その31 とある少女との過去 3番目
お昼の投稿です。
……ていうか、さっき昼ごはん食べました。
話は変わって、今回から過去編です。
3話くらい続くかな……。
それは六年前の話だった。
健太がまだ小学校四年生の時の話。
まだ親が再婚をしておらず、幸せな生活を送っていて(最も、今でも幸せなのだが)、美咲も
まだ木村家に来ていなかった時の話。
その時に、健太は失う悲しみを覚えた。
一人の少女の存在を失った―――らしい。
らしい、というのは、その情報が正確な物ではないからだ。
それは、健太の単なる思い違いなのかもしれない。
あるいは、本当にいなくなったのかもしれない。
ここで、その六年前の話をすることにしよう。
「わ〜海だ!!」
木村家は、家族三人で沖縄に遊びに来ていた。
健太・父親・母親の三人である。
この頃は、まだ父親も母親も、再婚はしていない、本当の両親である。
最も、父親は今の父親と一緒なのだが、母親に関しては後ほど語ることにしよう。
「やっぱり夏と言ったら、海だな!」
父親が、太陽に向かってそう叫ぶ。
地面を輝かせている太陽が、空のど真ん中に位置していて、その太陽を中心として光が指していた。
周りには人がたくさんいて、どこを見ても、人がいない場所がない程だった。
また、砂浜には、所々にビーチパラソルが刺さっており、その下には、サングラスをかけて
寝転がる人が数名確認することが出来た。
「ようし!父さんと海まで競争だ!!」
「うん!」
「危ないから気をつけてね〜」
母親からそんな言葉が投げかけられる。
健太達は、その言葉を聞いているのか聞いていないのか、全力疾走で駆け抜ける。
(ダッ)
海まで競争する父親と健太。
父親は、負けず嫌いの性格をしているのか、子供の健太にも容赦なかった。
「父さん、早い!」
「はっはっはっ!悔しかったら追いついてみろ!!」
(キラ〜ン)
歯元を光らせてそう言いながら走る父親は、当時の健太の視点から見ても寂しい物だった。
「ハァハァハァ……」
泳ぐ前から健太の体力はすでに半分くらい削られていた。
「情けないな。こんなんじゃ、まだまだ海賊王は目指せないぞ!!」
「海賊王!?別に目指さなくてもいいよね!?」
幼いころから、健太の突っ込み属性は決定づけられていたらしい。
「それじゃあ、早速泳ぐぞ!」
「うん!」
父親の提案に、健太は元気よく頷いた。
と言っても、海に入っても、やはり人はたくさんいるために、ゆっくり泳ぐこととなった。
「ま、さっき走ったからな。ゆっくりめに泳ぐのがちょうどいいだろう」
父親もそう言いながら、ゆっくり泳いでいた。
しばらく泳いでいると、目の前に丸い物体が見える所までやって来た。
「健太、その先は泳いじゃいけない区域だぞ」
「え?そうなの?」
「ああ。危険だからな」
そう言って引き返そうとした時。
「……父さん、女の子の声が聞こえない?」
「へ?いや、別に何も……」
「あっ!」
健太は、人気のない、遊泳禁止区域ギリギリのところに何かを見つけた。
「どうした?健太」
「あっちで……女の子が溺れてる」
「何!?」
見ると、そこには。
溺れている少女がいた。