その2 好きな食べ物 2番目
今まで第1話だった部分です。
今回は、設定等をいじっております。
おじいちゃんが、『代理の先生』として登場します。
「よっ、おはよう。中川に愛沢」
吉行には、初対面の人に対しても、あまり「さん」「君」をつけて呼ぶことがないという特徴がある。
そんな性格なので、友達がたくさん出来るのだ。
「ところで健太。お前と中川って、やけに仲いいな」
健太にはそのセリフがどんな意味を持っているのか、分からなかった。
「いや、それはどういうこと?」
「というか、なぜに中川に対しては下の名前で呼ぶんだ?」
普通、下の名前で呼び合うということは、幼馴染か、恋人同士という関係にあるときだけだ。しかし、健太は、まったくもって美奈のことを知らないので、
「それは、そう呼べって言われたからだよ」
本当のことを言った。
ちなみに、美奈は意味深な表情をしていた。
それが吉行と健太、どちらに対してのものかは、不明。
「そっか。そういうことか」
吉行は、そんな美奈のことを言って、何やらニヤニヤした表情を健太に見せる。
「おい、僕のことを信じないな!」
無理もない。
「まっ、信じてやるよ」
どうやら信じてもらえたようだ。
「木村君は美奈と仲良くなったの?」
「まぁ、仲良くなっていないと言ったらうそになるかな」
そのセリフに、美奈はちょっと顔を赤くする。
しかし、その様子に誰も気づいていない。
「それじゃあ私のことは『かなえ』って呼んで。あと、私も木村君のことを『健太君』って
呼んでもいいかな?」
健太はちょっと顔を赤くする。
隣にいた吉行も、うらやましそうに健太を見つめる。
「いいな〜健太だけズルいや」
「それなら、海田君も吉行君って呼びますね」
「いよっしぁあ!俺に春が来た!!」
「はしゃぎすぎだから」
冷静に健太は突っ込みを入れた。
「でも、初めのほうは『さん』付けだけどいいかな?」
「うん。それでもいいよ」
「分かった。かなえさん」
健太は笑顔でそう言った。
しばらくして、1時間目の授業が始まった。
とは言っても、この日は入学して次の日というのもあって、授業らしいものではなく、
簡単に言えば、LHRのような物だ。
1時間目は、自己紹介をするらしい。項目は、「自分の名前」・「趣味」・「得意科目」・
「なにか一言」そして、「好きな食べ物」の5つ。
とりあえずごく普通の内容だ。
クラスのみんなが順番に自己紹介をしていくらしい。
「って、あれ?外川先生はどうしたんですか?」
そこにいるはずの外川はおらず、代わりに知らない老人が立っていた。
「今日は外川先生は、風邪でお休みの連絡が入っておるぞ」
「あの今時学園ドラマでも珍しいような熱血教師風の天然記念物が風邪で休みなんて。ふふ」
「……お〜い、戻ってこ〜い」
トリップしてしまったらしい美奈を、クラスメイトその1が呼び戻す。
「では、まずは相沢かなえさん。張り切ってどうぞ!」
今そういった先生(仮)は、65歳なのだそうだ。
「先生〜、仮装大賞っすか?」
ある男子の一言をきっかけに、窓際から笑いのウェーブが流れる。
「まっ、現代人じゃからな」
先生は、もう年寄りなので、どちらかというと昭和人なのかもしれない。
「あの人、本当に教師なのか?」
「さぁ……」
健太は、吉行の質問に、そう答えるしかなかった。
「うぉっほん!では気を取り直して、相沢かなえさん。お願いします」
「はい」
さらっとした金髪をなびかせながら、きれいな声で返事をした。
「ええっと、私の名前は相沢かなえです」
男子生徒はみんなかなえの方向を向き、すこし和んでいる。
男子だけには限らず、そのあまりの美しさに女子生徒までもが和んでいる。
ただ、吉行だけは、興味なさそうにして、
「ふぁ〜あ」
あくびまで出すという始末。
「もうちょっと真面目に聞きなよ」
ちなみに、かなえの席は、窓側の1番前。
吉行は窓側から2番目の3番目。その後ろに健太がいる。
美奈は、廊下側から2番目の一番前辺りだ。
「はいはい」
吉行は、健太にそう言われてやっと集中し始めた。