その244 告白 4番目
そして、放課後。
「あ~今日も疲れた。帰ろうぜ、健太」
「いや、今日はちょっと……」
「……ああ、そういうことか。なら今日は一人で……」
「お前には倉木がいるだろ」
カバンを持って一人で勝手に帰ろうとした吉行に、大貴がそう指摘する。
「おっと!そうだったな……お~い美空!帰ろうぜ!!」
「あ、はい!」
慌てて美空が、吉行の近くによる。
そんな美空を見て、吉行は、
(ポン)
「ふぇ?」
「俺今気づいた……美空って元々可愛かったけどよ、更に可愛く見える俺がいることに!!」
「アホだ」
「アホだね」
「恋に溺れるってのはこういうことね」
一同は、口をそろえて吉行に向かっている。
しかし、当の本人である吉行は、聞こえていないのか、気にしない風だ。
「強くなったんだな……吉行」
「いや、それとこれとは違うでしょ」
大貴の呟きに、健太は突っ込みを入れていた。
「それじゃあ木村……頑張れよ」
「……うん」
大貴に言われて、健太は自分の胸を右手で叩く。
(ドン!)
「……よし」
小さくそう呟き、健太はとある人物の元へと歩きだす。
教室の中には、ほとんど生徒は残されていない。
部活に行った者。
家に帰った者。
その他諸々だ。
「……」
ゆっくり近づいて行く。
その人物は、そのことに気づいていない。
「……ちょっといいかな?」
「え?私?」
健太が呼びとめた相手。
それは……かなえだった。
「今から話があるんだけど……屋上に来てくれないかな?」
「う、うん……いいけど」
かなえは、少し驚いたような顔をして答えた。
健太は、この反応を見て、少し喜んだような顔を見せる。
しかし、これからが執念場だ。
ここからどういう展開に持っていくのか。
それは……健太自身にかかっている。
「それじゃあ……待ってるよ」
「うん」
今度は驚きの色を消して答えるかなえ。
そんなかなえの返事を確認すると、一足先に健太は教室を出る為に、
(ガラッ)
教室の扉を開く。
そして、廊下に出たその時だった。
「……今から、なのね」
「……美奈さん」
そこには、先に帰ったはずの美奈が、立っていた。
「ここまで来たなら、後は貴方次第よ。どう言う結末を迎えるのか……それはあなた次第よ」
「……うん」
顔を合わせない二人。
それが何を意味するのかは、互いに分かってはいなかった。
ただ、それだけで互いの言ってる言葉の意味が分かる。
無意識の内に、そう感じていた。
「さて私は、これで帰るわよ」
「……ありがとね、美奈さん」
「いいってことよ。それにお礼は、あなたの想いがかなえに届いてからにしなさい」
「……だね」
(タッタッ……)
そして健太は、廊下を歩いて行った。
「……」
その様子を見て、美奈は健太とは反対方向に歩きだした。
その表情は、いつもと同じ、無表情だった。
次回、物語は大きく動き出す。