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その245 告白 5番目

「……」


屋上で、かなえの到着を待つ健太。

待っているこの時間が、今の健太にとってとてつもなく長い時間のように思えた。


「告白する前の気持ちって、こういう感じなんだな」


改めて告白することに対して理解を深めた健太。

だからと言って、ここでやめるわけにはいかない。

自分の気持ちをきちんと伝える。

それが、今の健太に出来る最善手なのだ。


「……かなえさん、まだかな」


扉の方を見て、健太は呟く。

未だその扉が開かれる様子は、ない。


「う~緊張して来た」


待ち時間が長ければ長いほど、告白する側にとっては緊張が深まるばかりなのだ。

今の健太は、まさしくその典型的なパターンとなっていた。


「……」


意味もなく空を見上げる。

先ほどまで晴れていたのだが、今は少し雲がかかっていた。

太陽の光が、健太の体に、届かない。

それはまるで、健太の心の中を表現しているようだった。

雲は、不安の塊。

だが、その不安の塊も、前に比べたら随分と減っている。

だから、雲も少ししかないのかもしれない。



(カラッ)



「!」


空を見上げていた健太は、扉が開かれる音を聞いて、その方向を向く。

見るとそこには、


「ごめんね、健太君……ちょっと遅くなっちゃった」


少し息を切らしたかなえが立っていた。


「いいって。急ぐ用事でもないから」


それは嘘だ。

本当なら、一秒でも早くその想いを伝えたい。

早く自分の気持ちを聞いてほしい。

そう考えているはずだった。


「それで健太君……話って?」


かなえは、健太にそう尋ねる。


「……うん。話って言うのは」


ここまで来たら、健太としても引き下がることは不可能。

逃げ道は用意されていない。

あるのは、事をなしてからようやっと開かれる、出口の扉のみであった。


「……かなえさんに、どうしても僕から言いたいこと……聞いてほしいことがあるんだ」

「……うん」


かなえの顔にも、緊張の色が見え始める。

頭の中では、どんなことを言うのだろうと、考えていた。


「……僕は」


そう健太が切り出そうとした。

その時だった。


「待って!」

「?」


突如かなえが、健太の発言を止めた。


「どうしたの?」


健太は思わず尋ねていた。

かなえは答える。


「こんな機会、二度とないと思うから……私からも言いたいことがあるの」

「かなえさんからも?」


これには健太は驚きを見せるばかりだった。

表面上では冷静を保っていても、内心ではそうだった。


「……なら、二人同時に言おうよ」

「二人同時に?」


健太は、かなえにそう提案をしてみた。

かなえは、


「……うん、分かった」


首を縦に頷かせて、その提案を受け入れた。


「それじゃあ……まずは僕からね」


そして健太は、自分のその想いを、かなえに伝え始めた。

慎重に、言葉を選びながら。
















次回、ついに健太は……!!

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