの青い髪で、一言で表現すると。


「(か、可愛い)」

「?どうしたんですか」

「い、いや、何でもないです……よ……」


上目遣いで、不思議そうに首を傾げる仕草は、なんとも可愛らしかった。


「(これじゃあ不良に追われるわけだ)って、僕と同じ学校の制服?」

「はい。私も相馬学園の生徒です」

「奇遇ですね!何年生ですか?」

「今年入ったばっかりの新入生です」


なんと、偶然にも同じ高校一年生でもあった。


「それじゃあ僕と同い年だね!えっと……名前は?」

「二ノ宮美夏です」

「僕は木村健太。よろしくね」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


2人は、軽く挨拶を交わし、その日は帰宅することにした。

帰宅途中に健太は、美夏からいろんな話を聞いた。

美夏が1−Aのクラスだということ。

部活はかなえと同じ吹奏楽部だということ。

そしてなんと、かなえとは最近友達になったのだという。

とにかく、いろんなことを話して、その日を後にした。















次の日。

この日は土曜日なので、午前中の短縮授業の日である。


「健太〜今日は確か部活は休みだろ?一緒に帰ろうぜ!」

「あ、うん。一緒に帰ろう」


というわけで、吉行と帰ろうとした健太だったが。


「すまん木村。ちょっといいか?」

「ん?大貴?いいけど……ごめん吉行。今日は先に帰っててくれる?」

「ああ。別にいいぜ……ちょっと寂しいけど」


健太は、吉行に伝えるだけのことを伝えると、大貴についていった。
















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