その42 五月 6番目
ついに6番目です。
この調子だと、8番目まで来ちゃうな……。
「よし、終わった」
部活も終わり、着替えも済ませた健太は、足早に校門へと急ぐ。
かなえと一緒に帰るためだ。
「もうかなえさんいるかな?」
時刻は6時5分。
集合時間ギリギリと言った所だ。
「待たせちゃうといけないし、急ごう」
健太は走る。
校門で待つかなえの所へ行くために。
「ちょっと早く来すぎたかな?」
かなえは1人、校門の所で待っていた。
健太を待っているのだ。
「……それにしても、この胸のドキドキは、何だろう?さっきからずっと胸がドキドキしてる」
かなえは、さっきからずっと胸がドキドキしていた。
健太を待ち始めてから、ずっとだった。
「……あ、来た」
程なくして、健太はやってきていた。
そして、かなえの胸の鼓動の大きさは、更に大きくなっていた。
「ごめん。待った?」
「ううん、私もさっき来たばかりだから……」
赤面した状態で、かなえは言う。
恐らくは、健太以外の誰かが見れば、それは違うなと突っ込みそうな顔だった。
それだけ、バレバレだったということだ。
「そっか。それじゃあ、行こっか」
気づいているのか気づいていないのか。
健太はかなえにそう言った。
「うん!」
かなえはそう返事をすると、健太に合わせて歩き出した。
「それでね、美奈ったら……」
「ははは。それはおかしいね」
健太とかなえの2人は、帰り道で特に何か特別な話をしたわけでもなく、ただ普通に世間話をしているだけだった。
だがしかし、かなえのこの一言により、それもすぐに変わった。
「あの……今度の日曜日のことだけど」
「日曜日……というと、美術館の話だっけ?」
「う、うん!」
健太が忘れていたと思ったのか。
健太が美術館の話を覚えていたことに、素直に喜びを感じるかなえ。
そんなかなえの様子に気づかず、健太は話を続ける。
「それで、待ち合わせの時間とか、いつにする?」
「待ち合わせの時間?確か展覧会の時間が10時からだったから、9時に駅というのは?」
「うん。そうしよう」
そして、その話は終わる。
と同時に、2人はいつの間にか『沢渡橋』にたどり着いていた。
「あ……」
「あはは……楽しい時間というのは、あっという間に過ぎ去ってしまうものだよね」
「……そうだね」
「……?」
かなえは、何故か健太の言葉に対して、微妙な表情を見せた。
それが何を意味するのかが気になりながらも、
「それじゃあ、また明日」
と、健太はかなえに言った。
「うん……また明日!!」
かなえも元気よくそう言った。
そして、その日はかなえと別れるのだった。
心の中に、少しだけ謎を残して……。