その37 五月 1番目
いよいよ「五月」編に参りました。
……37話も書いているのに、まだ一か月しかたってないんですか。
本当に、この小説の時間の流れって、遅いですよね。
5月。
それはある意味大事な時期でもある。
高校に入って初めての中間試験がある月でもある。
サッカー部に入部した健太のように、部活に入部する人も多い。
「はぁ〜今日も疲れたな〜」
健太は、その運動能力を見込まれて(熊を倒したことがすでに高校側に届いている)、
すでにサッカー部のレギュラーとして活躍していた。
もともと小学生の頃からサッカーをやっていたので、才能は十分だったのだろう。
「やっぱお前のサッカーの腕前ってすげぇよな」
「いや、そうでもないよ」
今は帰り道。
隣には吉行が歩いていた。
「いやいや、ハットトリックを決めといて何を言うか!お前、やっぱりサッカーの名門
行った方がよかっただろうに!!」
「それってもしかして……四季学園のこと?」
このあたりでサッカーの名門校といったら、ここしかないのである。
四季学園とは、隣町にあるスポーツが盛んな学園であり、サッカーに関しては、毎年全国大会
に出場するとてもすごい学園なのである。
「まぁ、そんな所にあいつが通ってるとなると、少しおかしくも思えるけどな」
「そう言わない方がいいと思うけど」
こうして世間話をしながら、いつものように帰宅をし、夕食の買い物を済まし、予習復習
して、寝る。
そんな毎日を過ごしていた健太だが、ある日に衝撃的なニュースが届く。
それはかなえと約束した日の2日前。
5月1日の金曜日の日に起きた。
いつもと同じ時間に起床して、学校にやって来た健太を待ち受けていたのは、汗まみれの吉行だった。
「お、おい健太……聞いたか?」
「何を?ていうか吉行、なんでそんなに汗まみれなの?」
全身から汗がダラダラと流れているため、木の床にはすでに水滴の跡が残っていた。
「ま、まぁここじゃなんだから、屋上行こう」
「話をするときは毎回屋上なんだね」
悪態をつきながらも吉行についていく健太。
階段にも水滴が垂れていたのは言うまでもないだろう。
「実はな……うちのクラスに転校生が来るんだよ」
「……それだけ?」
「それだけじゃないんだぜ!なんとその転校生は、帰国子女なんだぜ!!」
「……はぁ」
帰国子女が、どうしてこんな一般の高校に転校してくるのかという疑問が頭によぎった健太。
「あながち珍しいことでもないみたいだぜ。最近ではそういう場合も多いらしい」
「ていうか、帰国子女という例が少ないのが原因じゃないの?」
「まぁ……それもそうなんだけどな」
言いたいことはそれだけだったみたいだ。
すべてを言い終えた直行は、一気に言葉をなくした。
「それじゃ、そろそろ戻る?」
「そうだな。もう授業も始まる。早く転校生を見たいからな!!」
「早く教室に戻っても、見れないけどね」
そう言いながら屋上を後にしようとしたその時だった。
「あら?あなたはもしかして……」
後ろから声がする。
どこかで聞いたことのある声だなと思いながら健太は後ろを振り向く。
吉行もつられて後ろを振り向いた。
するとそこには、見覚えのある人物が立っていた。
茶色い髪の毛をサラサラとなびかせるその少女の名前は、
「真鍋先輩じゃないですか」
生徒会副会長である、真鍋瑞穂だった。
「またあなたなのね……」
「いやだからオレは何もしてないですって」
「吉行、ドンマイ」
そう言って健太は立ち去ろうとする。
しかし、その前を端穂にふさがれる。
「あなたよ、あなた」
「へ?僕?」
自分で自分のことを指して、さぞかし驚いた様子を見せる健太。
そんな様子を見た吉行は言う。
「ドンマイ、健太♪」
そしてそのまま教室へと立ち去ってしまう。
「あ、ちょ吉行……」
置いてかれた健太は、その場に立ち尽くしてしまう。
やがて一言。
「あ、あの、そろそろどいてくれると嬉しいのですが……」
「いえ、その前にひとつ聞いてもいいかしら?」
「?何でしょうか」
端穂が何かを聞きたがっていた様子なので、健太は聞く。
すると、端穂の口からとんでもない言葉が出てきた。
「あなた、生徒会に入る気ってない?」