その248 終業式 1番目
三月。
この日、私立相馬学園はめでたく終業式を迎える。
「いやぁこの一年、本当にいろんなことありましたな~」
「それさ、確か大晦日にも言ってたような気がするんだけど」
式が始まるまで少しばかりの時間がある為、健太と吉行、大貴の三人で話をしていた。
女子は女子で、まとまって話をしている。
「俺達三人には彼女が出来るしな……」
「一番驚きなのは、こいつに彼女が出来たことだな」
大貴が吉行のことを指さして、そう言った。
「まさか僕も出来るとは思ってなかったよ……」
健太までもが同意を見せていた。
「それはどういうことだよ!」
「言葉通りの意味だ」
「そうかよ!……俺、死んだ方がいいかな?」
「ああ、死ね」
「フォローの言葉もなし!?」
大貴からのキツイ一発に、吉行はやられそうになる。
「何だよ。面倒臭い奴だな」
「面倒臭い奴って何だよ!」
「言葉通りの意味だ」
「さっきと話の流れが全然変わってねぇじゃねぇか!!」
このままだとエンドレスになってしまう。
そう考えた吉行は、早急にこの話の流れを変えた。
「それにしても……佐伯が海外か」
「結局、終業式まで学校にいなかったね」
「てか、半年もたたずに転校するとか……しかも行先はアメリカ。もう帰ってくることねぇじゃん」
夕夏はやはり、アメリカに旅立ってしまった。
健太としては、最後に夕夏が呟いた、『重荷もなくなった』という言葉が気になっているのだが、本人がいなくなってしまった今、それを尋ねることも出来なかった。
「後は、ついに三年生が卒業したしな」
「確か、時期生徒会長は真鍋先輩になるんだったな」
数日前に、卒業式が行われていた。
その場で、充からの発表があり、時期生徒会長は瑞穂に決定した。
ちなみに副会長には明久が。
書記は歩美、会計は音羽、健太は……。
「そして健太が、人事か」
「人事って、仕事内容まったく知らないのに人事担当って言われてもな……」
ぼやくような形で、健太は呟く。
「まぁいいんじゃねぇの?適当にやってれば」
「そんなことしちゃマズイって……」
さすがにそれは常識的にマズイと判断したのか。
健太はそう答える。
「お~いお前ら。もうすぐ終業式が始まるぞ」
そこに、外川が入って来た。
「あら外川……あなた、何やら不穏な空気が流れている話。恐怖のス○リアにでも……」
「待て待て待て待て!いい加減にお前は著作権に気を使うって言葉を知れ!!」
「いいじゃないのよ。どうせあなたなんて、著作権違反の塊じゃない。金○先生でも目指してるのかしら?」
「だからやめろよ!!」
相変わらずの、美奈と外川による意味不明な会話は健在であった。
「それより……先生」
「何だ?渡辺」
「とっとと体育館に向かわないとマズイんじゃないんですか?」
大貴が外川にそう告げる。
しばらく黙りこんだ後。
「……みんな!走れ!!」
(ダッ!)
慌てて外川は教室から出た。
「ちょっ……マジかよ!」
「美空!行くぞ!!」
「は、はい!」
(パシッ)
何故か吉行は、美空の手を掴んで走って行く。
健太は、そんな吉行の後ろをついて行くように走って行った。
「……何この状況?」
マコは走りながら、そう呟いていた。