その36 とある少女との過去 8番目
ついに「とある少女との過去」編終了です。
今更ながら、何でこんなに長くなったんだろう……。
少し反省しなければ。
その時。
健太の周りからは、雑音は消え去った。
目の前には、前と同じ格好をしている少女。
身長等は伸びたが、着ている服も、あの時と同じだった。
まさしく、記憶の中の少女そのものだった。
「―――マコちゃん」
健太は、思わずそう呟いていた。
目の前で楽しそうに歌う少女の顔が、不思議といつもよりも楽しそうに見えた。
「あ〜楽しかった!」
「吉行君、かなりはしゃいでたね」
「まぁな!」
「もう少し自重してくれよ……ったく」
大貴がそう指摘したが、吉行は聞く耳持たなかった。
「さて、帰るとしますか!我らが街へ!!」
「大袈裟だよ、吉行」
健太が吉行に対して、そう突っ込んだ。
何がともあれ、後は家に帰るだけとなった。
周りには、人がたくさんいる。
時間は、ちょうど12時。
もうお昼時だった。
「その前にさ、お腹がすいたし、どこかで昼ご飯でも食べない?」
「私さんせ〜い!」
美咲が元気よくそう言った。
「そうだな。飯食うか」
「この辺だと確か……マックがあったか?」
「よし、そこで食べよう」
その時。
「〜〜〜君〜!!」
誰かが誰かを呼んでいる声が聞こえた。
「?今、誰かが呼ぶ声が聞こえたような……」
「空耳じゃねぇのか?きっと」
「そうかな……」
吉行は、健太に早く来いと諭す。
健太は、吉行の言葉に応じた美咲に、手を引っ張られる。
こうしている間にも、誰かが誰かを呼ぶ声は、聞こえてくる。
「〜〜太君〜!!」
「……やっぱり、聞こえる」
「冗談言うなよ。まさか……幽霊か!?」
「こんな昼間から幽霊なんて出るわけねぇだろ、アホかお前は。それより飯だ飯」
「そんなに昼ご飯が食べたいんですか?」
「まぁ、腹減ってるしな」
大貴はやはりクールにそう言った。
しかし、どうやら本当にお腹がすいているらしい。
「ま、なんだかんだ言って、大貴も楽しんでたしな!」
「……お前が笑顔でそんなこと言っても、気持ち悪いだけだ。やめろ」
「どうせ俺なんか……俺なんか……」
「まぁまぁ」
落ち込む吉行を、健太はなだめる。
そうしている間にも、声はだんだんと近づいてくる。
「健太君〜!!」
「……あれ?僕を、呼んでる……」
「いくらお前がフラグゲッターだとしても、こんなコンサート会場で女の人に捕まるなんて
あるわけないだろ」
「いや、何だよ、フラグゲッターって……」
すぐに元気を取り戻したらしい吉行に対して、健太がそう突っ込む。
―――後500m。
「とにかく、今は飯だ、飯」
「さっきから大貴さん、それしか言ってませんよ……」
美咲が呆れたように大貴に言う。
―――後254m。
「本当にお前を呼ぶ声が聞こえたのか?」
「多分、僕の名前だったと思う」
―――後150m。
「ま、健太って名前、いっぱいいそうだし、勘違いしたんじゃないのか?」
「そ、そうかな……?」
―――後20m。
「健太君ー!!」
「……へ?」
(ギュッ!)
その距離、0m。
健太の体に、誰かが抱きついてきた。
「あ、あなたは……」
「MAKOちゃん!?」
そう。
それは、先ほどまでステージで歌っていた、アイドルのMAKOだった。
そして。
「マコちゃん……本当に、マコちゃんなの?」
「そうだよ!ボク、健太君に会いたかったんだからー!!」
この日。
健太にとっても、マコにとっても、大きな奇跡がもたらされた。
しかし、奇跡がこれだけでは収まらないことを、健太は後に知ることとなる。
次回は、「とある少女との過去」編の登場人物紹介です。